鉄矢が額に突き刺さったと言うのに、即死には至らなかった。
ワイバーンは落下する途中、翼を広げ、飛行体勢に戻ろうと足掻いた。
足掻きに足掻いた。
無駄だった。
そのまま真下の建物の屋根に頭から突っ込んだ。
鈍い衝突音。
貴族邸の最上階の一角を壊し、身動きしなくなった。
探知と鑑定で調べた。
生体反応が消えていた。
これでEP数値の正解が見えた。
ちょっと足りなかった。
一射にEP15を充てよう。
MP換算すると、たぶん、30から40だろう。
あっ、あれは・・・。
ワイバーンが一角を壊した建物から、わらわらと人々が飛び出して来た。
顔見知りのお貴族様当人もいた。
顔色が悪い。
ワイバーンに襲われたとでも勘違いしているのだろう。
でも、まあ、いいか。
俺がそのワイバーンを討伐したんだけど、
誰も見てないから内緒にしとこう。
所有権も主張しない。
お貴族様に譲りましょう。
例え本館そのものが壊れたとしても、
ワイバーンから魔卵を取り出し、それを売れば釣り合うはず。
さらに解体すれば部位も高価で売れる。
最終的には大幅な黒字。
問題解決だね、たぶん・・・。
さぁ、次のワイバーンは何処・・・。
2翼目が仲間が討伐された事に気付いた。
怒ったかのような仕草をし、右から接近して来た。
俺を獲物として視認する目付き。
かえって好都合。
射程300に入った奴の額を射た。
これまた躱せる訳がない。
命中、矢羽まで完全に、めり込んだ。
スイッチが切れたかのように、力を失うワイバーン。
悪足掻き一つもせずに貴族街の路上に落下した。
3翼目は左から襲って来た。
これを、飛んで火にいるワイバーンとでも言うのだろうか。
射程300、まだまだ、200、まだまだ、100を切った。
顔が大きい、大きい、怖い、怖い。
速度を落とさない所を見ると、俺を屋根から弾き飛ばすつもりのようだ。
ワイバーン君、さて、思い通りに行くかな。
最接近、50。
射た。
命中、額から貫通し、後頭部から鉄矢が飛び出した。
へえー、やったね、俺。
感心している場合ではない。
風魔法、風魔法。
風魔法で奴を捉え、屋敷に被害が出ない様に落下させないと。
捉えた。
制御して馬場の、ど真ん中に下ろした。
商品が痛まぬように、そっと下ろした。
すると下から歓声とも悲鳴ともつかぬ声が上がった。
敷地内でワイバーンに備えていた兵士達だろう。
南区画に向かって来たのは4翼だから残りは1翼。
はて、いないな。
探知と鑑定で探した。
あっ、いたいた。
少し離れた場所で騎兵隊と戦っていた。
ワイバーンは旗色が悪い。
直に討伐されるだろう。
国都全体を調べてみた。
予想通り、ワイバーンは数を減らしていた。
どうやら、こちらに向かって来る個体はなさそうだ。
外の魔物達はどうなんだろう。
驚いた事に一匹もいない。
遺骸が残して、全て姿を消していた。
ワイバーンの威圧が消えたので、通常モードに戻り、
それぞれの営巣地に引き返したのだろう。
「新たなスキルを獲得しました。雷魔法☆」脳内モニターに文字。
やったね俺。
「新たなスキルを獲得しました。
雷魔法の広域攻撃魔法、サンダープリズン」
風魔法で屋根から飛び下り、部屋に戻った。
バーティ仲間達は部屋の片隅に集まり、お茶していた。
緊張感が欠片もない。
真っ先に俺に気付いたシンシアが口を開いた。
「外の様子はどうなってるの」
「話は後で。
それよりも外に出よう」
「どうしたの」
「ワイバーンの1翼が家の馬場に落ちた」
「落ちた・・・」
「誰かが討伐したみたい」
「誰かが・・・」
皆の目が俺に問うていた。
アンタ、なにしたのって。
えっ、内緒、説明するのが面倒臭い。
俺は仲間達に加え、一階にいた執事のダンカン達を引き連れ、
馬場に急いだ。
外はまだ暗いが、要所には篝火が焚かれているので、転ぶことはない。
途中、上空を警戒している兵士達が俺達に気付いて、
直立不動の敬礼をした。
面映ゆい。
まだ子爵様に慣れない自分。
それでも歩きながら答礼した。
