金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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金色の涙(白拍子)101

2009-02-19 21:14:28 | Weblog
 白拍子はそっと半身を起こした。
 卓造・於満の夫婦に勧められるまま、社務所の一隅の寝所に泊まっていた。
今夜がその二日目。
安穏と過ごせぬ自分に気付いた。
外の気配に合わせたかのように、快感らしきものが湧き上がってきた。
 隣室で誰かが起き上がる物音。卓造のようだ。
白拍子を気遣ってるのか、小さな声で於満を起こす。
何事か話し合い始めた。
 白拍子は遠慮しない。
立ち上がると、隣室と隔てる襖を開けた。
「外の者達は何者なの。ただの泥棒にしては殺気立ってるけど」
 暗闇の中で驚いたように二人が振り向いた。
白拍子の目は暗闇でもよく見える。
すでに卓造は身支度を終えていた。
 このような時でも二人は白拍子を「於雪」と呼んだ。
卓造が於満を制し、厳しい顔で白拍子を見た。
「部屋から出ないでおれ」
「一人で立ち向かうつもりなの」
「あの程度であれば、ワシ一人で充分」
「無理しない方がいいわ」
「あの者達は武人ではなし、恐れる事はない」
「何者なの」
「異国の神を信じている者達だ」
「異国の・・・。それが、何故」
「この神社の宝物を盗みに来たのだろう」
「宝物・・・」
「何故かは知らないが、昔から伝わる宝物に興味があるようなのだ」
 この神社には神主等が一人もいない。いるのは目の前の老夫婦のみ。
二人で留守番を任されているのだそうだ。
神主等に関して白拍子が尋ねると、老夫婦は曖昧な答えしかしない。
何かを隠しているのは歴然。
 あまりに無警戒なこの神社に、狙われるような宝物があるとは。
「ふーん」
「まあ、ここはワシに任せろ。追い払ってやる」
「村の者達には報せないの」
「無用」
 白拍子は卓造の本気を理解した。
言葉で止めるのは無理だろう。
「私も一緒するわ」
 卓造は暫し考え、頷いた。
「怪我せぬように、ワシの後ろをついてくるのだぞ」

 卓造を先頭に、三人が社務所から出た。
卓造と於満の二人は長い棒を携えていた。
樫の木で、長さは六尺あまり。
「神域を血を汚したくない」とは卓造の言葉。
それでも万一に備え、二人とも脇差を帯びていた。
 白拍子はいつもの格好。巫女装束に、紫の烏帽子。
そして腰には、抜く事の無い白鞘巻きの小太刀。
 夜空の月明かりが三人を照らした。
 忍び込んでいる者達は社殿の裏に回っていた。
宝物蔵の出入り口が裏にあるのだ。
 小さな扉に大きな錠前が二つ。厳重にかけられていた。
彼等は月明かりの中、必死に錠前に取り組んでいた。
総勢六人。見張りも置いてはいない。
 彼等の格好は、揃いの黒装束に黒覆面。腰には脇差。
身軽に動ける事を第一に考えているようだ。
 まず一つ目の錠前が音をたてて落ちた。
 卓造が前に進み出た。
「何をしておる」
 六人が一瞬、動きを止めた。
驚きから立ち直るのは早い。
素早い身ごなしで、四人が卓造を囲むために動いた。
 於満も駆けた。
夫の背後を守る位置につき、身構えた。
 先頭の男が脇差を抜いて斬りかかった。
それを卓造は棒の先で流し、反転させて肩を狙い打つ。空振り。
相手は後退した。
 卓造は一足飛びに間合いを縮め、逃さぬように追い突き。
相手は脇差の峰で打ち払う。
 横合いから斬りかかってくる者を於満が牽制した。
 卓造も於満も棒扱いに乱れはない。
対する四人側も油断ならぬ動き。じっくりと包囲。余裕さえ感じられた。
 白拍子は於満から託された呼子を吹いた。
夜風を切り裂く笛の音。村人達を呼集する合図だ。
 笛の音に相手側が動揺を始めた。
 そんな時、二つ目の錠前が音をたてて落ちた。
一人が手早く松明に火を点け、中に入ろうとした。




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