波佐見の狆

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気配りの人ではあったが・・・(第35話)

2012-09-11 18:54:37 | 平清盛ほか歴史関連

清盛がドラマ中で剃髪、と聞いたときから、西行の出番だと思い込んでいたら・・・意外にも、受戒を求めたのは、比叡山延暦寺の明雲でした。

そしてその理由というのが、白河院の三大不如意「鴨川の水、双六の賽、山法師」のこの3番目を制覇するためだったとは!

しかも、清盛は既に、二条帝の葬儀の際、後白河の乱行に付き合って騒いだ明雲らを目ぢからで叱りつけ、退散させるということで、彼らを制圧していたのですが、ダメ押しということでしょうか、白河院と違って自分は、山法師とも真摯に向き合い、手を携えて行きたいと言うのです

六波羅に呼ばれた明雲が、「相国様(注1)におかれましては、病にお伏せりと叡山にも聞こえて参りました。」と言うと、清盛「死に損なったようでござります。」すると明雲は、互いに若かりし頃の因縁の事件である祇園社事件を持ち出し、「20年前の呪詛がようやく効いたかと思うておりましたが・・・」と思いっきりイヤミ?!を言います。清盛は穏やかに苦笑し、上記「真摯に向き合い、手を携えて」という考えを話します。ちなみに、ノベライズ本では、この発言の前に、白河院が山法師に手を焼いたのは、「手に負えないと遠ざけ、あるいはお逃げになったからにござりましょう。」との言葉があり、さらに説得力があります。本当は西行に授戒(注2)してほしかったと思うのですが、敢えて明雲に依頼したのはさすが清盛の考えは深い!

そして、清盛入道の出来上がり!本物のスキンヘッドは、なんだか青くてさわやかですねーーー

嫡男重盛。。

以前から彼と宗盛との間には、ギクシャクした空気が流れていましたが、34回にはそれが具体化し、今回はもう目をそらす2人・・・

重盛は、明子の繊細な部分を最も引き継いでおり、小さいころからとても真面目で、平家の嫡男としての責任感がとても強かったですね・・・しかし、時子の子が増え、いっぽうで、基盛が早逝してしまって、どんどん孤立化していきます。いつも宗盛、知盛、重衡の3人が集まってスクラムを組み、重盛は外に弾かれている感じですもの。。33話の清盛50の宴において、重盛と宗盛がペアになり優雅な扇の舞を披露しますが、このときの2人は息もぴったりで、ああこのまま仲良く2人長生きして一門を支えてくれたなら。。と思わずにはいられませんでしたが、「2人の長男」の間のきしみは必然でした

重盛の孤独を、どのくらい清盛はわかっているのか・・・・

福原に行くといった清盛に、いったい何をしようとしているのか分からないから本当のところを教えてほしいと真剣に詰め寄るのですが、清盛は、自分に代わって都で棟梁の務めをしっかし果たすのだというだけで、重盛の質問には何も答えてはあげません。頼盛に話してあげたような構想を、重盛に一番に話してあげてほしかった。清盛が自分の夢のことで頭がいっぱいなのは、かまいませんが、もう少し、重盛を大切にしてあげてほしい・・・もっと話をしてほしい。偉大なる父を100%理解し、支えたいという気持ちが誰よりも強かっただけに、理解できないということ自体が、彼にとっては苦しみなのです

重盛のことがとても心配です。これから、重盛はあの後白河対策の責任者?!として、後白河と清盛との間で板挟みになり、いろいろと心労がたたったらしく、42歳で亡くなります。平家興隆の絶頂期に亡くなることで、彼自身は一門の悲惨な末路を知らずに済んだことが、せめてもの救いかもしれませんが・・・悲しすぎますね。34話で、宗盛、時忠、時子がこそこそ話しているのを聞いてしまい、凍りつくところがありましたが、あの時すでに重盛の顔には死相が現れていました。メイクである程度暗い顔に見えるようにしてあったのかもしれませんが・・・やはり役者さんの表情、声のトーン、そして心がそう見せるのでしょう。真面目すぎたが故に深く苦悩する重盛そのもののような窪田正孝さんは、松ケンさんと3歳?しか違わないのですが、本当に息子のように見えるのは、身長の差のせいばかりではないと思います。

清盛は、きわめて「気配り」にあふれるバランス感覚の優れた人だったといわれており、前述の明雲への接し方はそれを如実に表していると思いましたし、頼盛に対しても、厳しいことを言いながらも、彼の気持ちを汲み、その立場になって考えてあげていましたね。

それはやはり、この2人は他人(注3)だったからかなあ・・・初めての自分の血を分けた身内である重盛には、気を遣わなくても大丈夫と思っていたのでしょうか。それは間違いだったということが、彼を失ってみて初めてわかるのか?

重盛を失った清盛は、どんどん暴走し、、、とまでは言えないかもしれないけど、生き急ぐようになったのかもしれません。

重盛の死を堺目として、坂道を転がり落ちていく一門・・・ああ、クリスマスの頃には一蓮托生で滅亡なんですねえ。。。

ノベライズ本中には胸打つ素晴らしい言葉がいっぱいで、今後もこちらで紹介したいのですが、ただ、本の中の具体的な言葉をこちらに書くのは、もしかしたら著作権上差支えがあるかもしれませんので、次回からはできるだけ控えることにします。

注1)33話あたりから、「(平)相国」(へいしょうこく)」という言葉が清盛の前にくっついていますが、この「相国」というのは、太政大臣を表す宋の官職名です。こういう細かい語句は、ドラマを見ているだけではキャッチできないですが(私はできなかったです・・・)、ノベライズを読めばすぐわかります。

注2)私が上記で受戒(授ける側からすれば授戒)という言葉を使ったのは、ノベライズ本でこの言葉を使っているからですが、ドラマでは、「何故われらの手による得度(とくど)を求められる?」と尋ねていました。得度とは、出家するための儀式という意味だそうです。

注3)頼盛も、血が全くつながっていないという意味では、他人でしょう。彼に対して清盛は、「これからも口うるそう一門を支えよ」と優しく言います。忠盛が忠正に言った言葉をそのまま用いることで、なんとか頼盛の離脱をとどまらせようとしますが・・・忠盛と忠正、そして頼盛と清盛の関係はどちらも、最後までうまくいかなかったというのが史実のようです。壇ノ浦にも同行せず、頼朝の庇護のもとひっそりと出家し、54歳で没する頼盛も哀れ・・・