
東陽町はなんとかなると思っていた。
多くの飲み屋が群雄割拠して、立ち飲み屋なんかすぐ見つかるだろう、と。
当ブログ恒例になった「立ち飲みラリー」は東西線木場駅から東陽町に差しかかっていた。
木場駅では土壇場で角打ちの立ち飲み屋を見つけ、すんでのところでラリーのたすきを繋いだ。
そのたすきを受け継ぎ、この日、じっとり背中に汗をかきながら、東陽町駅周辺を立ち飲み屋目指して歩き回ったのである。
だが、なかなか見つからない。
永代通りをくまなく歩き、時々脇の道に逸れてみたりしたのだが、やはりない。東陽町ビスタホテルの裏通りもなぞってみたりした。普通の居酒屋は掃いて捨てるほどあるのに、立ち飲みがどうしても見つからないのだ。
出直そうか、と東京メトロの4番出口から駅に入ろうとした際、マンションの建物の一階に赤提灯が見えた。
「まさか」と思ったが、念のために店を確かめに行くと、看板には「立ち飲み処」と記されている。
こうして、またまた「立ち飲みラリー」は土壇場で、その灯を守ったのである。
まず、その店名にはおおいに笑った。
「しっかり八兵衛」というのである。
たった一文字で、こんなにも劇的に印象が変わるものなのか、と店の名前の命名に拍手を送りたいが、店構えと店名に何の関係があるのかは不明だ。
店に入ってみると10坪ほどの客間があり、すでに幾人かの客がそれぞれの席に座して酒を飲んでいる。
なんと、「立ち飲み処」と書いてあるのに、中味はちっとも立ち飲みではないのだ。実はこういうお店にはよくある話。初めは立ち飲みだったのが客のニーズによって椅子が作られる、という店は結構ある。この店もこういう軌跡を辿ったのであろう。
だが、店の中央のテーブルには、まだ誰も客がいなく、わたしはそこにポジションした。そこには椅子も用意されていたが、わたしは意地でもそれに座るつもりはなく、立ったまま店の壁に貼ってあるメニューを眺めた。
すると、一人の女性が近づいてきて、注文を取るのである。とりあえず、「生」を頼んだ。すぐさま、中ジョッキでビールが運ばれ、貪るようにわたしはジョッキを手にしたのであった。
ジョッキの中身は「発泡酒」だった。だが、壁に貼ってあるメニューには、どこにも「生ビール」とは書いていなかった。そこには「生ジョッキー」(350円)とだけ書いてあったのだ。そして、わたしの足元近くには「生搾り」の樽がいくつも転がっていたのである。
さて、注文を取りに来た女性の日本語には独特のイントネーションがあった。アジアの女性のそれである。大抵の場合、わたしはその女性がどこの国の人なのか、判断できるのだが、この女性の出身は分からなかった。中国かな、と思ったが、確信はない。別にどこの国の方でもいいが、その女性の働きぶりには目を見張るものがあった。
全てのアジア女性がそうとは限らないが、居酒屋で働くアジア女性はその多くがぞんざいな態度を取る。それはそれで、別に責めるつもりもないのだが、この「しっかり八兵衛」の店員は実ににこやかにお客に接するのである。これには、まず驚いた。
酒の肴には「タコ刺し」(300円)を注文した。ぶつ切りの豪快な切り口でそれは出てきた。
きょろきょろと店を観察すると、一人で来ている客が多いことに気づいた。
無職風の彼らは新聞を読みながら黙々とホッピーを飲んでいる。そして、彼らに共通するのは、豚ポン酢(400円)をつまみにしている点である。
最後に、同店オリジナルの焼酎をロック(350円)で注文した。独自の甕から注がれるそれは少し変わった香りがする。どうやら芋と米をブレンドしたもののようであった。
周りを見回すと立っている客はわたし一人のようだ。椅子に根が生えないようにわたしは焼酎のロックを飲み干すとアジアの店員に笑顔で挨拶をして店を出た。
清々しく飲みたいと思ったからである。
しかし、もし「うっかり八兵衛」が「しっかり者」だったとしたら日本の歴史は変わっていたんだろうな。
多くの飲み屋が群雄割拠して、立ち飲み屋なんかすぐ見つかるだろう、と。
当ブログ恒例になった「立ち飲みラリー」は東西線木場駅から東陽町に差しかかっていた。
木場駅では土壇場で角打ちの立ち飲み屋を見つけ、すんでのところでラリーのたすきを繋いだ。
そのたすきを受け継ぎ、この日、じっとり背中に汗をかきながら、東陽町駅周辺を立ち飲み屋目指して歩き回ったのである。
