金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(動乱)347

2014-06-19 20:17:09 | Weblog
 劉芽衣は追い込まれた。
名を上げた二人が却下されたのだ。
有力な外戚である何進将軍。
宦官の家系に生まれた曹操。
袁紹党といっても詳しく知っている分けではない。
袁紹と親しくしている朝廷の官吏も知らない。
彼の周辺で思い浮かぶのは、名を上げた二人のみ。
 困っている芽衣の表情を季律が覗き込む。
「何とか、お力添え願えませんか。
毒殺の首謀者を知りたいのです。
于吉殿に連絡を取り、調べていただきたいと、その旨を伝えて頂けませんか」
 今の状況で于吉に連絡を取るには、彼女本人が後宮に出向くしかない。
となれば人目を引く。
噂が流れ、尾鰭がつく。
いや、それ以前に于吉との面会が許されるかどうか。
別の問題も。
果たして于吉が依頼を引き受けるだろうか。
万が一、受けたとして、「調べるだけの力量があるのか」という新たな問題も。
正式な職務ではないので、はなはだ難しいだろう。
毒殺未遂現場に遭遇したからといって、
俗世とは無縁の者である彼が気軽に受けるとは思えない。
道士には道士の生き方がある。
浮世の義理で後宮に留まっているのだろうが、
それ以上の深入りは好まないだろう。
 芽衣は季律を正視した。
「お断りするわ。
このような大事を頼むほど、于吉殿とは親しくないの。
ごめんなさいね」
 季律は諦めない。
「天下の一大事ですよ。
今こそ我ら一同、結束して働くべきでしょう」と力を込めた。
「貴方達は朝廷の恩恵を受けているので、当然、身を粉にして働くべきでしょうね。
でも、于吉殿は別よ。
あのご老人は、朝廷とも劉家とも無縁の方。
何も期待してはいけません」
「しかし」と季律が言うのを芽衣は止めた。
「よく考えなさい。
毒を盛ったと思われる三人は服毒自殺しているのですよ。
おまけに、その三人はたいした手掛かりも残していないの。
それでも官吏、近衛等が必死になって調べたわ。
強権でね。
何者かが事件の背後にいるのではないか、全容を曝こうと、それは知っているでしょう」
「ええ、今もって何も分かってません」
「そうよ。
彼等の力不足ではないわ。
相手が一枚上手なだけだと思う。
それを貴方達は女官二人で調べ上げられると思った分け。
女官二人には気の毒だけど、暢気よね」
 季律の表情が曇った。
「たしかに・・・、返す言葉がありません。
それでは我ら、どうすれば」
 芽衣は気になる事を尋ねた。
「女官二人に調べさせようとしたのは誰なの」
 季律が、「言い出したのは袁紹殿の屋敷に居候している食客の一人です」と即答。
「それに袁紹殿が賛同した分けね」
「ええ、それが・・・」
「袁紹殿はこのところ官職への登用を固辞しているわね。
それには何か理由があるのかしら」
「宦官が幅を利かせている朝廷には昇りたくないそうです」
 芽衣から笑みが漏れた。
「前回、宦官に意地悪されて懲りた、ということかしら。
打たれ弱いのは、それはそれで困りものね。
官職を渡り歩けば、様々な気苦労で人間が磨かれ、ちょっとは、まともになれるのにね」
 芽衣の真意が伝わったのだろう。
季律は口を半開き。
言い淀んでいるようにも見えた。
 芽衣は無視して続けた。
「それで女官二人はどこまで調べ上げたのかしら」
 季律はさらに言い淀む。
たいした収穫もないまま、姿を消したに違いない。
 芽衣は季律から視線を外さない。
間を置いて問う。
「毒殺が成功して得する者は誰なのかしらね」
「それは・・・」
「得する者は次の帝。
あるいは王莽のように帝位を簒奪する者」と断言。
 季律は何も言わない。
ジッと次の言葉を待つ。
「袁紹党はそれでも調べるつもりかしら」
 困惑する季律をよそに、芽衣は続けた。
「蔵書を調べさせて頂いているので、そのお返しに女官二人の遺骸を探しましょう」
 予期せぬ申し出に季律の表情が改まった。
「出来るのですか」
「半々ね。
後宮の闇に噂を流すの。
女官二人の生死は問わない。
犯人も問わない。
引き渡してくれれば、それ相応の礼金を支払う。
それだけよ。
こちらを信用すれば、犯人が話しに乗ってくるわ」
「すると犯人が分かりますね」
「それは問わない約束。
どんなことでも信用は大事よ」



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