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居酒屋さすらい 0460 - 日本海の波の音と - 「北海」(米子市皆生温泉)

2011-08-01 14:22:45 | 居酒屋さすらい ◆地方版
夜の海が見たくて、海岸の方へと向かった。宿を出ると、その闇の深さに驚く。東京で暮らしていると自然の夜の暗さが分からなくなっていることに気づく。
ネオンの灯りがチラチラと見えて、温泉街特有の盛り場を期待して、その光を方へ向かうものの、そこはソープランドが店を構えており、黒服がてぐすねひいて待っているだけだった。
その先を行くと、キャバクラ街に出た。街といえば、大げさに聞こえるが、実際は2~3軒ほど。
「2時間ぽっきり3,000円」とあるが、すこぶる怪しい。
リーマンショック以降の景気低迷ですっかり客足が遠のいているという。とにかく、閑散としている。いやいや、町全体が、温泉街にしては、あまりにも閑散としすぎている。今、この町を歩いている客はわたし一人なのではないかとさえ思える。

大きなホテルに出ると、その向こうは海だった。波の音が聞こえてくる。
海岸まで出て、夜の海の波濤を眺めた。
波の高さはやや高く、波が砕ける音が不気味だ。
どういう地形をしているのか、海の向こうに街の灯りが微かに見えている。
晩秋の寂しげな夜の日本海を眺めていると、都会の喧騒を離れて、こうしてここに一人佇んでいても大丈夫なのではないかとさえ思えてくる。

きびすを返して、酒でも飲もうかと居酒屋を探すことにした。
居酒屋はなかなか見つからなかった。20分も探しただろうか、ようやく1軒の酒場を見つけたときは、もう既に22時をまわっていた
入りづらい、思いっきり入りづらい。
戸を少し開けて中を覗いてみた。客は誰もいないようである。すると、カウンターの向こう側の女性と目が合った。
女性は、外に出てきて、「どうぞ」と声をかけてくれた。

ビールはすでにたらふく飲んでおり、わたしは焼酎の水割りを頼むこととした。
銘柄は分からず。ただ「地元の人がよく飲むものを」と言って頼んだ。
酒肴は何があるのか分からない。多少は店の壁に貼られたメニューがあるが、その数は少なく、しかも値段も分からない。
「つまみは何がありますか?」と尋ねると、若いママは少し考える素振りを見せて、「カワハギのみりん干ならすぐにでも」と答えが返ってくる。
「松葉ガニ」をたっぷりと食べてしまい、もうお腹がいっぱいなのだが、どうもその言葉に反応してしまい、ついつい注文してしまった。

14インチのテレビからはバラエティ番組の乾いた笑いが聞こえてくる。
ママはまだわたしよりも随分と若く、随分明るく染めた茶髪が、また若さを一層引き立てた。
カウンターの上は手作りなのか、テーブルクロスが敷いてあり、なんだか都会の居酒屋とは少し違った手作り感を感じさせる。
ママはポツリポツリと話しかけてくる。
少しぎこちない会話が繰り返される。それが、まさに海沿いの居酒屋に似つかわしい、少しの哀愁が漂う。
「不器用ですから」。
言葉に詰まったら、そんな一言でも言えば、だいぶこの居酒屋でもサマになるのではないかと思う。
焼酎の水割りをお代わりした。
そして、この辺りの気候について、当たり障りのない話しをした。

もしかすると、もう2度とこの店には来ないかもしれない。
いや、来ない可能性のほうが高いと思う。
そして、このママとももう2度と会うことはないだろう。
そんなことを考えると、遠くの海の音も手伝って、少し寂しい気持ちになってくる。

焼酎2杯を飲んで、お勘定した。
「カワハギのみりん干」と合わせて2,100円。
少し高いように感じる。
もう2度と会わないなんてセンチになることはないんだろうな。ママはしっかりとお金をとっているんだから。
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