金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

(注)文字サイズ変更が左下にあります。

昨日今日明日あさって。(テニス元年)14

2023-05-07 08:53:02 | Weblog
 俺は部屋の四隅の一角へ移動した。
ここなら背中を取られない。
はあ、漫画の読み過ぎだって・・・。
でも、そこは譲れない。
光学迷彩を解いて、サンチョに声を掛けた。
「は~い、サンチョ」
 全員の視線を集めた。
前もって幹部クラスの三名にも説明済みのようだ。
無駄が省けて結構、毛だらけ猫灰だらけ。

 サンチョが嬉しそうな顔をした。
「待ってましたよ」
 クラークは通常運転、サンチョに任せて自分は素知らぬ顔。
テーブルのグラスに手を伸ばした。
一方の、幹部クラス三名は俺を値踏みする目色。
感じが悪いが、無視して置こう。
 サンチョが話を進めた。
手元の書類を持って俺の方へ歩いて来た。
「これです」
 俺は受け取って一読した。
侯爵一人、伯爵一人、商会の商会長が二人、金貸しが一人。
それぞれの居住地、仕事上の拠点、口座、倉庫、家族、側近、
現在進行中の仕事内容等々からライバルの氏名まで、至れり尽くせり。
勿論、アルファ商会の件も含まれていた。
悪事ばかりが網羅されていた。

 俺はサンチョに金貨を詰めた小袋を手渡した。
「人材が集まった様だな」
 サンチョがニコニコと小袋を押し抱いた。
「お陰様で。
ところで、これとは別にお願いがあるのですが」
「表の連中かい」
「話が早くて助かります」
「あれが最近、伸して来た若造達かい」
「はい、あの連中の排除をお願い出来ませんか」
「それは簡単だが、お前達の面子がかかってる。
自分達で潰した方が今後の為になるんじゃないのか」
「それはそうなんですが、奉行所の目があります。
派手に動くと、ここに目が付けられます」
「クラークにバックアップを四名ほど付ければ、
内密に対処できそうだがな」
「そうなんですが、そこを何とかお願いします」
「残業になるが、特別サービスだ」

 話を終えた俺にクラークが尋ねた。
「そのお面は何だ」
「何だとは」
「笑いを取りたいのか」
 お多福仮面がお気に召さないらしい。
「アートを理解できないみたいだな。
偶には美術館巡りをお勧めするよ」
「けっ・・・」

 俺は屋根に転移した。
取り囲む連中を詳細に鑑定した。
若造ばかりではなかった。
軍門に下った大手ファミリーの三下もちらほら。
それでスラム生活の難しさが理解できた。
 手強そうなのはボスを含む六名のみ。
残りは粗暴さが売りの者ばかり。
それらはご立派な武器を手にしていた。
言い換えれば、彼等はそれに依存しているだけ。

 俺は闇魔法を起動した。
六名の右腕をロックオンした。
闇刃・ダークカッターを放った。
GoGo。
 闇魔法初心者が手初めて覚える攻撃魔法の一つ。
ただ使用者が俺。
破壊力は他とは比べ物にならない。
それでも余計な詮索しない筈だ。
被害者が、どうという事のない連中だから。
 
 攻撃魔法が予期せぬ角度から放たれた訳だが、
標的の一人にも魔法使いがいた。
スキルは風魔法中級。
だが、気付かぬ。
彼を含めて六名が右腕を失った。
 包囲した各所で騒ぎになった。
悲鳴と怒号が上がった。
そして攻撃した者を探し回る喧騒。

 奉行所の手先達も騒ぎに気付いた。
二手に別れた。
少数が捕り手方を呼びに走り、残りは近い現場に駆け付けた。
居合わせた連中を検挙し、犯罪現場の証拠保存を図った。
当然、被害者に目をくれる訳はない。
血止め一つせずに、現場にほったらかし。

 俺は重力魔法に風魔法を重ね掛けした。
推進力を得て飛行した。
目的地は近くに居住するペミョン・デサリ金融の商会長・ペミョン。
 サンチョの資料によると、奴は外郭東区画に屋敷を持っていた。
そこへ向かった。
深夜飛行になるが問題はない。
地図機能をオンし、脳内モニターの一つに国都マップを映した。
ナビ開始。

 夜烏に遭遇した。
正確には魔物なので魔鴉。
翼を広げると最長で2メートル。
小賢しいので弱者しか襲わない。
それが一羽、二羽、三羽、・・・計十三羽。
 群れなして来たが、俺に気付いた。
強者と即断したらしい。
直ぐに群れを左右に割り、俺を迂回した。
面倒事が嫌いらしい。
「「「ガガー、ガガー」」」
 抗議の声を上げて、飛び去った。

 ペミョン邸の上空に達した。
此奴も小賢しい質らしい。
屋敷の間口は狭いが、奥は深い。
これは彼だけではなかった。
近辺にはそんな屋敷が多かった。
さしずめ、この辺りの富裕層は、庶民として見られたいのだろう。
 何時までも深夜労働をしていられない。
育ち盛りなので早くベットに入りたいのだ。
なので仕事をテキパキと進めた。

 敷地内を複数の警備員が巡回していた。
片手には短槍、もう片手には携行灯。
木陰や建物の陰には、きちんと明かりを当てていた。
手順としては間違いではない。

 俺は鑑定でペミョンを見つけた。
早速、光学迷彩を施した。
恥ずかしがり屋なので、その必要があった。
それでもって、ペミョンの寝室に転移した。
大きなベットに夫婦で寝ていた。
 女房が巨大なお尻をはだけていた。
戦後の臭いがした。
一戦交えて疲れているのか、二人して高鼾。
まあ、そんな細かい事はどうでも良い。
早く済ませて帰ろう。

 部屋を見回し、鑑定した。
目的物は見つからない。
とっ、続き部屋があった。
契約魔法で鍵を開け、お邪魔した。
 絵画の類が壁全面に飾られていた。
何れも古今の逸品ばかり。
盗難防止の為か、保存の為か、窓がない。
あるのは高価な空調設備のみ。
銭金に目がない、は違っていた。
美術品にも目がなかった。

 鑑定で詳細に室内を調べた。
それは一枚の絵画の裏にあった。
隠し金庫。
 施された術式を解き、中身を取り出した。
全てが貸付の契約書であった。
借り手は貴族ばかり。
長引く反乱の影響が、貴族の懐を直撃しているのだろう。
彼等の足下を見て、宮廷の定めた金利を無視し、暴利を貪っていた。

 俺は借金漬けの貴族を助ける趣味はないが、
成り行きで全ての契約書を押収する事にした。
そしてそれを、帰り際、王宮の上空から撒き散らした。
ああ、眠い。

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