かえるネット木津川南

大阪市南西部で活動する日本共産党の青年後援会のブログです。

「綱領教室」志位委員長の第9回講義

2011-12-23 10:05:10 | 日本共産党政策・提言等

「綱領教室」志位委員長の第9回講義

●第4章 民主主義革命と民主連合政府(1)

先駆的な民主主義革命論

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(写真)「綱領教室」で講義をする志位和夫委員長=20日、党本部

 「今月の『古典教室』で学んだ革命論、4中総で強調した民主連合政府樹立という目標、『綱領教室』では民主主義革命論と、“革命″という問題で“合流”する形で学ぶことになりました」。志位和夫委員長は、20日に党本部で開かれた第9回「綱領教室」の最初にこうのべて、綱領第4章「民主主義革命と民主連合政府」の講義を開始しました。

日米安保条約を廃棄し 真の友好築く

 志位さんは、本題に入る前に、北朝鮮の金正日総書記の死去にかかわって、2002年の日朝平壌宣言、05年の6カ国協議の共同声明に立ち返り、「国際社会の責任ある一員としての道をすすむことを願う」という党の立場について表明しました。(詳報は21日付1面)

 志位さんは、「異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配の打破」をはかる「民主主義革命」論について、「綱領路線の一番の核心をなす部分」とのべるとともに、「民主主義革命」の路線そのものについて、その意義を三つの角度から語りました。

 第一は、この路線が、世界の運動の「常識」を覆すものだったということです。「世界でも日本共産党だけだったといっていい、先駆的なものでした」と志位さん。

 日本共産党が綱領で民主主義革命の路線を決定した1961年当時、民主主義革命といえば、フランス革命など反封建の革命や、中国革命のような植民地・従属国での反帝・反封建の革命のことで、「発達した資本主義国では社会主義革命」ということが「常識」とされていました。

 60年の81カ国共産党・労働者党代表者会議で、日本共産党代表団は、発達した資本主義国での民主主義革命という問題を提起しましたが、「共同声明」では、社会主義革命路線が強く押し出され、民主主義革命には「ヨーロッパ以外の」という地域的限定がつけられました。

 日本国内では、社会党が「社会主義革命一本やり」の立場から、「ブルジョア民族主義への転落」などと激しく攻撃したものでした。

 「発達した資本主義国での民主主義革命」という路線は、国際的にも国内的にも、他に類のないきわめて先駆的なものでした。

 第二に、半世紀の日本の政治史で、その正しさと生命力が検証された――こう志位さんは力説します。

 61年に綱領路線を決めたときに、論争の焦点となったのは、(1)アメリカへの従属関係をどう評価し、対米独立(反帝独立)の任務をどう意義づけるか、(2)大企業・財界の横暴な支配に反対する闘争(反独占)の性格をどうとらえるかにありました。

 綱領路線に反対する人たちは、「アメリカへの従属関係は、日本の経済力が強まれば次第に解消する」として、対米独立の任務を革命の戦略的任務とすることに反対しました。また、「反独占なら社会主義革命しかありえない」という立場に固執しました。

 「半世紀の政治史によって決着がつきました」と志位さん。(1)この半世紀に、日本は「経済大国」となったが、無制限の米軍基地特権、日米軍事共同体制の強化など、対米従属はいよいよ深刻になり、対米独立は革命の戦略的任務とすべき課題であることがますます明瞭になったこと、(2)大企業・財界の横暴とたたかう国民のどんな要求も、民主主義的要求となることは、半世紀の国民のたたかいの発展のなかで豊かな姿で示されていることを強調しました。

 志位さんは、「民主主義革命の路線を決めて半世紀たつのにまだ実現していない」という疑問に答える形で、民主主義革命の路線とは、いざ革命を実行するときに初めて力を発揮するわけではないと説明。「わが党の日常のすべての政策活動、国民運動、国際活動に、生きた力として働いてきました。民主主義革命という路線をもっているから、それぞれのたたかいの戦略的意義づけが明瞭となり、正面から本腰で取り組むことができます。民主主義革命は、将来の目標であるとともに、日々のたたかいの指針でもあるんです」と解明しました。

 「社会主義革命一本やり」で、対米独立を戦略的に位置づけることを回避した社会党が、80年の「社公合意」で日米安保肯定に至った経過に触れ、「日本社会が直面する一番の課題を回避すれば、勇ましいことを言っても、転落に陥る」ことは法則的だと指摘しました。

 第三にあげたのは、民主主義革命の路線は、日本独自のものですが、「世界的視野で見て、一般性をもつ側面も、ある程度は含まれている」ということです。

 資本主義の「グローバル化」への対応を解明した第22回党大会(2000年)で、民主的改革のいわば“国際版”として打ち出したのが「民主的国際経済秩序」であり、この立場は綱領にも明記されました。

 志位さんは、大会後10年余の世界の経済構造の変化を振り返り、IMF(国際通貨基金)路線押し付けの大破綻、OECD(経済協力開発機構)非加盟国(新興国・途上国)が年ごとに力を増す経済関係の構造変化、08年からの世界経済危機を契機にG8からG20へと枠組み自体が変わったことなど、「新しい民主的な国際経済秩序を築くことが世界政治において現実の目標になってきました」とのべました。

