古森病院@福岡市博多区 病院管理者のブログ

ベイサイドプレイス近隣にある長期滞在型病院です。投稿記事は管理者の独自見解であり、医療法人の見解ではありません。

企業側から見たパワーハラスメント対策

2020-09-13 12:02:54 | 日記
古森病院@福岡市博多区です。

さて2020年6月1日(中小企業は2022年4月1日)から
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
(略称:労働施策総合推進法)の改正(「第8章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」追加)に伴い、
事業主は俗にいう「パワーハラスメントの防止策」を策定することが求められています。

具体的には
①パワハラの禁止を職員に周知
②相談窓口の設置
③相談事由への対応
④通報のみを理由とした不利益処分の禁止

が柱です。

しかし。。。

各種本を読んでいると 難しい点がたくさん出てきます。

①パワハラと指導の違いをきちんと分けて 理解できない人が多いこと。
②通知では パワーハラスメントに該当しなくても幅広く相談に乗れということですが、
明らかにパワハラに該当しない場合 どう相談に乗るのでしょう?
医療機関は 患者様への医療安全や患者様の医療情報の守秘義務がかかっている以上、
何回教育しても理解度の低い職員へはある程度 厳しめの指導が必要ですし、
配転も病院職員は職種限定採用がほとんどで、行き先もありません。
③パワハラされたとする人とパワハラしたという人の主張や事実関係が
食い違う場合はどうするのでしょう。

仮に通報者が調査結果に納得しない場合、内部での対応は難しく、
労働局などに介入してもらうことになると思います。
パワハラの定義に該当しないのに、通報者がパワハラされたと声高に訴えるなら 
通報者(対応を誤れば事業主も)はパワハラされたと名指しで言われた職員から 
名誉毀損に問われる可能性があります。

ちなみに先日 顧問弁護士さんに

「事業主があらゆる手を尽くしたのに、パワハラと主張される事案が発生して
事業主が訴えられて パワハラが仮に裁判で認定された場合 
裁判所は事業主に何か判決上 配慮してくれるのですか」とお伺いしたところ

「・・・・・・」

ということで、事業主は一生懸命対策を練ったとしても実際に発生してしまったら、
対策はすべてカウントされず なかったことになるも同然ということのようでした。

なあんだ、それなら何しても一緒じゃない。どうせ
一生懸命対策しても 免責されないなら何もしないでいいじゃん
という発想も当然出てきますが、

管理人の理解では パワハラ認定が裁判で確定したら

事業主が一生懸命対策した→事業主は使用者責任だけで済む
事業主が何も対策しなかった→事業主は使用者責任+安全配慮義務違反+
世間への企業名の公表(+過料?)

みたいな印象です。

ただし、使用者責任だけのときと、使用者責任+安全配慮義務違反で 
損害賠償額がどれほど差がつくのかも微妙なようです。。。
医療機関が損害賠償額を全額支払った場合は、当然
パワハラしたとされる職員への求償権はあり、求償額の割合は 
事業主が対策を講じていれば 事業主が有利にはなるでしょう。

事業主としては、事案が発生したら 各立場の職員の人権を考えながら 
労働行政機関の支援を仰ぎつつ 
その都度対応していくということになるかなと思います。

当院での対策ですが

①各部門においている就業規則にハラスメント禁止についての記載はすでに行っています。
②相談窓口の周知はすでにやっています。ハラスメント相談窓口対応本を購入しまして
相談窓口となっている主任級以上職員+総務職員に対応本を残業命令で読んで
レポートを出すように お話しています。管理人はもう読みました。
③職員への全体研修は昨年すでに行い(特に指導との違い)、今年も行う予定です。
④顧問弁護士さん執筆のセクハラ・パワハラ本(裁判例が列挙されたもの)を
各部署に置いています。管理人はこの本も既に読みました。

https://komori-hp.cloud-line.com/

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