「ごくろうさん」
こちらに駆けて来る足音。
急いているようだ。
暗がりから兵士が飛び出して来た。
俺に気付いて急ブレーキ。
「報告します。
馬場にワイバーンが落ちました。
調べたところ、誰かに討伐されたようで、死んでいました」
誰かって、俺なんだけど、それは言わない。
すると、背中を仲間の誰かが突っつく。
アンタじゃないのと言わんばかりの強さ。
振り返らない、振り返らない。
俺が相手するのは目の前の兵士だけ。
「分かった、案内して」
馬場ではワイバーンを取り囲むように、盛大に篝火が焚かれていた。
主役はワイバーン。
それを見て仲間のキャロル達、女児が悲鳴を上げた。
「イヤー」
「キャー」
「コワイ」騒ぎながら手前で足を止めた。
少しだけ年上のシェリルは違った。
「すっ、凄いわね。
本当に死んでるの」守り役・ボニーの手を引きながら歩み寄る。
大人のシンシア達は元国軍士官だけあり、平然と歩み寄り、
手を伸ばして外皮の手触りを確かめた。
「死んでも、染み込んだ魔力は抜けないのね」
「良い防具になるわね」
「私ならフード付きの長いローブと、手袋、ブーツかな」
空を飛ぶワイバーンには恐怖するが、こうなると、ただの原材料。
どうやって解体するかな。
ワイバーンは初めてなので分からないんだけど。
そんな俺の前に小隊長のウィリアムが来た。
村時代からの仲なので気安い。
「このワイバーン、如何いたしますか」
「如何とは」
「討伐者が所有権を主張なされると、少々、面倒なことに」
「討伐者が主張するにして、その根拠となるものが有るのかい。
見たところ、槍も矢も刺さってないようだけど」
「そうなんですよ。
それで扱いに困っています」
「腐る前に解体するしかないだろう」
「それもそうですよね。
それでは解体します」
「聞くけど、ワイバーン解体の経験は」
ウィリアムが笑みを漏らした。
「魔物で慣れてます。
ワイバーンはちょっと大きいだけです。
任せて下さい」
ワイバーンは落下する途中、翼を広げ、飛行体勢に戻ろうと足掻いた。
足掻きに足掻いた。
無駄だった。
そのまま真下の建物の屋根に頭から突っ込んだ。
鈍い衝突音。
貴族邸の最上階の一角を壊し、身動きしなくなった。
探知と鑑定で調べた。
生体反応が消えていた。
これでEP数値の正解が見えた。
ちょっと足りなかった。
一射にEP15を充てよう。
MP換算すると、たぶん、30から40だろう。
あっ、あれは・・・。
ワイバーンが一角を壊した建物から、わらわらと人々が飛び出して来た。
顔見知りのお貴族様当人もいた。
顔色が悪い。
ワイバーンに襲われたとでも勘違いしているのだろう。
でも、まあ、いいか。
俺がそのワイバーンを討伐したんだけど、
誰も見てないから内緒にしとこう。
所有権も主張しない。
お貴族様に譲りましょう。
例え本館そのものが壊れたとしても、
ワイバーンから魔卵を取り出し、それを売れば釣り合うはず。
さらに解体すれば部位も高価で売れる。
最終的には大幅な黒字。
問題解決だね、たぶん・・・。
さぁ、次のワイバーンは何処・・・。
2翼目が仲間が討伐された事に気付いた。
怒ったかのような仕草をし、右から接近して来た。
俺を獲物として視認する目付き。
かえって好都合。
射程300に入った奴の額を射た。
これまた躱せる訳がない。
命中、矢羽まで完全に、めり込んだ。
スイッチが切れたかのように、力を失うワイバーン。
悪足掻き一つもせずに貴族街の路上に落下した。
3翼目は左から襲って来た。
これを、飛んで火にいるワイバーンとでも言うのだろうか。
射程300、まだまだ、200、まだまだ、100を切った。
顔が大きい、大きい、怖い、怖い。
速度を落とさない所を見ると、俺を屋根から弾き飛ばすつもりのようだ。
ワイバーン君、さて、思い通りに行くかな。
最接近、50。
射た。
命中、額から貫通し、後頭部から鉄矢が飛び出した。
へえー、やったね、俺。
感心している場合ではない。
風魔法、風魔法。
