金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(テニス元年)15

2023-05-14 07:52:42 | Weblog
 俺は朝寝坊した。
そこをメイド二人に襲われた。
浴室で丸洗いされた。
得意気にメイド長・ドリスが言う。
「さあさあ、お着換えしましょうね」
 もう一人のメイド・ジューンが良い笑顔。
「うっふふふ、これにしましょうね」

 登校してクラスに入った。
通学路ばかりでなく、クラスも何時もの空気だった。
児童の集まりだから騒々しいが、昨夜の件は話題になっていない。
 押収した物を王宮の上空から撒き散らしたが、
全てを近衛軍が回収したとは思えない。
風で、王宮区画から外に飛ばされた物もあった。
事態の推移は、近衛軍も含めた拾い主の思惑しだいだ。
どう動くか楽しみだ。
黙殺されたら、されたで、それも面白い。
その理由を探れば、新たな何かが出て来る筈だ。

  授業は滞りなく終わった。
下校は、何時もの様にキャロル達が一緒だ。
女児達を引き連れての帰り道、街中の空気に不穏な色を感じ取った。
・・・、萌芽、・・・。
これは俺が当事者だからだろう。
それは決して罪の意識ではない。
心底で楽しんでいる自分を確認した。
 まあ、それはそれ。
悪党共を蹴散らすのは夜のお仕事。
昼間はお子様伯爵を演じよう。
それが務めというものだ。

 屋敷に戻ると俺達はお着換えタイム。
俺は執事長・ダンカンに付き添われて自室へ。
女児達は自分達が勝手に占有した部屋へ、当然の顔で入って行く。
それに文句を言う使用人はいない。
この屋敷では俺よりも女児達が優遇されていた。
うっ、解せぬ。

 このお着換えタイムに、俺にダンカンが付き添うのは何時ものこと。
ダンカンは、スケジュールが詰まっている俺を考慮して、
僅かな時間も見逃さずに報連相してくれる。
報告、連絡、相談。
執事の家系に生まれただけにソツがない。
「ダンタルニャン様、王宮やその周辺で変事が起こりました」
 隠蔽する奴がいたかどうかは知らないが、これで事態が進行する。
後は公的機関に丸投げだ。
その本心を隠して、伯爵を演じた。
「どうしたんだい」
「ペミョン・デサリ金融を覚えてらっしやいますか」

 ペミョン・デサリ金融、当家の主立った者ならつい最近の事なので、
一度は耳にしているだろう。
それも悪い意味で。
「ああ、覚えているとも、それが」
「そこの内部より重要書類が流出した様です」
「流出・・・、都合の悪いと言う意味かい」
「はい、詳しい事はただいま調査中ですが、
宮廷では騒ぎになっています」
 ポール細川子爵家からの情報もあるのだろう。
「分かった。
・・・。
ねえ、ダンカン、人手は足りてるかい」

 ダンカンは疑問の眼差し。
「ええと、どういう意味ですか」
「伯爵になって、その手の裏事情を調べる事が必須になってきた、
そう感じる様になったんだ。
その点をどう思う、執事長として」
 当然、うちは新興のお貴族様だから、当初から人手が足りない。
これまでは、その足りない所はポール殿に頼って来た。
それが寄親の伯爵様になってしまった。
そう何時までも頼れないだろう。
「はい、私も不足していると認識していますので、
それなりの経験者を探してもいます。
ですが、これが難しいのです」
「どこが難しい」
「信用に値するかどうかです」
 確かに。
そこは丸投げするか。
「その手の、裏の人材確保は決定だ。
ダンカン一人で悩まず、カールとも相談してくれ。
意外とアドルフも顔が広いようだ。
二人は美濃だから、行って来ると良い」

 着替えを終えて集合場所に向かった。
馬車寄せが近い一角、庭先の四阿だ。
既に女児達が揃っていた。
当初のメンバー、キャロル、マーリン、モニカ。
押し掛けで、何時の間にか居付いたシェリル京極。
そしてその守役のボニー。
 それまで参加していた大人組の三人、
シンシア、ルース、シビルは不参加、正確には除隊扱い。
三人揃ってアルファ商会の取締役に就任したので、
冒険者どころではなかったのだ。
人の雇用や、商品の手配等々、商売に奔走せざるを得なくなった。
 結果、大人はボニー一人になった。
これに各所よりクレームが来た。
「生徒ばかりではないですか、それはいけません」
「女子ばかりではないですか、ハーレムですか」
「魔物を討伐してるではないですか、危ないですね」
「伯爵様としての職責を果たして下さい」
「せめて大人を増やして下さい」

 俺は万事豆腐だった。
外には四角四面に、ハード対応。
内には柔らかく、ソフト対応。
要するに、外野の声を聞く耳はない。
 何しろうちのメンバーは複数のスキル持ちばかり。
この所の一連の騒ぎで大きく成長した。
全員が探知スキルに開眼した。
武技スキルにしてもそう。
槍士が二人、剣士が一人、弓士が一人、盾士が一人。
だからといって誰も満足はしていない。
それぞれが得意の武技を伸ばそうと躍起になっていた。
 つまり、実戦あるのみ。
実戦でこそスキルが伸びるし、新たな開眼もある。
でも積極的に魔物討伐をやる訳ではない。
薬草採取のついでに、魔物を返り討ちにするだけのこと。
何事も出会いが大切なのだ。

 下校後なので、そんなに時間はない。
伯爵家の馬車で今日の採取場所に向かった。
俺は、その馬車の中でサンドイッチを軽く摘まんで、
ドリンクに手を伸ばした。
飲みながら尋ねた。
「今日の薬草は」
 手を止め、キャロルが答えてくれた。
熱冷ましだと言う。
修業に必要な分を手元に置いて、残りをギルドに売るのだそうだ。

 彼女達三人はぶれない。
当初の目標の薬師へまっしぐら。
その過程で魔法の一つも覚えると。
学業しだいでは上級の学校へ進み、宮廷職員募集試験に挑むとも。
羨ましいくらいに真っ直ぐだ。
 一方のシェリルも真摯に武芸に励んでいた。
女性騎士として独り立ちしたいと願っていた。
イヴ様との面識から、その半分は適えられていた。
守役のボニーはそんな彼女に終身仕えるつもり。
うちの女性達は覚悟が違う。
対して俺は、幸運ばかりが舞い込んで来る。
はあ、・・・。

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