栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

ウクライナ国民の自由への戦いに連帯を(2)

2022-03-28 10:28:03 | 視点

 歴史に学ぶとは、ただ単に歴史を振り返ることではない。

なぜそうなったのか、なぜそこで止められなかったのかという教訓を学び取り、

同じ過ちを繰り返さないようにするためである。

 我々日本人は日中戦争、太平洋戦争を教訓とすべきである。

あの戦争は軍部の暴走という単純なことではない。

大本営発表の戦勝ニュースを疑うことなく8月15日まで信じ、

戦勝を祝う提灯行列をし「鬼畜米英」「欲しがりません勝つまでは」と

1億総合唱し戦争に突き進んでいったのだ。

 今、ロシアでまったく同じことが行われている。

我々がプーチンのロシアを非難する時、このことを忘れ、非難しているだけなら

再び同じ状態になった時、権力者の言いなりになるだろう。

 大事なのは最初の1歩を止めることだ。それを許せば次の2歩3歩が出る。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻を止めることが出来なかったのは最初の1歩を黙認したからだ。

 さらに2歩3歩と進むのを許せば、プーチンのロシアはもちろんのこととして

習近平の中国、そして金正恩の北朝鮮がロシアに倣おうとするだろう。

 そのことは「No.760:急激に逆回転している時代の歯車を止められるか。」で書いた。

 独裁政権が倒れるのはほとんどの場合、内部崩壊である。

指導部か軍部内に反旗を翻す動きが出て来たり、国民の反政権運動の激化により

独裁者が倒されるパターンだが、そういう動きが出る元になっているのは

外部情報等で戦地の実情を知ることからだ。

 要は権力側が流す一方的な情報ではなく、様々な情報を知ることから

総合的に判断できる状況が必要ということで、その重要な役割を担っているのが

戦地で取材活動をしているジャーナリスト達である。

 彼らは文字通り命を懸けて活動しているわけだが、

今回の戦争程ジャーナリスト達が「戦死」した例はない。

それはロシア軍が誰彼見境なく砲撃し、狙撃しているからだ。

狙撃とは文字通り狙い撃ちで、狙撃相手が戦士か民間人か報道陣か

分かっているにもかかわらず撃っている。

現地で取材している人間は基本的にジャーナリストであることを記す

「PRESS(プレス)」の腕章を撒いて取材しているし、武器も携帯していない。

にもかかわらず「撃つな。プレス、プレス」と叫んでもロシア兵から狙撃された

という証言も多く伝えられている。

 我々がウクライナの現状を知ることができているのは彼らが現地・戦地で生の情報を

伝えてくれているからで、情報の瞬時性が第2次世界大戦までと大きく異なるところだ。

 我々は彼らのお陰で現地で行われていることを知り得ているわけで、

ウクライナの人々への支援と同時に死を賭して戦地から情報を伝えてくれている

ジャーナリストに対する支援をすることも必要ではないか。

 ウクライナの戦いは「自由への戦い」である。

もしウクライナがプーチンのロシアに屈することになれば、世界は自由をなくすことになる。

ウクライナ単独の問題ではないのだ。

 いまこそ自由陣営は結束して独裁者に当たるべきだろう。

個人で出来ることは限られているだろうが、人は出来ることを行えばいい。

 ところでちょっと気になることを耳にした。

ウクライナ義勇軍に参加しようとしている人のニュースを見て

「この人達はそんなに戦争したいのか」と非難する声を。

 恐らく傭兵と義勇兵を混同しているのだと思う。

確かに両者の区別は曖昧なところがあるが、概して傭兵はカネで雇われて

戦地に行き戦う人間で、武器の扱いにも慣れた戦争のプロ。

対して義勇軍に参加する人はカネではなく、それ以外の様々な理由、

多くは自由への戦いを続けるウクライナのためという大儀のために参加する人間で、

報酬が動機になってない。それは武器以外の装備はすべて自費で賄ったと

取材に応じていた元米兵の証言からも分かる。

 私が今回のウクライナ義勇兵のことを聞いて即座に思い出したのは

スペイン内戦(スペイン市民戦争)である。

自由主義陣営の国々が参加を見合わせるのを尻目にドイツ、イタリアの