風魔法で奴を捉え、屋敷に被害が出ない様に落下させないと。
捉えた。
制御して馬場の、ど真ん中に下ろした。
商品が痛まぬように、そっと下ろした。
すると下から歓声とも悲鳴ともつかぬ声が上がった。
敷地内でワイバーンに備えていた兵士達だろう。
南区画に向かって来たのは4翼だから残りは1翼。
はて、いないな。
探知と鑑定で探した。
あっ、いたいた。
少し離れた場所で騎兵隊と戦っていた。
ワイバーンは旗色が悪い。
直に討伐されるだろう。
国都全体を調べてみた。
予想通り、ワイバーンは数を減らしていた。
どうやら、こちらに向かって来る個体はなさそうだ。
外の魔物達はどうなんだろう。
驚いた事に一匹もいない。
遺骸が残して、全て姿を消していた。
ワイバーンの威圧が消えたので、通常モードに戻り、
それぞれの営巣地に引き返したのだろう。
「新たなスキルを獲得しました。雷魔法☆」脳内モニターに文字。
やったね俺。
「新たなスキルを獲得しました。
雷魔法の広域攻撃魔法、サンダープリズン」
風魔法で屋根から飛び下り、部屋に戻った。
バーティ仲間達は部屋の片隅に集まり、お茶していた。
緊張感が欠片もない。
真っ先に俺に気付いたシンシアが口を開いた。
「外の様子はどうなってるの」
「話は後で。
それよりも外に出よう」
「どうしたの」
「ワイバーンの1翼が家の馬場に落ちた」
「落ちた・・・」
「誰かが討伐したみたい」
「誰かが・・・」
皆の目が俺に問うていた。
アンタ、なにしたのって。
えっ、内緒、説明するのが面倒臭い。
俺は仲間達に加え、一階にいた執事のダンカン達を引き連れ、
馬場に急いだ。
外はまだ暗いが、要所には篝火が焚かれているので、転ぶことはない。
途中、上空を警戒している兵士達が俺達に気付いて、
直立不動の敬礼をした。
面映ゆい。
まだ子爵様に慣れない自分。
それでも歩きながら答礼した。
「ごくろうさん」
こちらに駆けて来る足音。
急いているようだ。
暗がりから兵士が飛び出して来た。
俺に気付いて急ブレーキ。
「報告します。
馬場にワイバーンが落ちました。
調べたところ、誰かに討伐されたようで、死んでいました」
誰かって、俺なんだけど、それは言わない。
すると、背中を仲間の誰かが突っつく。
アンタじゃないのと言わんばかりの強さ。
振り返らない、振り返らない。
俺が相手するのは目の前の兵士だけ。
「分かった、案内して」
馬場ではワイバーンを取り囲むように、盛大に篝火が焚かれていた。
主役はワイバーン。
それを見て仲間のキャロル達、女児が悲鳴を上げた。
「イヤー」
「キャー」
「コワイ」騒ぎながら手前で足を止めた。
少しだけ年上のシェリルは違った。
「すっ、凄いわね。
本当に死んでるの」守り役・ボニーの手を引きながら歩み寄る。
大人のシンシア達は元国軍士官だけあり、平然と歩み寄り、
手を伸ばして外皮の手触りを確かめた。
「死んでも、染み込んだ魔力は抜けないのね」
「良い防具になるわね」
「私ならフード付きの長いローブと、手袋、ブーツかな」
空を飛ぶワイバーンには恐怖するが、こうなると、ただの原材料。
どうやって解体するかな。
ワイバーンは初めてなので分からないんだけど。
そんな俺の前に小隊長のウィリアムが来た。
村時代からの仲なので気安い。
「このワイバーン、如何いたしますか」
「如何とは」
「討伐者が所有権を主張なされると、少々、面倒なことに」
「討伐者が主張するにして、その根拠となるものが有るのかい。
見たところ、槍も矢も刺さってないようだけど」
「そうなんですよ。
それで扱いに困っています」
「腐る前に解体するしかないだろう」
「それもそうですよね。
それでは解体します」
「聞くけど、ワイバーン解体の経験は」
ウィリアムが笑みを漏らした。
「魔物で慣れてます。
ワイバーンはちょっと大きいだけです。
任せて下さい」
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