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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(バンパイア)39

2011-05-24 22:30:16 | Weblog
 暴力団と一緒にされて田原は気を悪くしたらしい。
眉間に皺を寄せながらミラーボールを見上げた。
だからといって毬子に危害を加える恐れはない。
 ヒイラギがサクラに問う。
「奴の考えが読めたのか」
「読もうと思えば読めるけど、そこまで深く読むつもりはないのよ。
下手すると雑念に囚われるかも知れないからね」
「ほう、雑念に囚われるか」
「そうよ。
人体の強弱は分かり易いけど、心だけは別物なの。
人ほど複雑なモノはないから、
雑念に囚われると底なし沼に引き摺り混まれたも同然なのよ」
「そうか、難しいものだな」
「だから必要以外には人の中に深く入り込まない。
下手すると自分が壊れるか、相手が壊れる。あるいは両方。
だから出来るだけ表層から全てを読み取る。分かった」
 サクラはヒイラギに教えると、続けて毬子を相手とした。
「この男の心底は分からないけど、今のところは爆発する危険性はないわ。
妙に脈拍が安定している。だからアンタもリラックスして」
「分かった、ありがとう。
ところでヒイラギの触手はどうなったの。指くらいは出来た」
「んー、悔しいけど、これが意外と器用なのよ。
十日はかかると思っていたら、もう小指らしきモノが出来たわ」
 田原が表情を引き締めて毬子を見た。
「事情を話そう。事の発端は一年ほど前だ。
私が赴任する予定の大分の牟礼寺から所有物が盗まれた。
その時の住職は、盗んだ相手に心当たりがあったので、警察沙汰にせず、
内々に返還して貰おうと東京へ交渉に向かった。
そして、それっきり。行方不明になった」
 田原は毬子が理解していると顔色で判断し、続けた。
「そこで我々の出番になった。
行方不明になった住職から事情を粗方知らされていたので、
我々は相手方の住居や事務所に盗聴器を仕掛け、事実関係を調べた」
「そんなに簡単に盗聴器を仕掛けられるものなの」
「簡単も簡単、慣れれば君でも出来る。忍び込む覚悟さえあればね。
試しに遣ってみるかい」
「結構です」
 田原が鼻で笑う。
「ふっ。
・・・。
時間はかかったけど真相が分かった。
盗んだのは一番目に殺した西木正夫。
その仲間が二番目に殺した北尾茂。
勿論、その二人だけじゃない。
盗品を買ってくれる相手がいなければ商売にならないからな。
盗む前に買ってくれる相手を探す。それが失敗しない盗品商売の鉄則。
話しを持ちかけられたのが、三番目に狙った小野田晃一郎。
盗品と知って購入を承知した。
と言うわけ。
後は新聞やテレビのニュースで知ってのとおりだ」
「我々と言ったけど何人か仲間がいるのね」
「勿論。誰々とか、何人とかは秘密だけどね。
とにかく我々は慎重に裏付けをとって、100%の確証を得た上で行動した」
「さっきも聞いたけど、どうして警察に届けないの」
「私達は僧侶だから、密告のような真似はしない。犯罪者も作らない」
「何を、・・・でも結果として殺したじゃない」
 田原が鋭い目で毬子を見た。
「人を殺したわけじゃない。罪を裁いただけ。罪を憎んで人を憎まず。
罪の前には、人の生き死になんてのは二の次なんだよ」
 目に狂気の色はない。
心底から至極当然と思っているらしい。
どこでどういう教育を受けたのか。
本当に僧職にあるのだろうか。
とにかく、まともに相手は出来ない。
「それで、私には何の用なの。
人を殺した自慢話をする為に声掛けたわけじゃないでしょう」
「自慢話ときたか」と田原。傷付いたような表情で一呼吸置く。
「それなら思い出してもらおうかな。
野上邸で君は私を迎え撃った。
その時の太刀筋を私はしっかりと覚えている。
あれは本気で私を斬る太刀筋だった。斬る事に何の迷いもなかった。違うかな」
「あれは、・・・みんなを守る為だったのよ」
 田原が余裕のある顔をした。
「君は、みんなを守る為に私を斬るつもりだった。
私は会ったことのない住職の無念を晴らす為に二人を斬った。
そこに何の違いがある。
私は実際に二人を斬り、四人に手傷を負わせた。
君は運の良い事に、腕が未熟だった為に私を斬る事が出来なかった。
殺せなかったというだけで、行なった行為は私と何の違いもない」
 返す言葉がなかった。
毬子は田原の挑むような視線を正面から受け止められず、
唇を噛んで、悔しそうに顔を逸らした。
 あの時は辻斬りの技に魅せられた。
庭先で用心棒二人の腕を斬り落とした太刀筋を見て、
「立ち合いたい」という欲求が湧き上がった。
気持を抑えられるほど大人ではなかった。
気付いたら、反射的に『風神の剣』を掴んで庭先に飛び出していた。
「みんなを守ろう」という気持が本当にあったのかどうかは今でも分からない。
ただ、ただ、立ち合いたかっただけなのかもしれない。
 田原は毬子をそれ以上は追い詰めない。
何事も無かったかのように話しを変えた。
「頼みがあるんだ」
「・・・私に」
「そう。寺から盗まれた物を預かって欲しいんだ。
『風神の剣』というんだけどね」
 いきなり、「風神の剣を預かってくれ」とは。
予想だにせぬ話しの展開ではないか。
 それに、もう一つ。
『風神の剣』でそれを思い出した。
辻斬りの太刀筋が「判官流」であった事だ。
上方の古武術、判官流。京八流の系統と謂われる。
「その前に確かめたいのだけど。貴男の修行した流派は判官流なの」




東電が福島原発の二号機、三号機のメルトダウンを認めました。
これで一号機から始まってワンツースリーフィニッシュ ! ! !
メルトスルーが起こる可能性も・・・。
格納容器から床に漏れ落ちると、次は地中しか残ってないけど・・・。
 素人のような後手後手の公表。
東電に原発の玄人はいないんですかね。




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