ファッシスト政権はフランコ将軍の支援に動いた。

 それに対してヨーロッパの国々やアメリカ人が義勇兵として参加し、

自由のために戦ったが、その数は4万人とも6万人とも言われている。

アーネスト・ヘミングウェイも義勇兵として参加し、その時の経験を後に

「誰がために鐘が鳴る」「武器よさらば」という小説にしている。

 スペイン市民戦争は遠い昔のことでも日本に関係ないことでもない。

スペインで義勇兵として戦い戦死した日本人がいたことも知られている。

はっきり分かっているのはジャック白井氏ただ1人だが。

 スペイン市民戦争当時と現在では武器は比較できない程進化・複雑化し、

素人が扱えるものではないだろうが、義勇軍に参加しようという人々の動機は

当時も今も変わらないだろう。そして、それを止める権利は国にも個人にもない。

 今プーチンがウクライナで行っていることはかつて例を見ないほど残虐非道で、

ジェノサイド(民族大量虐殺、国家破壊)以外の何物でもない。

世界はあらゆる手段を用い、プーチンを止めるべきだろう。

 何も武器を持ち現地で戦わなくても他の方法もある。

サイバー技術に長けたものはその技術を用いロシア国民に現地の情報を伝えれば、

ロシア内部から反戦争運動が広がるかもしれない。

企業は経済制裁を即時に行えばいいし、NGOや国際赤十字機関、国境なき医師団、

国境なき記者団等への寄付もいいだろう。

 大事なのは「声を上げ続ける」ことだ。

 


ウクライナ国民の自由への戦いに連帯を(1)

2022-03-28 10:17:18 | 視点

栗野的視点(No.762)                   2022年3月27日
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ウクライナ国民の自由への戦いに連帯を
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 ウクライナ情勢がかなり危険域に近付いてきた。

もはや一刻の猶予もない状態と言っていい。

対岸の火事と見たり、洞ヶ峠を決め込んではいられない。

 そう考えた読者も多いと思うが、17日付けで配信した

「栗野的視点(No.761):ウクライナを孤立させるな」に対し、次のようなメールが届いた。

 > 大変参考になりました。現状分析は解りました。
 > が、このままだとこれからどうなるのか?
 > 今やらなければいけないことは具体的に何か?
 > 今回で学んだことの教訓、今後の課題は何か?です。
 > お示しください。

 どうも私の文章は言葉足らずで説明不足らしい。

その点は率直に謝らなければいけないが、デジタル普及の影響か、

一昔前に比べ人々の想像力が落ちてきているように感じる。

1から10まで懇切丁寧に説明しなければ伝わらないようだ。

 さて、上記メールに対し次のようにできるだけ「具体的に」書き返信した。

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 今すべきですことですが、ある程度書いているつもりです(過去の歴史から分かるように)が

個人でできることと、企業や国などの大きな組織ですべきことを分けて考える必要があるでしょう。
 大きな組織に属していない我々個人が出来ることには限りがありますし、

大きなことを望んでもできません。

とりあえず個人レベルでできることはまずウクライナ募金でしょう。

一応、募金先も載せてみました。

私も1桁単位の少額ですがユニセフに寄付しました。

なんといっても住民税非課税で国が10万円を今回くれるような貧乏人ですから、

2桁まではちょっとキツイ。

 他にもロシアの侵攻反対、戦争反対の声を上げ続けることでしょう。

1人の声は小さくても集まれば大きな声(世論)になります。

デモもその1つでしょう。

それがより大きな組織を動かすことに繋がります。

 ユニクロが3月一杯でロシアでの販売停止に踏み切ったのも社外からの声に

動かされ、社員(取締役)達が柳井氏の現状維持の命令に反対したからです。

 ロシアと取り引きしている企業は即座にプーチンが戦争をやめるまで

取り引きの凍結を打ち出し、ロシアに圧力をかけることでしょう。(これも書いていると思います)