 「独立・民主・平和の日本の実現は、資本主義の枠内で可能な民主的改革」であるのに、なぜ革命というのか――。

 志位さんは「革命とは、ある社会勢力から、他の社会勢力に『国の権力』、国家機構の全体を移すことです。そのことによってはじめて民主的改革を全面的に実行できるようになります」と語りました。

 「革命というと民主党を思い出します」と志位さん。自らの「政権交代」について、「革命的改革」とか、「民主主義革命」とかいいましたが、「日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力」(綱領)がしっかり握っていた「国の権力」には指一本触れず、行き着いたのは自民党政治の継承者になることでした。「私たちが目指す革命とは、こうした『政権交代』とはまったく違う、根本的な日本の変革です」

 志位さんはここで、「もう一つつかんでいただきたいこと」として、日本共産党が、「国民多数の意思にもとづく、社会の段階的発展の立場」をつらぬいていることをあげました。

 同時に、日本社会はいわば「二重の矛盾」(日本社会に特有の矛盾、資本主義そのものの矛盾)に直面しているとし、当面する民主主義革命を達成するための多数派結集に力をつくしながら、資本主義を乗り越える未来社会論を大いに語るという姿勢を強調しました。

マルクスとリンカーン 意外な接点

 講義は、民主的改革の主要な内容を定めた第12節の第一の柱「国の独立・安全保障・外交の分野で」に進みました。第1項で、日米安保条約の廃棄と日米友好条約の締結を明記しています。

 志位さんは、安保廃棄派を多数派にしていくことは、民主連合政府への国民的条件を成熟させていく最大の要をなす問題だと強調し、1968年の参院選で党が「条約第10条の手続き(通告)による廃棄」を提起し、大きな反響を呼んだことを紹介しました。

 そのうえで、日本共産党が、帝国主義の政策と行動への断固たる批判者であると同時に、反米主義ではなく、アメリカの民主主義の歴史への深い尊敬を持ち、真の友好を願っていることを語りました。

 ここで志位さんが、「民主主義の偉大な歴史」に関連して紹介したのは、マルクスとリンカーンの交流秘話です。

 志位さんは、マルクスとリンカーンが歴史的に重なる時代に生きたことを、ホワイトボードに書いた略年表で示しながら講義を進めました。

 リンカーンは、1861年~65年のアメリカ大統領で、南北戦争をたたかい、その最中に奴隷解放宣言を出しました。

 そのリンカーンが、64年の大統領選で再選された際、マルクスは国際労働者協会(インタナショナル)の委託を受けて祝辞を送り、「一つの偉大な民主共和国の思想がはじめて生まれた土地」としてアメリカを民主主義の発祥の地と特徴づけました。リンカーンはマルクスに返書を書き、「新たな励ましとして、努力を続ける」と伝えました。

 うなずきながらメモを取っていた受講生が、いっせいに顔をあげたのは、志位さんが「最近になって、この交流は偶然のものでなく、興味深い背景があったことを知りました」とのべて、一冊の本を取り出したときです。今年、アメリカで出版された『“S”で始まる言葉――アメリカの伝統としての社会主義小史』です。

 志位さんは、この本のページをめくりながら、リンカーンは、マルクス・エンゲルスが1851年から62年にかけて多数の政治論評を寄稿していた新聞「ニューヨーク・トリビューン」の熱心な読者だったことを紹介すると、「ほーっ」と驚きの声があがりました。

 同書では、リンカーンが、大統領に就任する前のイリノイ州での「トリビューン」の最も熱心な読者だったこと、「未来の大統領は、『トリビューン』とその最も有名な欧州通信(マルクスの論説のこと)を熟読することで、遠隔地の分裂(ヨーロッパの階級対立)と国内の出来事を関連づけて考察していたことは疑いない」と書いています。

 志位さんは続けます。

 ――1848年のヨーロッパ革命ののちにアメリカに逃れてきた、マルクスの友人も含むドイツの多くの革命家が南北戦争に参加し、重要な役割を担った。

 ――マルクスは、南北戦争が「連邦存続」の戦争から「奴隷制廃止」戦争に発展せざるを得ないと予見したが、事実はその通りにすすんだ。

 ――リンカーンは、就任後初の一般教書演説で「労働は資本に優越し、より高位に位置づけられるにふさわしい」とのべ、南北戦争が奴隷解放だけでなく「労働者の権利のための戦争」であると語った。

 「20世紀に入ってアメリカは帝国主義の道を歩むことになりましたが、科学的社会主義の創設者の一人と、アメリカ共和党の創設者が、大西洋をはさんでこうした絆で結ばれていたことは、興味深いことではないでしょうか」

 さらに志位さんは、昨年の米バーモント州訪問で、今も草の根に息づく民主主義の歴史の深さを感じたことにも触れ、「将来、友好条約を結ぶ相手として、アメリカという国をまるごと知ることが大切だと思います。今のような支配、従属をやめれば、真の友好関係がどんなにか広がることでしょう」と実感を込めて語りました。

