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PTAの謎――任意団体

2022-12-11 22:09:36 | 教育制度/行政

 PTAについて書く。がPTAそのものを書くのが目的ではない。学校という組織はさまざまなほころびを見せている。そのほころびのなかで私がもっとも問題だと思い、しかし、どこから手をつけたらよいのか、わからない問題が部活動である。部活動は学校教育の機能を根底で蝕んでいる。いま、高校野球が甲子園で行われている。現在のシステムを変えることなど、この空気ではできない。甲子園大会に出場するチームは文字通り氷山の一角である(このくそ暑い夏にいう言い方としてはイマイチだが)。裾野には一回戦で敗退する野球部がある。そこにも、顧問が貼り付いており、多くは教員が顧問となっている。一年中野球漬けである。その彼らを支える組織としてPTAは存在する。そのPTAである。

PTAの意味

PTAくらいわけのわからない組織もない。
謎である。
ちなみに、PTAのそれぞれの意味はご存じかと思うが、念のため。

「P」は「Parent」つまり、「親」だ。
「T」は「Teacher」つまり「先生」だ。
「A」は「Association」つまり、大変訳しにくい。「連合体」「結社」。

 かんたんに言えば、「親」と「先生」の「集まり」――これがPTAである。

任意団体

 このPTAは悪く言えば巧妙に、そして、無意識的に構成されている。社会学の用語に「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」という用語がある。これはドイツの社会学者テンニースが提唱した概念だが、「ゲマインシャフト」というのは、かんたんにいうと「自然」を基本とした「家族」「親族」「村落」といった共同体をいう。家族は別段意識して、決意して、選択して、構成員になっているわけではない。無意識に、知らず知らずに構成員になっているわけだ。「ゲゼルシャフト」は「ゲマインシャフト」とは対称的にテンニースが明確に規定しているように「選択意志」がきわめて重要な要素だ。
 PTAは義務として「所属しなければいけない」という強制力はない。強制力を執行できる法的根拠はない。「任意団体」だ。つまり、「ゲゼルシャフト」だ。入りたければ入ればいいし、入りたくなければ入らなくて良い。
 昨年度末に、このことをきわめて揺るがす奇妙な出来事が日本国の学校で起こったのだ。いや正確にいうと実は、PTAは任意団体だが、任意団体ではない、という奇妙なことが判明したのだ。

先生はPTAの会員なの?

 PTAというと、多くの人は、先生はPTAの会員だと思っていないのではないか。大体、私は会員だと思ってなかった。いま「なかった」と書いた。この春、私は正式に「会員」でなくなったのだ。
 PTA総会がある。PTA総会は大体春に開かれる。その総会に教員は参加しない。通常しない。校長がオブザーバーとして参加するくらいだ。ほら、総会にでない、それも参加不参加を聞かれないんだから、教員はPTAの会員じゃないじゃないか。
 われわれ教員はじつは、PTA総会には参加しないし、PTA会長の選出にもからまないし、ついでにいうと、昨年までPTA会費をびた一文払っていなかったのだ。
 カネも払わない。PTA総会に参加もしない。でもPTAです。

「なんじゃこりゃ?!」

 の世界がここにあったのだ。
 しかし、ここではっきりさせなければいけない。PTAの会員に学校の教員は事実上なっていなかったということだ。そう、正確には「PTA」といってはいけない。

「PA」

なんだ。くわしいことは長くなるので省略する。昨年、県教育委員会事務局から指示があった。

 「会費を払え!」

とは、もちろん、いわない。だって「任意団体」だから。教員が会費を払わないというのはまずい、というのだ。
そして、本年度からPTA会費を教員も負担することを提案したのだ。
ここで、通常ならば、PTAが「任意団体」であることは判明せず、そのままゲマインシャフト的にこの議事が決定されていったことだっただろう。
そのとき、一人の変わり者がこういった。

「PTAは任意団体ですよねえ。私、参加しません。」

実は、通常、PTAは「任意団体」だが「任意団体」ではないのだ。じゃあ、何か?

「ゲマインシャフト」

なのだ。ここにPTAの謎のすべてがある。
  

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一部改訂しました。 (Kimura Masaji)
2013-08-20 20:26:30
末尾の部分を一部改訂しました。
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