だが、なかなか見つからない。
永代通りをくまなく歩き、時々脇の道に逸れてみたりしたのだが、やはりない。東陽町ビスタホテルの裏通りもなぞってみたりした。普通の居酒屋は掃いて捨てるほどあるのに、立ち飲みがどうしても見つからないのだ。
出直そうか、と東京メトロの4番出口から駅に入ろうとした際、マンションの建物の一階に赤提灯が見えた。
「まさか」と思ったが、念のために店を確かめに行くと、看板には「立ち飲み処」と記されている。
こうして、またまた「立ち飲みラリー」は土壇場で、その灯を守ったのである。
まず、その店名にはおおいに笑った。
「しっかり八兵衛」というのである。
たった一文字で、こんなにも劇的に印象が変わるものなのか、と店の名前の命名に拍手を送りたいが、店構えと店名に何の関係があるのかは不明だ。
店に入ってみると10坪ほどの客間があり、すでに幾人かの客がそれぞれの席に座して酒を飲んでいる。
なんと、「立ち飲み処」と書いてあるのに、中味はちっとも立ち飲みではないのだ。実はこういうお店にはよくある話。初めは立ち飲みだったのが客のニーズによって椅子が作られる、という店は結構ある。この店もこういう軌跡を辿ったのであろう。
だが、店の中央のテーブルには、まだ誰も客がいなく、わたしはそこにポジションした。そこには椅子も用意されていたが、わたしは意地でもそれに座るつもりはなく、立ったまま店の壁に貼ってあるメニューを眺めた。
すると、一人の女性が近づいてきて、注文を取るのである。とりあえず、「生」を頼んだ。すぐさま、中ジョッキでビールが運ばれ、貪るようにわたしはジョッキを手にしたのであった。
ジョッキの中身は「発泡酒」だった。だが、壁に貼ってあるメニューには、どこにも「生ビール」とは書いていなかった。そこには「生ジョッキー」(350円)とだけ書いてあったのだ。そして、わたしの足元近くには「生搾り」の樽がいくつも転がっていたのである。
さて、注文を取りに来た女性の日本語には独特のイントネーションがあった。アジアの女性のそれである。大抵の場合、わたしはその女性がどこの国の人なのか、判断できるのだが、この女性の出身は分からなかった。中国かな、と思ったが、確信はない。別にどこの国の方でもいいが、その女性の働きぶりには目を見張るものがあった。
全てのアジア女性がそうとは限らないが、居酒屋で働くアジア女性はその多くがぞんざいな態度を取る。それはそれで、別に責めるつもりもないのだが、この「しっかり八兵衛」の店員は実ににこやかにお客に接するのである。これには、まず驚いた。
酒の肴には「タコ刺し」(300円)を注文した。ぶつ切りの豪快な切り口でそれは出てきた。
きょろきょろと店を観察すると、一人で来ている客が多いことに気づいた。
無職風の彼らは新聞を読みながら黙々とホッピーを飲んでいる。そして、彼らに共通するのは、豚ポン酢(400円)をつまみにしている点である。
最後に、同店オリジナルの焼酎をロック(350円)で注文した。独自の甕から注がれるそれは少し変わった香りがする。どうやら芋と米をブレンドしたもののようであった。
周りを見回すと立っている客はわたし一人のようだ。椅子に根が生えないようにわたしは焼酎のロックを飲み干すとアジアの店員に笑顔で挨拶をして店を出た。
清々しく飲みたいと思ったからである。
しかし、もし「うっかり八兵衛」が「しっかり者」だったとしたら日本の歴史は変わっていたんだろうな。
こんど言ってきます。
情報、ありがとうございます
ご覧頂いた情報は1年半前のものです。それ以降、このお店にはうかがっていません。したがって、この文章と同じ状況なのかは不明です。
ご了承ください。
でん爺さんは、このお店のことをご存知のようですね。
と、いうことはまだお店は元気に商売されているのですね。
なるべく、再訪して新たな情報を書き加えたいところですが、熊猫は現在東西線の沿線に住まいがなく、つい疎遠になっています。
「立ち飲みラリー」東西線編もこのお店から東を歩いていません。いつか、再開したいと強く思っているのですが、なかなか実現できないというのが、正直なところです。
でん爺さん、このお店に行かれた際は、コメント欄にレポートをお願いします。
また、南砂町界隈で立ち飲み屋をご存知でしたら、是非教えて頂ければ幸いです。