 つぎに、第3項の自衛隊の段階的解消の方針に話を進めました。

 党は、第22回大会で、三つの段階を踏んで、自衛隊を解消する方針を決定し、綱領にもこの立場を明記しました。

 「なぜ即時解消でなく、段階的解消か?」「憲法違反の自衛隊の活用は矛盾ではないのか?」など、よく出される疑問に答える形で、憲法9条と自衛隊の現実との矛盾を解消するため、9条の完全実施にむけて、国民の合意を尊重しながら、段階的に進む立場を説明しました。

 「この問題は、民主連合政府が樹立されたら即座に回答が求められますが、その前に答える機会がやってきました」と笑いを誘った志位さん。2001年参院選の党首討論での、自民党の小泉首相(当時)とのやりとりを再現すると会場から拍手が。志位さんは、「この方針によって、自衛隊解消にむけた最も現実的・合理的な道筋が明瞭になるとともに、『日本が攻められたらどうするのか』という疑問への説得力のある回答が可能となりました」と強調しました。

 今回の講義の最後に、第4項の「平和外交の中心点」について、これは党の野党外交の基本方針でもあることを指摘しました。

 「日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえ、アジア諸国との友好・交流を重視する」。この綱領の提起について志位さんは、侵略戦争を美化する逆流を許さないことはもちろんだが、それにとどまらず、過去の清算に積極的に取り組むことを強調しました。

 先日実現した朝鮮王朝儀軌(ぎき)の返還にかかわって、志位さんが訪韓したとき、緒方靖夫副委員長、笠井亮衆院議員をはじめ党議員団が実現に力を尽くしたことに韓国側から繰り返し謝意が寄せられ、韓国で出版された本『儀軌・取り戻した朝鮮の宝物』には、日本共産党が「決定的役割」を果たしたと書かれていることを紹介しました。

 「従軍慰安婦」問題では、謝罪と賠償の問題が解決されていません。「この問題でも誠実に歴史の事実に向き合うことは、両国民の未来にわたっての友好にとって避けて通れません」と志位さん。

 「綱領の平和外交の方針を、野党外交として一つひとつ実践し、アジアや世界の国々と平和と友好の関係をつくるために力をつくしたい」とのべ、講義を締めくくりました。



NHK日曜討論

2011-07-05 11:06:24 | 日本共産党政策・提言等

NHK日曜討論 市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長が、3日のNHK番組「日曜討論」でおこなった発言を紹介します。


国会「空転」――政治の中身そっちのけの党略的政争

 まず、70日間の会期延長決定後も、全く審議がおこなわれていない国会の現状について議論となりました。

 民主党の岡田克也幹事長は、自民党の浜田和幸参院議員を政務官に任用したことが、「空転」の要因の一つだとして陳謝。自民党の石原伸晃幹事長は、責任は菅直人首相にあると指摘しました。

 これに対し市田氏は、次のように述べました。

 市田 一体、なんのために会期延長やったのかと言われてもしかたがありません。10日間ぐらい審議がおこなわれていない。しかも、政治の中身そっちのけの党略的政争です。菅首相と民主党に大きな責任があるが、「信頼関係がなくなった」などとして、自民、公明もなかなか審議に応じようとしない。率直に言わせてもらって、どっちもどっちだ。(東日本大震災の)被災者、国民は、「国会は一体どうなっているのか」「いいかげんにしてほしい」と怒っていると思います。

 そのうえで市田氏は、「やるべきことをやらないで、やってはならないことだけどんどん進めている」と菅政権を批判し、こう続けました。

 市田 「税と社会保障の一体改革」と称して、消費税増税の方向を打ち出す。まだ福島原発事故の収束のめどもついていないのに、「安全宣言」をやって、止まっている原発の再稼働を(要請し)、経済産業相が現地に行って、「万が一のことが起きたら政府が責任をもつ」と(言う)。福島問題でも、なんの責任も果たせていないのによくもこんなことが言える。やってはならないことはやる、やるべきことはやらない。これは、けしからんと言わざるをえないと思います。

2次補正予算――被災者の要望にこたえた救援・復興を

 次に、2次補正予算をめぐり議論となり、市田氏は次のように述べました。

 市田 2次補正予算ですが、10日間、審議がやられてこなかったわけで、スピード感をもってやるのは賛成です。同時に、内容的に深めるきちんとした議論が必要だと思います。

 震災から4カ月もたつのに、被災者の救援・復興について、国が本腰をいれてやるという点での仕事が遅々として進んでいないと思う。

 二重ローンの救済問題については、われわれも要求して、他党も要求して、その方向性が打ち出されました。それ自身はいい方向だと思う。

 しかし、問題は中身です。被災地の商店だとか、中小零細業者とか、あるいは農業者、漁業者が本当に救われるスキーム(枠組み)になっているのかどうか。そうはなっておらず、住宅ローンはまったく除かれている。そういう中身の問題をきちんとつめて議論していく必要あります。また、仮設住宅ができて、抽選であたったけれども、入れば光熱・水道費は全部自腹だという問題なども、きちんと手当てを講じていく。雇用保険の延長などもきちんとやっていく。そういう中身をきちんと議論し、被災者の要望にこたえていく必要があると思います。

再生可能エネ促進法案――原発撤退を決断してこそ爆発的普及

 菅首相が今国会での成立をめざす再生可能エネルギー促進法案について、各党の考えを問われ、岡田氏は「自然エネルギーか原発かという選択の話ではない。自然エネルギーだけではすべてを補うことはできない」と述べ、引き続き原発は必要との認識を示しました。石原氏は、「大きな対立点はない」と発言しました。

