波佐見の狆

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がんばれ重盛(36話)

2012-09-18 11:27:48 | 平清盛ほか歴史関連

平清盛」サウンドトラック第二弾が届きました(「NHK大河ドラマ《平清盛》オリジナル・サウンドトラック 其の二 」)!

第1トラックがなんとTarkusからの'Eruption' ですよーーーー!さっそく聴き始めたところですが、第一弾をさらに上回る素晴さ! このCDについては、もう少し聴き込んでからまたあらためて書くことにして・・・

さてさて・・・35話で浮き彫りになった重盛の孤独・・・今回、ますます追い詰められ苦悩を深くする彼の姿が、1196年の嘉応の強訴と呼ばれる事件と絡めて、クローズアップされています。

美しく整えられた福原の清盛の館の一室で、義兄藤原成親と酒を酌み交わす重盛。

重盛は、成親なら心許せると思い、棟梁にはなったが、宗盛に対する遠慮もあって、自分にやっていけるのか不安だと本音を漏らします。これに対して成親は、そんなことは心配するなと優しく力強く励まします。

血筋だけが棟梁の器を決めるのではないことは、清盛入道様が身をもって証し立てなされた。そなたはその清盛様と、ごきょうだいの誰よりも長く時を過ごしてこられたお方。なにも案ずることはござりませぬ。」そして本当にそう思っているからこそ、大事な妹を重盛に娶らせた、と・・・

重盛は、この言葉にとても励まされ、やっと表情がゆるみます。私も、おおーーーー成親さん、いいことを言ってくれる、とうれしかったのですが。。。。やっぱりというか、重盛がちょっと席を立ったとたんに、冷ややかな侮蔑の目に変わって「小物が・・・」とつぶやいたっ!! 

ぬあああにーーーー小物は、あなたの方でしょーーーーー! いつだって、自分の保身しか頭になくて、命乞いばかりーーー なんども清盛を裏切るあなたを、ピンチに陥るたびに、重盛は父に激怒されてまでも必至でかばい、最期まで気遣ってあげたでしょ!

だいたい・・・この成親さんは、志というものがまるでない。西光が、常に亡き主人信西の志をいつまでも大切に心の支えとしていることを、小馬鹿にするのですが、それじゃあーーーあなたはいったい何のために生きてるの・・・という感じです。

・・・成親のことは置いといてと・・・・ともかく、重盛は棟梁の座を引き継いでから、周りに誰も頼れる者がいないことをよりいっそうはっきりと知るのです。身内からも、統率力なしとみなされ、とりわけ宗盛からは常に鋭い視線をあびせられ続けます。後白河対策について皆で話し合いをしているとき、優柔不断に陥っている重盛をみとがめ、頼盛の家人である宗清が、「もはや大殿にお出ましいただくよりほかにないのではござりませぬか。」などと言い始め、重盛が「それはならぬ。一門をひきいるは私の務めだ」と必死で言い返すと、「おそれながら、それができて入れば何ももうしませぬ。」とあからさまな批判!皆の前で、重盛の面目丸つぶれです。叔父である頼盛が言うならともかくも、家人からそこまで馬鹿にされるなんて・・・これは叱咤激励とはいえませんよ!(注1)

だいたい、不思議なのですが・・・どうして、重盛には、盛国や宗清や、それからあの鎌田親子のような、何があろうとも我が殿をお守りしお支えもうしあげるーーーー!!という忠実で有能な家人がいないのかなあ・・・・・そういう良き相棒がいてくれたら、彼の胃潰瘍もそれほど進行しないで済んだのではないかと思うのですけどねぇ。。。(史実ではどうだったか、リサーチ不足)

もちろん、父は、福原にいても嫡男のことを忘れているわけではないのですが・・・

「重盛・・・あやつは、心が清い。だが清いだけではつとまらぬが武門の棟梁じゃ。」(注2)重盛の潔癖さを心配していることを、盛国に打ち明けます。清いだけではダメだから、経験を積み、修羅場をくぐって、もっと強かに図太くなってくれと期待したのでしょうが、そんな簡単に人間の性分は変わらないでしょうーーー。

しかも、、、清盛が棟梁になった時代と比べると、一門の規模は大きく拡大し、それに比例するように、朝廷、藤原摂関家、寺社といった周りの陣営からの圧力もますます強くなり、今の棟梁には、かつてないほどの図太さと強かさが必要でしょう。重盛にとっては荷が重すぎるのですね。そのことを、清盛ももちろん、よくわかっているからこそ、ともかく彼を棟梁にして、できるだけバックアップしてあげようと思い(教育的指導という意味もあるでしょう)、いろいろ福原から指示を出すのですが、、、重盛にしてみれば、お前に任せるといいながら、いちいち強く命令してくる清盛の考えについていけなくて、もう頭は大混乱なのです

今回の最後のほう、比叡山の明雲らの強訴対策について、福原に呼ばれた重盛は、六波羅にできるだけの数の兵を集めよ、しかし絶対に動かすな、という指示を受け、意味がわからぬまま、自分の館に戻ります。言われたとおり、庭に兵を集めますが、重盛に信頼感が持てない兵たちは、当惑してざわめきたちます。そこに、後白河、成親、西光が突然現れ、よもや比叡山の味方をするつもりではないだろうなーーと詰め寄り、さらに、摂政藤原基房と右大臣兼実までもおしかけてきて、説明を迫ります。庭では、身内である一門の兵たちが、きつい視線を浴びせる・・・

三方から囲まれた重盛は、きっといっぺんで胃潰瘍が増大して倒れそうになっていたでしょう。どうなる重盛・・・・・誰か助けて!

すると。。。庭の奥から、のっしのっし・・・・と恐竜のような足音が!

でたああーーーー清盛ザウルスだあーーーーー!!ここで、久々にManticoreではなくEruptionが鳴り響いてきて、もう大興奮です!!

清盛のとてつもない存在感、威圧感、威厳、自信、そして恐ろしさが、画面いっぱいに表れていました。

重盛のピンチを救ってくれてよかったとほっとしましたが、このシーンは同時に、結局清盛が出てこないと何もできない(まさに宗清が言った通り)ということ、そして、清盛の大きさ・強さに反比例して重盛は小さく弱いという印象を皆の目に強く植え付けてしまいました。彼は、小さいわけでも弱いわけでもなく、武勇に優れた人でした。ただ生真面目で、繊細で、潔癖で、心優しすぎただけなのに!

今回のタイトル「巨人の影」。この「影」とはどういう意味だろうと思っていたのですが、、、、最後のナレーションでよくわかりました。

「清盛という巨人が輝かしい光に照らされるほどに、平家一門は、その巨大な影に飲み込まれていった」

さすが、この一文だけで、今の一門の状態を如実に表し、かつ今後をの運命を強く暗示していますね。

図太くも強かにもなれない、ストレスをためやすい、という点では、私もどちらかといえば重盛タイプの人間なので、いい人すぎるゆえに壊れていく重盛くんの定めが、なんだか他人事とは思えなくて・・・・。

重盛、負けるなーーーーー

注1)「家人」は、「けにん」と読みます。詳しい定義はこちら

注2)ノベライズでは、「あやつは、明子に似て、心が清い」といっています。


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