《ニュース》

厚生労働省の研究班が、日本国内で脳死の可能性のある患者数が、2023年で年間約1万人に上ったとする推計結果をまとめました。

 

《詳細》

研究班は国内で脳死判定が行える大学病院や救急病院など895カ所に調査を依頼し、23年8月3日からの一週間で、脳死の可能性を示す患者数の報告を求めました。

 

その合計が184人に上ったことから、年間で脳死疑いの患者が9568人となると推計。研究班は、医師が家族に臓器提供の選択肢を示すことが増えれば、提供者を相当数増やせる可能性があるとしている、としています(18日付読売新聞)。

 

2023年は、脳死判定に至った患者は132人で、そのうち臓器提供を行ったのは130人です。人口が3億3千万人のアメリカでは、年間1万4千人が脳死臓器提供を行っていることと比較した時、人口比を考慮しても日本の水準は極めて少ないのは事実です。2008年の国際移植学会で出された「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という趣旨の宣言に基づき、日本でも脳死臓器移植の数を増やす取り組みが進められてきました。

 

2010年の法改正で、家族の同意があれば脳死臓器提供が行えるようになりましたが、医師が家族に「脳死臓器提供」の選択肢を示すことは少ないことが指摘されています。理由としては、回復が難しい事実を家族に告知することに心理的抵抗があること、脳死判定の前に必要な検査を行っても追加の診療報酬が支払われないことなどが挙げられています。

 

1997年に臓器移植法が施行された当初、本人の意思による脳死臓器提供の件数は年間十数件で推移していました。2010年には家族の同意があれば提供が可能になり、23年には116人の提供数にまで増えています。ただし、「本人の意思による提供数」は増えておらず、23年でも23件にとどまります。

 

日本の法律では、脳死下で臓器提供を行う場合のみ、「脳死は人の死」とされています。ただ、実際には脳死状態では心臓が動いており、体も温かいままです。こうした患者を診て「死んでいる」とみなすことは、医療者にとっても抵抗があることが伺えます。