 市田氏はこう主張しました。

 市田 再生可能エネルギーへの転換をすすめるためには、原発からの撤退を決断するということが非常に大事で、そうしてこそ、自然エネルギーの爆発的な普及が進むと思います。今度の法案に関して言いますと、われわれは、全量固定価格で買い取る、それを電力会社に義務づけるということは、以前から主張してまいりました。

 電気料金に上乗せという問題がありますが、今も電力料金に電源開発促進税が上乗せされているわけです。年間約3500億円くらいです。これはほとんど原発推進に使われているわけです。このお金をきちんと充当すれば、電力料金に上乗せしないでやれるわけです。方向性は積極的ですが、そう(電気料金値上げに)ならないように、きちんとした対策を講じるという方向で審議をやっていきたいと思っています。

「一体改革」――中身は消費税増税と社会保障切り捨て

 次に、6月30日に政府・与党が、消費税を10%へ増税することなどをもりこんだ「税と社会保障の一体改革」の方針を決定したことをめぐり議論となりました。

 岡田氏は「非常に良いものができた」とした上で、「さらなる引き上げを含めた議論」の必要性まで述べました。石原氏は「閣議決定をしてもらいたい。そうしたら政党間協議だって応じる」とし、公明党の井上義久幹事長も「ぜひ、政党間協議をやりたい」と発言しました。

 これに対し市田氏は次のように批判しました。

 市田 大震災の救援と復興に、今、国民あげてとりくんでいるさなかです。しかもこれは、長期にわたると思うのです。そういうときに、消費税の増税などやれば国民の意欲を減退させて、暮らしと経済をどん底においやる。

 「社会保障の拡充のために」という、枕ことばがつくんですが、事実はまったく違います。中身を見れば、医療費の窓口負担は引き上げる、年金の支給開始年齢は先延ばし、生活保護支給水準は引き下げです。社会保障切り捨てのオンパレードで、消費税の増税だけがあるということです。これは、やってはならないことだと思います。

 (1997年の)橋本内閣のときに、景気が上向きで、国民の所得が上がり気味だったときに、(消費税率)3%を5%に引き上げた。医療費の負担も増えて9兆円の負担増となり、あれが景気を奈落の底に落とし込んだわけです。その教訓からいっても、財源というのなら消費税の増税ではなく、応能負担の原則で、負担能力に応じて税金は納めるやりかたにすべきだと思います。

菅首相発言――「脱原発」派でもなんでもない

 最後に菅首相が「エネルギー政策が、次期国政選挙でも最大の争点になる」と発言したことについて議論となり、市田氏はこう発言しました。

 市田 エネルギー政策を争点にということですが、あたかも菅総理が、「脱原発」派であるかのような宣伝がされています。しかしこれは事実と違うと思うのです。(昨年閣議決定された「エネルギー基本計画」は)原発を新たに14基増設し、原発依存度を50%以上に高めるとしました。これについて白紙から見直すと言いながら、この閣議決定はまったく手つかずです。

 (政権では)まだ安全対策もきちんとやられていない。福島原発事故の収束もやられていないのに再稼働についてOKをだす。決して、「脱原発」派でもなんでもないということをひとこと言っておきたいと思います。

2011年7月4日(月)「しんぶん赤旗」



国民の声が届く国会を

2011-06-11 13:22:05 | 日本共産党政策・提言等

国民の声が届く国会を

比例削減反対大集会 市田書記局長のあいさつ


 日本共産党の市田忠義書記局長が「6・9比例定数削減に反対する大集会」(9日、東京・中野ゼロホール)でおこなったあいさつは次の通りです。


菅内閣不信任をめぐる動きをどう見るか

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(写真)あいさつする市田忠義書記局長=9日、東京都中野区

 いま、多様な民意、国民の声を国会から締め出す比例定数削減の企てが強まっています。これは、民主党政権の深刻な行き詰まり、二大政党支配の破綻と深いところで結びついています。

 最近の経過を振り返ると、菅内閣不信任案を提出した自民、公明両党と、それに同調した民主党の一部は、いずれも被災者不在、国民不在の党略的で無責任きわまるものでした。

 自公両党から不信任案提出が正式に表明された野党党首会談(1日)の席上、わが党の志位和夫委員長は自民党の谷垣禎一総裁に「不信任案が可決された場合、その先にどういう展望を持っているのか」「いったいどういう政権構想を考えているのか」とただしましたが、「確固たる展望があるわけではない」、こういう答えでした。提出者自身が可決後の展望がないと認める、こんなに無責任なことはありません。

 同時に、被災者に寄り添わない震災対策や、震災を奇貨として、どさくさにまぎれて消費税増税、環太平洋連携協定(TPP)への参加などを主張する菅内閣を信任できないことも明白です。したがって私たちは、不信任案に棄権の態度をとりました。

 多くの国民の間で、この危機的状況の時に国会は何をやっているのかという激しい怒りがわいているのは当然です。民主党と自民党が大震災のさなかに、こんな政争に明け暮れる根底には、両者には国政の基本問題で対抗軸がない、政治の中身に違いがないからです。だからこそ、政治の中身の議論なしに政局に走る、ここには二大政党支配の行き詰まりと政治的退廃の極みがあります。

