「上等カレー」を甘辛と評すものがやたらと多い。ホントにそうだろうか。だって、カレーって、元々そういう要素のある煮汁じゃないか。甘さは煮込まれた野菜の味。辛味はスパイシー感。それが溶け込まずに独立した層を形成し、舌の上で奏でる。溶け込まないのは、それぞれが微妙な均衡の上に成立しているから。どちらかが強くなったら、それは一気に瓦解する。 . . . 本文を読む
プシュカルから帰り、アジメールのバスターミナルに戻ったわたしはぐったりと疲れ果てていた。この国の人たちは、必ず何か厄介な揉め事を持ちかけてくる。中国も面倒くさい国だったが、インドは、それ以上にややこしかった。
いつもの食堂で、ターリーを食べ、その帰りに、例の屋台で瓶ビールを買おうとすると、いつもあるはずのビールが見当たらない。
「ビールは売り切れかい?」
ちょっと冗談めいて、わたしが店のあん . . . 本文を読む