和井弘希の蘇生

桂信子先生に師事。昭和45年「草苑」同人参加。現在「里」同人「迅雷句会」参加

革心29/小説「新・人間革命」

2015年06月02日 07時51分51秒 | 今日の俳句
【「聖教新聞」 2015年(平成27年) 6月2日(火)より転載】

【革心29】

 復旦大学での図書贈呈式を終えた山本伸一の一行は、十三日午後、上海から急行列車で蘇州へ向かった。

 当初、一行は、上海から無錫へ、直接行く予定であったが、「天上に天国あり、地上に蘇州、杭州あり」といわれる、江南の景勝地を案内しようとの中国側の配慮で、蘇州に一泊することになったのである。

 車中、三年五カ月ぶりに訪れた上海の印象を語り合った。街では、パーマをかけた女性の姿が目についたことなどが話題になった。

 「中国は変わりつつありますね。女性たちの表情が、生き生きとしています。自由を手に入れた喜びと、新しい時代を担おうとする気概が伝わってきました。中国は、これから急速に発展していくのではないでしょうか」

 それが、婦人部の感想であった。

 また、伸一は、中日友好協会の孫平化秘書長とも、友好の在り方について話し合った。彼とは、四年前に中国を初訪問した折、どのようにして、日中の友好を永遠ならしめていくかについて意見交換したことがあった。その時、孫秘書長が、魯迅の『故郷』の一節を引いて語った言葉が忘れられなかった。

 「『もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ』(注)――魯迅先生は、こう言われております。

 私は、友好の道というものも、そうして出来上がると思っています。たくさんの人が、一歩、また一歩と、踏み固め、行き来する。その積み重ねが、平和の大道となっていく。それは、一朝一夕では、決してできません」

 その時、伸一は、こう答えた。

 「全く同感です。私も妻も、これから、何度も中国にまいります。いいえ、私たちだけでなく、多くの若い世代も連れてまいります。日中の平和友好のために、未来のために、共に道を開きましょう」

 この語らいを、孫秘書長もよく覚えていた。

 「先生は、その通りに行動され、立派な道をつくられ続けています。感謝します」

 二人は、あらためて固い握手を交わした。

■ 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「故郷」(『魯迅選集 第一巻』所収)竹内好訳、岩波書店



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