 被災者をはじめ多くの国民は、こうした政治からの決別こそ求めているのではないでしょうか。問われているのは政治の中身です。

「大連立」により反国民的野望を達成するたくらみ

 ところが、大震災に乗じて、復興を口実にしながら「大連立」の動きが強まっています。

 民主党は自公政治ノーを訴えて政権についたのを忘れたのでしょうか。自公両党は民主政権ノーの内閣不信任案を突き付けました。その舌の根も乾かないうちに「大連立」の動きが見えてきました。どちらにも何の大義もありません。

 日米同盟絶対、大企業中心主義という点で同じ土俵に乗っているからこそ引き起こされるこうした「大連立」の動き。「みんなで渡れば怖くない」とばかりに、一党だけでは国民の批判を受けてやれない、財界が望む積年の課題を一気に押しとおそうとする、極めて危険な流れと言わなければなりません。不信任案が否決されたとき、日本経団連の米倉弘昌会長が北京でわざわざ「大連立しかない」と記者会見で言った理由がよく分かります。こうした悪政による被害はもちろん被災者にも及びます。それを大震災に乗じて押し通すことは許されません。

 「衆参ねじれでは政治は前に進まない」「震災の時くらい与野党力を合わせてほしい」。国民の中にそういう声が多いのも事実です。問題は、「大連立」でやろうとしている政治の中身です。

 それは、「税と社会保障の一体改革」の名による消費税大増税と医療・福祉・年金の切り捨て、沖縄・米軍普天間基地の県内たらい回しをはじめとした日米同盟の深化です。そして、改憲手続きのハードルを下げるたくらみなど形を変えた憲法改悪の策動です。

 今朝(9日)の「産経」で森喜朗元総理が「大連立」の狙いをあけすけに語っています。「震災復興・原発事故対策」「税と社会保障の一体改革」「選挙制度」「憲法」、この四つの「懸案」をこの際、期限を区切って結論を出す「絶好のチャンス」だと大連立の狙いを語っています。

 こうした反国民的・反動的な野望を達成させるために、衆参の比例削減を中心とした定数削減を狙っていることに目を向ける必要があります。

深刻な矛盾の広がりは必至―新しい政治の対抗軸こそ

 民意を無視し、国民の切実な要求に背を向ける政治が国民的批判を呼び起こし、深刻な矛盾を広げることは必至です。その批判の声を強引に押しつぶし、矛盾を反動的・反国民的に打開するために強まっているのが、いまの比例定数削減の動きではないでしょうか。

 1994年に強行された小選挙区制への重大な選挙制度の改悪は、それ以降5回の総選挙を通じて、はっきりと実証されました。大量の「死票」で、主権者である国民の民意とかけ離れた「虚構の多数」が国会につくられ、「構造改革」と日米同盟絶対の政治が強行されてきました。国会審議が形骸化され、政党と政治家の劣化は本当にひどいものとなりました。当時、小選挙区を推進した人たちがそれを恥じるくらいのひどさです。

 これまでの政治にかわる新しい政治の対抗軸が真剣に求められています。多様な民意が国会に正確に反映され、二大政党との明確な対抗軸を持つ政党の議席が国会にあってこそ、政治の改革を真に進めることができます。

 大連立も定数削減も、戦前の大政翼賛会と同じような大変危険な流れです。

 民主党政権と二大政党政治への国民の失望と怒りが噴き出すもとで、相手も必死ですが、民意を踏みにじる強引なやり方は決して思い通りには進みません。矛盾に直面せざるを得ないでしょう。ここにお互い確信を持ち、大いに奮闘しようではありませんか。

 この間、比例削減反対の一点での共同を大きく広げる取り組みが進められると同時に、被災者の立場に立った救援と復興、原発からの撤退、消費税増税・憲法改悪反対などの運動も発展しています。「国民の声が通る国会」へと、小選挙区制と政党助成金を廃止し、民主的選挙制度を求める運動も強化されています。

 日本共産党は危険な企てに真正面から立ち向かい、被災者、国民のみなさんの要求実現、国民の声が届く国会と政治制度をつくるために全力を尽くす決意を表明して、連帯のあいさつとします。ご一緒に頑張りましょう。

2011年6月11日(土)「しんぶん赤旗」

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復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる

2011-05-18 12:53:54 | 日本共産党政策・提言等

復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる

大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)

日本共産党幹部会委員長 志位 和夫


 日本共産党の志位和夫委員長が17日、菅直人首相に提出した「復興への希望がもてる施策、原発からの撤退をもとめる――大震災・原発災害にあたっての提言(第2次)」は次の通りです。


1、被災者の生活基盤の回復を国の責任で

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(写真)陸前高田市の被災の現場を見る志位和夫委員長(左から3人目)、市田忠義書記局長(同2人目)ら=7日、岩手県

 未曽有の大災害から2カ月が経過し、被災者と国民に、国がどのような役割と責任を果たすのかが問われている。わが党は、総理にたいして、3月31日に「被災者支援・復興、原子力・エネルギー政策の転換を――東日本大震災にあたっての提言」を行ったが、被災者救援でも、復旧・復興でも、被災地の実態は先の見えない困難が山積しており、政府の取り組みの抜本的な改善・強化が必要である。

