まろの公園ライフ

公園から世の中を見る

サッカー兄弟

2012年01月10日 | 日記

東京はもう20日以上雨が降っていないと言う。
乾燥注意報発令中。

今日もみごとに晴れ渡った冬空。
走っていると喉も乾燥してカラカラになって来る。
ジョギング後はいつものように公園内の東屋でホットコーヒーを買って一服。

冬の公園は人も花も少なくて写真の題材に大いに困る。
自分の影を撮って見ても、うーん、何だかなあ・・・
カメラを覗いていたら向こうに子供の姿が見えた。

ボールを蹴り合うサッカー少年二人、どうやら兄弟らしい。
お兄ちゃんは小学校低学年、弟はまだ幼稚園ぐらいだろうか。
なかなか上手で互いに子犬がじゃれあうようにボールを蹴り合っている。

お兄ちゃんのリフティングをじっと見ている弟。
二人とも本当にサッカーが好きなんだなあ・・・という雰囲気が伝わって来る。
それを見ながら田舎にいる弟のことを思い出した。
四つ年下のたった一人の弟・・・

長男坊で何かにつけて腕白坊主だった私に比べておとなしい子だった。
学校から帰ると、それこそランドセルを放り出して草野球に熱中する兄に比べて
水の入った洗面器に船を浮かべて静かに遊んでいるような子だった。
それがもどかしくて強引に原っぱに連れ出して守備要員にしたこともあったが
運動は苦手だったようで、ヘタをすると泣き出すこともあった。
中学、高校、大学でも、しょっちゅう問題を起こして親に心配をかける私とは違って
優等生で成績もよく、兄は大学中退、彼はすんなり大学を出て東京で公務員になった。

その弟が「芝居」を始めたと聞いた時には驚いた。
とてもそんなタイプではなかったし、芝居に興味があるという話も初耳だった。
自分の中に鬱屈するものがあって、その発散、自己表現としての芝居だったのだろうか。
いわゆるアングラではなく、劇団青俳や青年座に所属して正当な新劇を目指した。
当時、私は大阪ですでに放送作家のマネごとをしていたが
東京で公演があると聞くと新幹線に乗って見に行った。
あの弟が舞台でスポットライトを浴びる姿に別人を見るようで、心底、感動した。
芝居の役者は昔から「河原乞食」などと呼ばれて蔑まれる存在で
親戚の口さがない人からは「風上が濁れば風下まで濁る」などと言われたものだ。

その弟が芝居の世界を諦め、田舎に帰って両親の面倒をみると宣言した時も驚いた。
いつまで経っても頼りなくてウダツの上がらない兄にしびれを切らして
自分が家を継いで親を安心させなくては・・・と思ったのだろう。
自分勝手な兄はその決断に大いに感謝し、正直、ホッとしたものの
それ以来、彼への「負い目」はずっと澱のように心の中で燻り続けている。
弟に足を向けては寝られない兄なのだ。

その弟ともしばらく逢っていない。
春には久しぶりに田舎に帰って酒でも酌み交わしたいものだが・・・
冬の公園のサッカー兄弟が遠く、まぶしく思えた日だった。

 


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