チェンジを求めた国民への裏切りが民主党支持率低下の真因

 21日投開票の地方選、町田市長選と長崎県知事選で民主党候補が敗北した。
マスメディアの多くが敗因を民主党議員の「政治とカネ」の問題と分析・報道し、「小沢やめろ」の大合唱を始めている。
果たしてそうか。
 もちろん「政治とカネ」の問題の影響もあるだろう。
しかし、真の敗因はそれではないことはマスメディアも分かっているはずだ。
にもかかわらず、「政治とカネ」の問題と言うところに、近年メディアの大衆迎合性がある。

 では、真の敗因は何か。
ひと言でいえば、民主党の裏切りに対する絶望感と、国民の揺り戻し感情である。
 「長崎県は民主党が比較的強い県」などと書いたり、喋っているものもあるが(さすがに活字媒体のマスコミにはない)、それは全くの間違い、現状をよく知らない無知で、長崎県は長年、保守地盤である。
それがたまたま先の選挙で民主党の新人議員が自民党の大物議員に勝ったから、長崎は民主党の地盤と無知からくる勘違いをしたわけだ。
県知事をはじめ県議会議員は圧倒的に自民党議員が占めているのだ。

 勘違いという意味では民主党サイドも同じだ。
一時の風で勝てた(勝ったではない)だけなのに、民主党の力で勝ったように勘違いし、今回もいけると甘く見たところに敗因がある。
 いわばマーケティングの失敗。これが一つ。

 二つめは(これが真因だが)民主党への失望感。
国民が先の国政選挙で期待したのは「チェンジ」だ。
もう自民党政治には飽き飽きしたという感情と、国政を変えなければいまの暮らしも経済も変わらないという思い。
これが民主党への大量投票という行動になった。

 ところが、いざ任せてみると「劇的に変わらない」。
事業仕分けの頃は「劇的な変化」を予想させるものはあったが、その後は普天間にしろダムにしろ、経済対策にしろ自民党時代と何一つ変わらない印象を国民に与えてしまった。
 そこにもってきてカネの問題だ。
しかも、マスメディアは最初から「クロ」であるかのような報道を続けている。

 国民の苛立ちは好転の気配がない景気と、有効な手を打てない民主党政権に向いている。
「政治とカネの問題」というのはそういう苛立ちの象徴として出ている言葉である。

 長崎県に限っていえば、民主党政権で長崎経済も変わるのかと思ったが変化の兆しすら見えない。
それなら県政のことをよく知っている前副知事に任せた方が安心だ、という感情が働いた。

 三つめは国民のバランス感覚である。
衆議院選挙で民主党に勝たせ過ぎた。
あまり調子に乗らせてはいけない、という揺り戻しである。
 もちろん民主党政権が矢継ぎ早に新政策を打ち出し、「劇的な変化」を感じさせていたら地方選の結果はもう少し変わっていたかも分からないが。

 アメリカでも同じことが起こっている。
米国民がオバマ大統領に期待したのは「劇的な変化」である。
ところが相変わらずアメリカ経済は変わらない。
そこに苛立ちを感じ、オバマ離れが起きつつある。

 いずれにしても重要なのは、国民が期待していることを速やかに実行し、変化を実感させることだ。
それができないと仮に自民党が政権の座に返り咲いても同じことになるだろう。


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上杉 隆
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