 一人ひとりの被災者が復興への希望がもてるメッセージ・施策を、国の責任でただちに打ち出す必要がある。以下の諸点について、政府が「国の責任」を果たすべく全力をあげることを提言する。

(1)被災者の救援、二次被害の防止に全力をあげる

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(写真)避難所で被災者から要望を聞く志位和夫委員長(中央)、小池晃政策委員長(右から2人目)ら=8日、宮城県・石巻市立湊小学校

 ――(劣悪な生活環境に置かれている避難所の改善を急ぐ)11万人をこえる被災者が不自由な避難所生活を強いられているが、依然として少なくない避難所で、おにぎりやパンだけなど満足な食事がとれない、週に1回程度しか入浴できない、間仕切りがない、医療や介護のケアがとどかないなど、劣悪な状態がつづいている。避難所生活が2カ月をこえた現時点で、国の責任で実態の把握を行い、二次被害を防止し、生活環境の改善をはかるためのあらゆる努力を行うことを求める。

 ――(在宅の被災者への救援を抜本的に強化する)被災して半壊状態になっていたり、ライフラインが復旧していない自宅で生活している被災者も多数にのぼっているが、支援の手がとどかず、事実上「放置」されている場合が少なくない。食料、衣料、生活用品をはじめとした生活支援が行き届くように万全の体制をとることが必要である。

 ――(仮設住宅の早期建設)被災者の生活の安定、二次被害の防止のためにも、希望者全員が入居できる仮設住宅を早期に建設することが必要である。現状では、地域ごとにみると遅れが深刻なところも少なくない。民有地の借り上げ、集落ごとの小規模な用地確保など、必要な土地を確保するために国が責任をもって支援することを求める。市町村や地元の意向を尊重し地域のコミュニティーを重視すること、地元業者に工事を発注していくことなども、仮設住宅の建設を促進するうえで重要である。仮設住宅入居後でも必要に応じて食料などの生活支援物資が円滑に届くようにする。

(2)復興をどうすすめるのか――二つの原則を堅持する

 復興にあたっては、国はつぎの二つの原則を堅持してあたることが大切だと考える。

 ――(被災者が再出発できる生活基盤を回復する)一人ひとりの被災者が、破壊された生活の基盤を回復し、自分の力で再出発できるように支援することこそ、復興の最大の目的である。そしてこの目的を達成するための公的支援を行うことは国の責任である。それは憲法が保障する幸福追求権(13条)、生存権(25条)などにてらしても、当然の国の責務である。

 ――(住民合意を尊重し、「上からの押し付け」を許さない)復興の進め方については、「計画をつくるのは住民合意で、実施は市町村と県・国が連携して、財政の大半は国の責任で」ということを原則にすべきである。被災地の実情を無視した「上からの青写真の押し付け」を許さないことが必要である。

 大震災で破壊された「まち」をどういう形で再建していくかについては、被災した各市町村で検討がはじまっているが、大震災の被害は地域ごとに表れ方も違い、それぞれの地域によって自然的条件、産業・文化・歴史などの社会的条件の違いもあり、「まち」をどういう形で再建していくかの道筋は、地域ごとに多様である。上からの画一的なモデルの押し付けでなく、それぞれの地域の実情にそくした復興プランを住民合意でつくりあげていくことを何よりも尊重し、応援していくことが国の姿勢として重要である。真の復興は、民主主義と住民自治を貫いてこそ可能となる。

(3)“復興への希望”が見える施策を急いで――仕事、雇用、産業の再出発のために

 いま、国として、被災地・被災者の方々が、復興にむけた希望がもてるような政治的なメッセージと具体的施策を、急いで打ち出すことが求められている。大災害から2カ月がたち、少なくない被災者から、「先がみえない」「再建の気力がなくなってしまう」「この地域から人がいなくなってしまう」という痛切な声が寄せられている。同時に、「復興への希望が見えるようにしてほしい、そうすればがんばることができる」という強い要望が共通してだされている。こうした思いにこたえ、被災者の生活基盤回復に、国が責任を果たすという政治的なメッセージと具体的施策を打ち出すことを求める。

 ――(「せめてゼロからのスタートを」――「債務の凍結・免除」を国の責任で)多くの事業者が借入金で設備投資した工場、機械、店舗、船舶などを失った。収入も途絶え、財産も設備も失い、借金だけが残った状態で、「さあ再出発」といっても無理な相談である。「マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートを」――これがいま、被災地の商工業者からも、漁業者からも、農業者からも、復興への第一歩を踏み出すために共通して非常に強く要望されていることである。

 そのために、国の責任で債務を「凍結・減免」し、債務の重荷を取り除くことがどうしても必要である。たとえば、国が「震災復興支援機構」(仮称)をつくって、債務を金融機関から買い取り、「機構」が買い取った債務は、将来、事業が再生した段階で超長期の展望で返済を行い、被災状況などの実情に応じて債務の減免も行うという方法もある。方法はさまざまあろうが、いま大切なことは、大震災で失った設備や財産にかかる負債を、国の責任で「凍結・減免」するという政治的姿勢をすみやかに打ち出すことである。