 西側諸国がすることはウクライナが求めている支援をできる限り行うことでしょう。

本当はもっと早い段階、プーチンがウクライナへの侵攻を始める前に外交的に

軍事的圧力をかけるべきだったのですが、静観表明をしたので、プーチンは

ウクライナへ侵攻してもアメリカは動かないと踏み、軍を他国に進めることが出来た。

 日本が満州国をでっちあげる前と全く同じ構図で、同じことが出来たわけです。

軍事侵攻すれば欧米とも戦争になるかもしれないと考えれば、

当時の日本軍部もプーチンも侵攻を躊躇ったでしょう。

 遅きに失したが今はロシア経済が破綻すると思わせる程度の

経済制裁を数日内に行うことが1つ。

もう1つは、もはや事ここに至ってはウクライナに武器を送るかでしょう。

第3次世界大戦になるのを避けるギリギリのところで。

NATOから直接武器を提供していないという言い訳が出来る形で。

 もしロシアにウクライナ占領を許すと中国も北朝鮮も同じことをするでしょうから。

これについては3/10配信の

「栗野的視点(No.760):急激に逆回転している時代の歯車を止められるか。」

 http://www.liaison-q.com/kurino/Russia-Ukraine1.html

で触れています。

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 戦局は刻一刻と変化しているし、抜き差しならない段階まで突入している。

プーチンはサリン等の化学・生物兵器はおろか核さえ使うことを厭わないようだ。

いや、どうも本気で、これら大量破壊兵器を使用しようとしているように見える。

 それを横目で見ながら北朝鮮の若き指導者はICBM(大陸間弾道ミサイル)を

3月24日に打ち上げた。一体、北朝鮮は今年になって何発のミサイルを発射したのか。

 こうした状況を見れば第3次世界大戦は言葉の上だけのことではないと誰しも感じるのではないか。

 歴史は悪しき形で繰り返される。


ウクライナを孤立させるな。

2022-03-18 10:57:38 | 視点

栗野的視点(No.761)                   2022年3月17日
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ウクライナを孤立させるな
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 時代は繰り返す--。今回のロシアのウクライナへの軍事侵攻を見ていると、
どうしても既視感に捕らわれる。そして人間とは歴史に学ばないものだとつくづ
く感じる。
 ロシアの大統領プーチンはウクライナへの軍事侵攻の理由として
・ウクライナの現政権はファッシストであり、民衆を抑圧し、民族虐殺を行って
いる。民族虐殺に遭っている民衆はロシアに助けを求めている。
・ウクライナの民衆を守るためにウクライナを非軍事化、非ナチス化しなければ
ならない。
・ウクライナが核兵器を開発している疑いがある。
・米国がウクライナ国内で生物兵器の研究所を設置している
・ウクライナが西側諸国に近付きNATOに加盟すると、ウクライナにNATOの軍事施
設が建設され、ロシアの直接的な脅威となる。
・ウクライナを非軍事化、中立化させ、ロシアと西側諸国との間の緩衝地帯にす
る必要がある。

 こうした理由を次々に展開しウクライナへ軍事的侵攻を開始し、今や両国は全
面戦争になっている。
 プーチンが言うこれらの理由はことごとく嘘っぱちであり、それらの大半はウ
クライナではなくロシアが行っていることなのはロシア以外の多くの国、報道の
自由が許され、インターネットの接続が規制されず自由に接続でき、諸外国やウ
クライナが発するニュースやSNSに接することができる国の人々は知っている。
 自由とはそういうことであり、それほど大事ということである。そして、こう
したニュースに接し、ウクライナで今行われている現実を見聞きしている人は、
私も含め何とかこの戦争を止められないか(ロシアの侵攻、無差別攻撃、虐殺を
止められないか)、ウクライナに連帯し、支援を行えないかと思っているに違い
ないし、すでに様々な方法で支援活動を行っている人もいるだろう。

 プーチンのウクライナ侵攻の最重要目的は同国の非軍事化・中立化にあるのは
間違いないだろう。
 問題はウクライナの「非軍事化・中立化」がなぜそれほど重要であり、プーチ
ンが拘るのかだ。そこで思い出すのがスターリン。
 スターリンは国際共産主義運動を主導したが、それはソ連中心で、それ以外の
社会主義国はソ連を守るために存在した。
 プーチンの頭の中にあるのもスターリン同様にロシア一国をいかに守るかとい
うことであり、かつてのソビエト連邦構成国が西側に近付き、NATOに次々と加盟
すればロシアがNATOと国境を接することになる。
 これはロシアにとって「脅威」だから、NATOとの境界線の間に緩衝地帯が必要
になる。以前、ウクライナは親ロシア派の大統領だったがゼレンスキー大統領に
なってからNATO加盟を表明するなど西側の一員になりたがっている。プーチンは
それが許せなかった。
 そこでありとあらゆる理由を付けてウクライナに軍事的侵攻を開始した。結局、
プーチンはウクライナが非武装化し中立化(ロシア側に近い形での)しない限り
諦めないだろう。

