「特区」で保育切り下げ
知事会が提案へ 面積・人員とも
全国知事会の地方分権推進特別委員会(委員長・山田啓二京都府知事)は2日、国が法令で定める福祉施設などの最低基準の見直しのため、30人以上の知事が国に構造改革特区を連名で提案することを決めました。市町村が独自に保育所の面積基準などを決められるようにすることなど計23項目で、全項目に3分の2以上の知事が賛同しており、今月17日までに国に提案します。
現在でも、国の基準を上回る基準を設けることは地方の裁量でできます。地方が独自に決められるようにするということは、現在の最低基準を地方自治体が引き下げられるようにするものです。提案には、保育所の児童1人当たりの居室面積基準、保育士の配置人数、3歳未満の乳幼児の保育所給食の外部搬入の容認をはじめ介護や障害者福祉サービス施設の面積や配置基準の緩和があげられています。
国会で継続審議となっている「地域主権改革」推進一括法案は、福祉施設の最低基準を撤廃し地方条例にまかせるものですが、面積、人員配置基準、人権に直結する運営基準などは、国の基準に地方は従うものとされています。
30人以上の知事が共同で福祉施設の面積・人員配置基準引き下げを容認させる提案を行うことは重大です。
知事会特区提案
「分権」の名で福祉切り捨て
保育士配置基準など引き下げ自由化狙う
全国知事会の特区提案は、福祉施設の最低基準を、1人当たりの面積や職員の配置基準まで含めて、引き下げる自由を求めたものです。「地方分権」の名で自治体首長みずから福祉を切り捨てる姿勢です。
「義務付け・枠付け」という「国の縛り」をなくし「地方の自由度を高める」と宣伝されていますが、地方分権というなら、憲法にもとづくナショナルミニマム(国の保障すべき最低基準)のうえに、各地域がさらなる水準向上を図るべきです。
ターゲットになっている現在の保育所の最低基準は、諸外国と比べても劣悪です。小泉内閣の規制緩和で子どもの詰め込みが進んで以降、認可保育所での子どもの死亡事故が急増しています。面積や保育士の配置基準をいまより下げることは、子どもの命にかかわります。
国の最低基準をなくせば、国が現在自治体に出している補助金算定の根拠がなくなって補助金が減り、ますます施設整備が困難になります。自分の首を絞めるようなものです。
待機児童解消のために地方自治体がすべきことは、認可保育所を増設すること、現在の認可外保育所の水準を引き上げること、そのために国が財政責任を果たすよう一致して迫ることです。(西沢亨子)
全国知事会が提案する主な規制緩和
(カッコ内は発案県)
・保育所の居室面積、保育士の配置基準(大阪)
・保育所の3歳未満の子への給食の外部搬入(兵庫)
・「保育ママ」での面積、保育者配置基準(大阪)
・介護施設の人員配置、設備、運営基準(愛媛・静岡)
・訪問リハビリ事業所の医師の必置(京都)
・宿泊型自立訓練での地域移行支援員の必置、居室面積基準(兵庫)
・保健所長の医師資格要件緩和(京都、埼玉)
構造改革特区 民間や自治体が規制緩和の特例措置を国に提案して認められた後、各自治体が「特区計画」をつくり申請します。計画が認定されると構造改革特区となり、特定の規制の緩和が容認されます。「成果をあげた」とされた規制緩和措置は全国に広げられます。
しんぶん赤旗より
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