 ――(水産業、農業、商工業、中小企業――各分野で再出発できる基盤回復を)水産業、農業、商工業、中小企業など各分野で、再出発できる基盤を回復するために、現行法の枠組みにとらわれない公的支援を思い切って行う必要がある。

 【水産業】多くの漁港や施設が壊滅的被害を受けており、水産業の再出発のためには、生産・加工・流通までをセットで再生する総合的な全面支援が不可欠である。漁船では、激甚災害法で、5トン未満の小型船は3分の2を公費でもつことになっているが、被災地での小型漁船はほぼ壊滅状態であり、中型、大型船にも大きな被害が出ている。激甚災害法の枠組みでは、とても再出発はできない。養殖施設の破損は、90%は公費負担ということになっているが、実際は「減価償却分を差し引く」とされ、昨年のチリ津波にさいしての養殖施設破損への公費負担は半分以下にとどまった。被災した漁業者からは、「船も、養殖も100%公費で」という強い要望が寄せられている。国がこれにこたえる具体的施策をとることを求める。

 【農業】広大な農地が津波によるガレキとヘドロなどで埋まっており、国が全面的にのりだすことなしに、この再生は不可能である。JAや農業者からは、破壊された農地をいったん国が買い上げて、塩抜きもして圃場(ほじょう)の整備をしたうえで返還する(払い下げ条件付きの一時的な買い上げと整備)という要望も出されている。国が全面的にのりだして農地を再生させるという姿勢をはっきり打ち出すことを求める。被災地での農業復興にも逆行するTPP(環太平洋連携協定)参加をきっぱり断念すべきである。

 【商工業】商工業・中小企業を再生するためには、「債務凍結」とともに、事業を立ち上げるための資金が必要である。無利子融資や利子補給をはじめ制度融資の抜本的な拡充にとどまらず、国の責任で、返済不要の立ち上がり資金を提供する支援金制度を創設することを求める。津波で流された機械のリース代を免除する手だても必要である。貸工場、貸店舗への公的支援の拡充も求められている。

 【農漁協等への支援】漁協、農協、商工会議所をはじめ被災地の水産業、農業、商工業関係の諸団体の「復興への思い」を受けとめ、その要望を十分に反映した復興計画、事業にしてこそ、地域のエネルギーを引き出すことができる。そのためにも、震災で被災した漁協、農協、商工会議所の再建を支援することを求める。

 ――(当面の生活を支える緊急の雇用対策を)本格的な仕事再開までの生活を支えるとともに、緊急の雇用対策を行う必要がある。被災地では、「『仕事がない』状態が続けば、多くの人が仕事を求めて外に出て行かざるをえない、労働力が流出すれば二度と立ち上がれなくなる」という危機感が表明されている。

 農業、漁業、中小企業などで休業補償を行うとともに、海や陸のガレキの撤去、泥だし、仮設住宅の建設をはじめとした復旧・復興事業を、地元雇用の創出につなげるために、国の支援を強めることが必要である。

 雇用保険の失業給付や雇用調整助成金の大幅延長や対象の拡大も重要である。大企業に下請けや関連会社を含めた雇用を確保する社会的責任を果たさせることが重要になっており、国が強力な要請・指導を行うことを求める。

(4)住宅の再建・保障――支援の抜本的拡充と多様なニーズに即した住宅を

 「住まいの再建」は、被災者の生活再建の土台である。「住まいは人権」――負担可能な費用で安全で健康的な住宅に住む権利は、国際的にも確認されたものであり、政府には、被災者の住宅に関する権利を保障する責任がある。国による個人補償、公的支援を拡充しなければならない。

 ――(被災者生活再建支援法の支援額の抜本的引き上げ、対象拡大)「私有財産の形成は支援しない」などと住宅再建への直接補償を拒否してきた国の姿勢を変えさせて、被災者生活再建支援法改正が実現したが、全壊でも300万円にとどまっている。総理は「引き上げ」を明言したがすみやかな具体化が必要である。支援額の抜本的引き上げとともに、支給対象を、一部損壊、店舗の被害、液状化による被害などにも拡大する。「二重ローン」など過度な負担に被災者の生活が押しつぶされないように、免除や軽減、利子補給などの金融措置をあわせてとることを求める。

 ――(多様な形態での公営住宅の建設を)「もう一度ローンを組んで家を建てる」ということにはならない被災者も少なくない。被災者が住みなれた土地を離れることなく住める、小規模・分散型なども含めた多様な形態の低家賃の公営住宅を、被災者のニーズや地域の実情にあわせて、それぞれの集落に建設していく必要があり、そのための国の支援を要求する。

(5)被災者の生活を支える“公共”の再建を

 ――(医療、介護、福祉、教育など、いのちと暮らしを支える基盤を再構築する)被災地は高齢化率も高く、医療、介護のネットワークの再構築は不可欠である。国公立病院、労災病院、社会保険病院、厚生年金病院の統廃合など、公的病院を縮小し、地域医療を壊してきたツケが問われている。公的病院を再建し、存続、充実させるとともに、民間医療機関、民間福祉施設の再建にも必要な支援を行うことを求める。

 障害者が必要な情報を得られなかったり、被災して介護者を失うなど、困難を抱えている。障害者施設、団体、患者団体への支援と、“支援の外”にある障害者、難病患者の実態把握を急ぎ、必要な支援を行うことが必要である。