 問題は西側諸国の対応だ。ウクライナに攻め込むまでほぼ座して待った。その
後、経済制裁を加えだし、確かに効き目は出ているようだがプーチンは一向にこ
の戦争をやめる気配はない。今ロシアがウクライナで行っているのは「ジェノサ
イド」と言っても言い過ぎではない。民間人も病院も学校も避難所も、とにかく
ありとあらゆる建物を爆撃し、攻撃し続けている。そしてそれらはすべてウクラ
イナが行っているから反撃しているだけで、ロシアは攻撃していない、とさえ言
っているのだから開いた口が塞がらない。「ナチス化」しているのはロシアの方
であり、プーチンは完全にヒットラーと化している。

 なぜ人は歴史に学ばないのだろうか。様々に都合のいい理由を付けて隣国へ侵
攻したのはナチスドイツで経験しているはずだし、今回、ロシアのやり方を見て
いるとかつて日本が中国に侵略し、満州国をでっち上げた時と実によく似ている。
 我々はまるで過去の歴史を見せられているような既視感を覚えるではないか。
あの時も欧米列強は日本の動きを察知しながら西側諸国から遠く離れた東側の出
来事に多大な関心を示さなかった。
 それを見た関東軍は中国東北地域に軍事進攻し、愛新覚羅溥儀を担いで傀儡政
権とし、満州国をでっち上げたわけで、プーチンの手法も実によく似ている。

 歴史に「もしも」はないし、過ぎたことを今更とやかく言っても現実が変わる
わけではないが、それでも言いたい。もしバイデン米大統領が早い段階で「米軍
はウクライナでの紛争に関与しない」と明言しさえしなければロシアはウクライ
ナに侵攻していただろうか、と。

 今、世界に求められているのはウクライナを孤立させないことと、ロシアの侵
攻を止めさせることだ。
 そのためにできることを今すぐ実行すべきだろう。経済制裁が効果を発揮して
いるなら、さらなる経済制裁を、今すぐ実行すべきだ。
 日本企業も政府も様子見を決め込むのではなく、できることを今すぐ行うべき
だ。重要なのは「今すぐ」で、3月いっぱいでロシアから撤退みたいな悠長なこ
とではなく、今でしょ!

 米企業等と比べて日本企業の撤退、一次販売停止等の動きは遅すぎる。販売停
止ぐらいすぐやるべきだ、柳井さん。
「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利を持っている」と柳
井正代表取締役会長兼社長。


 そう言えばこのご仁、新彊ウイグル自治区のウイグル民族に対する中国の人権
抑圧が問題になった時も、調査したが人権抑圧はなかったとして新疆ウイグル製
綿花の使用をやめるとは一切言わなかった。決算発表会見(2021年4月)でも質
問が出る度に「政治的な質問にはノーコメント」と繰り返している。
 こうした言葉からはファーストリテイリング社の利益第一と考えているとしか
受け取れない。
 独裁者の思考とよく似ている。まあ代表取締役会長と代表取締役社長を兼任し
ていることからもナンバー2は置かないという独裁者に共通した点が見て取れる
が。
 それにしても、なぜ、ソ連、ロシア、中国、北朝鮮の権力者はこうも似たよう
に猜疑心が強く、似たような行動を取るのだろうか。

 ともあれ我々庶民が取れる行動は限られている。ロシアの侵略戦争に反対する
声を上げ続けるか、ウクライナの人々に連帯し、戦火を逃れてきたウクライナ難
民への支援ぐらいしかできないが、できることを少しでもしていきたいと思う。

 もし、私と同じように考えている人のために、ウクライナ支援募金を募集して
いる機関を下記に載せておきます。

 国連UNHCR協会 ウクライナ緊急支援
  https://www.japanforunhcr.org/

 日本ユニセフ協会 ウクライナ緊急募金
  https://www.unicef.or.jp/kinkyu/ukraine/