金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(西部戦線は異状ばかり)7

2023-10-15 12:16:48 | Weblog
 ハッピーの質問にルイス・ブラウンは頑強に抵抗した。
嘘を吐く度に、施された術式が起動し、ランダムに、
身体の一部に痛撃を喰らわせるのだが、
彼は泣き叫びながら耐えてみせた。
どうやら尋問対策を講じているようだ。
だが、それは無駄というもの。
妖精の一人が悪い顔をしてルイスに告げた。
『貴殿はコラーソン王国の第三騎士団長、ルイス・ブラウン殿だろう』
 ルイスが涙と涎、嘔吐で汚れた顔を上げた。
見難いが、自我は壊れていないようだ。
「・・・」

 妖精は再び呼び掛けた。
『ルイス・ブラウン殿』
 ルイスが怪訝な表情を浮かべた。
「どう、どうして分かった」
『まず、この念話から驚いて欲しいな』
 ルイスがハッとした。
「念話・・・、これは」
 ようやく我々が口を開いていない事に思い及んだようだ。
『我々は貴殿の頭の中に話し掛けている。
つまり、貴殿の考えている事が手に取る様に分かる』
 怪訝そうな彼に続けた。 
『我々は質問で貴殿の記憶を揺らし、
術式による刺激で更に掘り起こしている。
つまり、貴殿の記憶の全てを露わにしている、そういう事だ。
その上での注意だ。
これ以上続けるとダメージが深部に及ぶ。
要するに、そうなると我々では治癒できなくなる。
今なら正常な身体に戻せるが、これを続ける事はお勧めしない。
さて、貴殿はどうしたい』
 虚と実をこねくり回した。

 ルイスはただの人間。
激しく動揺し始めた。
しめしめ、狙い通り。
ハッピーの術式が虚実の仕分けをしている、と理解してくれれば、
より混乱させられ、尋問対策を突き崩せる。

 ハッピーが冷静に質問を続けた。
『パー、貴殿は妻帯しているのか』
『ピー、国王の名は』
『プー、コラーソン王国の敵国は』
『ペー、嫡男の名前は』
『ポー、無事に帰国できると思うか』
 ハッピーは関連せぬ質問でルイスに混乱を招いた。
その混乱に妖精達が付け入った。
綻びたステータスを糸口に、それぞれが鑑定を利用し、
ルイスの記憶の海をサルベージした。
嘘はハッピーの術式のお陰で分かり易い。
尋問対策用の虚構の外海を回避し、
巧みに隠された真相の内海へ至った。

 この足利国は天然の要害に守られていた。
南には水棲魔物が棲む大海原。
東には大型魔物が蠢く大樹海。
北には深く険しい大山岳地帯。
そして西は広大な大砂漠地帯。
だが古来より、そこを越えて往き来する者達がいた。
一攫千金の商人、冒険者、探索者、学者。
彼等により足利国の豊かさが広く知られていた。
 垂涎の地ではあるが、世界は足利国への侵攻は控えた。
その理由は二つ。
国が長く一つに纏まっていた。
要害を越えるとなると収支が赤。
そこへこの所の内戦勃発の報せ。
世界は色気を見せた。
情報収集に力を入れた。

 西域諸国に属するコラーソン王国はまず侵攻を決めた。
そして先兵として、偽装させたキャメルソン傭兵団を送り込んだ。
彼等の主目的は進軍路調査と、途次の宿営地の選定、
足利国での足場確保の三つ。
傭兵団は前の二つを成し遂げ、三つ目に取り掛かっていた。
戦に託け、島津家の不満分子に密かに接触して、
それなりに手応えを得ていた。

 ルイスは現在の王国の動きは知らないが、現国王の性格からして、
軍勢編成は済んでいると読んでいた。
その軍勢を待機状態にして置く事はない。
兵糧を喰うばかりだからだ。
従い、もしかすると、既に送り出しているかも知れない、とも。

 アリスは決めた。
『こちらから出向いてみよう』
 妖精達は賛成した。
『いいね、進軍路を逆に辿ってみよう』
『そう、見つけたら蹴散らすか』
『多少は手応えがあるのかしら』
 ハッピーも大喜び。
『パー、戦だ戦だ』

 アリス達はエビスに乗り込み、都城の練兵場を見下ろした。
解放したルイスがフラフラと歩いていた。
その後ろを部下達が付いて行く。
手の施しようがないから全員が困り顔。
あっ、ルイスがこけた。
直ぐに起き上がれない。
部下達が慌てて手を貸した。
アリスがハッピーに尋ねた。
『回復できるのかしら』
『ピー、無理無理。
ポーションでも施術でも無理っピー』

 コラーソン王国の進軍路を逆に辿る事にした。
上陸点・枕崎をその上空から見下ろした。
ここからなら鹿児島から程よい距離。
近場には開聞岳と池田湖を擁する大樹海もあった。
兵糧の肉にも不足しないだろう。
良い着眼点だ。
アリスが提案した。
『先に池田湖の魔物・イッシーを狩らない』
 イッシーの餌となる巨大ウナギも気になる。
『それは戻ってから』
『突っ込んで、チャチャッとやっちゃおうよ』
『アリス、寄り道は程々にね』

 真西に飛行した。
下は砂漠なので見るべき物はない。
ただただ砂々砂、一面が砂の海。
時折、大量の砂が吹雪の様に風に飛ばされて来た。
それでもエビスに影響なし。
何事もなく飛行を続けた。
 気が付いた。
棲む魔物がいない。
たぶん、餌となる物がいないから。

 オアシスを見つけた。
小さな泉があり、低木の木々が周囲に生えていた。
家は、家は、と探したが、痕跡一つなし。
面積からして定住は無理だろう。
ただ、宿営地にはなっている様で、
それらしき広さの土地が踏み固められていた。

 妖精の一人が注意を喚起した。
『気を付けて。
右斜め前方に黒い雲が出現した』
 確かに怪しい。
その雲がこちらに向かって来る。
あれは・・・、黒い柱、蛇の様に揺れ動いて・・・。
それも三つ。
『アリス、竜巻よ。
こちらに急接近して来るわ』
 三つの竜巻はそれぞれ速度が違った。
しかも、右に左に揺れ動きながらだから、影響する範囲が確としない。


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