中国の覇権拡大の野望は、この地上世界の未来を大きく左右する。このたび、台湾総統選に世界の注目が集まったのも、そのためだ。
今回紹介するのは、約2700年前、メソポタミア地域(現在のイラン・イラク周辺)を統治したササン朝ペルシャの国教となるゾロアスター教を広めた「ゾロアスター」と、その魂が19世紀の中国に転生し、宗教指導者として「太平天国の乱」で清帝国を揺るがした「洪秀全(こう・しゅうぜん)」のアナザーストーリーである(関連記事:中国でゾロアスター・洪秀全が立ち上がる! 新・過去世物語 人は生まれ変わる 独裁政権を倒す「宗教革命」の魂)。
そしてその魂は現在、中国の「次の革命」に向けて、人々を救うための準備を始めているという。
ゾロアスターは、光と闇、善と悪の違いを教え、現代の世界宗教に影響を与えた
日本人にはなじみが薄いが、ゾロアスター教は、キリスト教やイスラム教といった、天からの啓示に基づいた宗教(天啓宗教)の先駆けにあたる。
ゾロアスターは、今から約2700年の昔に、「光と闇、善と悪、天国と地獄を明快に説いた先駆者の一人」として、ペルシャの人々に生きるべき道を説いた。
その善悪二元論や死後の審判、最後の審判などの教義は後世に大きな影響を与えており、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教にも、よく似た教えが見られる。
伝説によれば、ゾロアスターは東北イランから南ロシアに至る地域の遊牧部族の祭司階級の家に生まれ、30歳で光の神オーラ・マズダ(アフラ・マズダ)からの啓示を受けた。故郷では受け入れられず、40歳で伝道の旅に出て、42歳頃に小国の王を改宗させ、その領民を信者にし、77歳まで教えを説いたといわれる。
その教えの核心は、この世界を「光と闇の戦い」の場と見て、光の神を信じ、「善思」「善語」「善行」を選び取ることにあった。一人ひとりが善き思いを抱き、それを言葉と行いに具体化することで、闇を追い払い、この世を光に満ちた世界に変えてゆける──その教えは、厳しい掟と未来への希望を兼ね備えていた。
そして、この世界において、人間は常に、光の神オーラ・マズダと、邪神アーリマンのいずれの側につくかが試されている。
「善思」「善語」「善行」を重ねた者は、死後、「チンワトの橋」という来世への境界線を通り、光の世界に帰れるとも説かれた。
「私の教えでは、『深い谷底のある崖の間に一本の幅広い刀が架かっていて、死者は、その上を通らねばならない』ということになっています。そして、この刀を渡ろうとするとき、『生前、善をなした者の場合は、その幅広い刀は水平になり、その横になった刃の上を歩いて向こう側に渡れ、天国へ入っていける。一方、悪人であった場合は、刀の刃の部分が上を向いて、渡ることができなくなり、体が切り裂かれて谷底に落ちていく。そして、地獄に入る』ということになっております」(『ゾロアスターとマイトレーヤーの降臨』)
こうした死後の審判の教えは、ペルシャと地続きのインドにおける仏教にも影響を与えている。
ゾロアスターは何によって宇宙の邪神アーリマンを退けたのか
ゾロアスター教の教典『アヴェスター』には、印象的な悪魔祓いの物語が綴られている。
宇宙の邪神であるアーリマンの軍勢が攻めてきた時、ゾロアスターはオーラ・マズダの名を呼び、悪魔祓いの歌を唱え、彼らを撃退したという(以下、『アヴェスター』〔伊藤義教訳〕を参考)。
アーリマンは「ゾロアスターを殺せ」という命令を下し、その軍勢を差し向けるが、ゾロアスターが「マズダをまつる教法」に「帰依告白」すると、その信仰に圧倒され、全く手出しができなかった。ゾロアスターは、襲来する軍勢を退けると、アーリマンに「我は魔族を打倒せん」と言い放つ。