ウクライナ戦争の"元凶"ヌーランド米国務次官が退任 ウクライナ敗北を前に表舞台から姿を消そうとしたという指摘も
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ビクトリア・ヌーランド氏(画像:Flash-ka / Shutterstock.com)。
《ニュース》
対ロシア強硬派で知られ、ウクライナ戦争の中心的役割を担ったビクトリア・ヌーランド米国務次官(国務省のナンバー3)が、今後数週間以内に退任すると米国務省が5日(現地時間)に正式に発表しました。
《詳細》
ヌーランド氏は、6人の大統領と10人の国務長官の下で35年にわたって国務省に勤務してきており、主にヨーロッパを中心に、アメリカによる介入主義的な外交を強力に進めてきた人物です。
例えば、2003年のイラク侵攻を行ったブッシュ(子)政権時代には、戦争の主犯格とされるチェイニー副大統領の外交政策担当補佐官や、NATO(北大西洋条約機構)米代表大使を歴任。この侵攻計画の立案者の一人で、アメリカによるイラク占領などの支持を固める役割を担ったとされています。
また、14年にウクライナで起きた「マイダン革命(民主的に選ばれた親露派政権を転覆させたクーデター)」を事実上主導した人物です。これについては、クーデター後にヌーランド氏と在ウクライナ米大使が、「暫定政府のトップを誰にするか」などと話し合っていた通話の盗聴記録がYouTube上で公開され、物議を醸しました。
そしてヌーランド氏は今回のウクライナ戦争でも中心的役割を担い、開戦時には「こんなにうまくプーチンが引っかかるとは思わなかった」との趣旨の本音を漏らしたとされています。しかも同氏は先月の米CNNのインタビューで、「ウクライナ支援に割り当てた資金の大半は、武器製造などの形でアメリカ経済を豊かにしている」と、戦争による景気対策を肯定する発言をしました。
そのほかにも、90年代のクリントン政権時には、ロシアを追い詰めるNATOの東方拡大の動きを推進したり、NATO大使を務めた際には、EU(欧州連合)諸国がアフガニスタン紛争に介入するように水面下で調整したりしていたといいます。
さらに、ヌーランド氏の夫であるロバート・ケーガン氏は、民主主義などを掲げて他国への介入を主張する「新保守主義(ネオコン)」の論客であり、その義妹キンバリー・ケーガン氏は、米政府のプロパガンダ機関として目され、ウクライナ戦争を強力に後押ししているシンクタンク「戦争研究所」の所長を務めるなど、一族そろって"いわくつき"の人物であるのです。
そのため、ヌーランド氏の国務次官への登用が公表された際には、米国内でも多くの懸念の声が上がったといいます。
そして、ブリンケン米国務長官は5日(現地時間)、「ヌーランド氏が、今後数週間以内に退任すると私に知らせてきた」と声明で述べました。ブリンケン氏は、「彼女を真に特別にしているのは、彼女が最も信じている『自由』『民主』『人権』などの価値観を世界中に鼓舞し推進する、アメリカの永続的な能力のために戦うことへの激しい情熱だ」と述べ、特にヌーランド氏のウクライナに関する指導力を称賛しました。
なお一時的な後任には、バイデン大統領が「稚拙」との批判を受けたアフガニスタン撤退を行った際のアフガン大使だったジョン・バス氏が就任するということです。
ヌーランド氏退任の理由をめぐっては、公式な発表はされていませんが、「このタイミングでの辞任には、何か意味があるのではないか」と指摘され、さまざまな憶測が飛び交っています。