 復興のためには、子どもたちの未来が輝く地域に再生していかねばならない。学校と教育条件の整備を急ぐことはもとより、就学援助、給費制奨学金、授業料免除などによって、子どもたちから教育の機会を奪わないようにする。保育所などの子育て支援の体制もととのえることも必要である。

 ――(地域の交通、商店街など、生活と事業活動が可能になる基盤の再建)住民の「足の確保」は被災地の重要な課題になっている。鉄道やバスなどの公共交通機関の復旧への支援はそのカナメである。第三セクターである三陸鉄道は、会社や自治体の「自力」での復旧は不可能である。国が三陸鉄道の復旧に全面的に乗り出すことを宣言することは、復旧・復興にむけて被災者をはげますものとなり、ただちに決断すべきである。さらに、商店街をはじめ街の公共的機能の回復に必要な支援を行う枠組みが必要である。

 ――(自治体への人的・財政的支援)自治体も被災者である。自治体職員も多くが犠牲となり、家も家族もなくした職員が、大震災以来、不眠不休の奮闘をしているが、それも限界になっている。「行革」「効率化」「民営化と民間委託」などのかけ声で行われた大規模な人員削減によって、被災自治体でも、職員を派遣する自治体でも「人手不足」が障害になっている。国として、行政スタッフ、医療・介護の専門家など、被災自治体への人的な支援を強化することを求める。また、被災地は、高齢化と過疎化に加え、この間の「地方切り捨て」政治で財政基盤も弱い。国の自治体への財政支援を大幅に拡充することを要求する。

(6)復興財源について――復興を妨げる「復興税」には反対する

 すでにわが党は、復興財源について、3月31日の「提言」で、(1)大企業と高額所得者の減税の中止、不要不急の大型公共事業の中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、原発の建設・推進経費の削除、政党助成金の廃止など、今年度予算の抜本的な組み替えを行うこと、(2)大企業の内部留保を復興事業に活用するために、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けることを要請する――という二つの基本方向で確保することを提案している。総理は、3月31日の党首会談で、この提案について「検討する」と答えたが、その真剣な検討・実行を強く求める。

 「復興税」を名目にした消費税増税は、被災者にも増税を押し付け苦しみに追い打ちをかけるとともに、国民生活と日本経済の活力を奪うことによって、国をあげての復興にも大きな障害を持ち込むものであり、絶対にやってはならない。わが党は、復興を妨げる「復興税」には、強く反対する。

2、原発災害からの救援、復旧・復興に果たすべき国の責任

 福島原発災害は、あらたに「計画的避難区域」が指定され、校庭の土壌も放射能に汚染されるなど、いまなお拡大し続けている。多くの人たちが仕事を奪われ、家から「追い出され」て、不自由な避難生活を強いられている。故郷を汚され、見えない放射能の不安におびえる毎日をすごしている。

 いつになったら自宅に帰れるのか、農業ができるのか、事業を再開できるのかなど、「先がまったく見えない」という状態に置かれ、復興の足がかりさえつかめない。政府は、被災者の不安と苦しみにこたえる責任がある。

 原発危機の収束にあらゆる力を傾注するとともに、明日への希望と展望を持てるような政治の責任ある姿勢を示すことを求める。

(1)危機収束と故郷に戻れる展望を政府の責任で示す

 ――(政府として責任のある原発危機収束の展望を)「将来の見通しがたたないことが何よりつらい」。原発被害の被災者の痛切な声である。わが党は、3月31日の党首会談で、総理に「政府として責任をもって原発事故収束の戦略と展望を示すべきだ」と提起した。その後、東京電力が「工程表」を発表した。しかし、この「工程表」は、原子炉とその施設内にどのような事態が起こっているかの全貌をつかまないまま作成されたものであり、掲げられた「収束策」なるものも、それを実行する裏付けも根拠も示されていないものだった。実際、その後、1号機では圧力容器内のほとんどすべての核燃料が、地震翌朝には溶融・落下(メルトダウン)したことが判明するなど、新しい対処が迫られる事態がつぎつぎに起こっている。

 東京電力に危機収束の「工程表」づくりを、いわば「丸投げ」して、それを政府が追認するというのは、とうてい責任ある態度とはいえない。政府として、原発危機収束の戦略と展望について、原発事故にかんするあらゆるデータを直接掌握し、裏付けと根拠を示し、責任をもって明らかにすべきである。

 ――(政府として故郷に戻れる見通しを)この間、総理周辺から「10年、20年は人が住めない」などという無責任な発言が伝えられたこともあり、被災地に行ってみると、「もう二度と戻ることはできない」という声も聞かれる。正確で丁寧な情報発信とともに、おおまかなものであっても故郷に戻れる見通しを示す責任が政府にある。

 ――(作業員の安全確保の体制を国の責任で整備する)この間、原発危機の収束作業にあたっていた作業員が死亡するという事態が起こった。作業員の「安全確保」のルールや手順がなし崩し的に「緩和」されているという報道があるが、作業員の命を危険にさらす無責任な対応は、絶対に許してはならない。

 作業員の放射線からの防護の徹底、作業環境、生活環境の抜本的改善をふくめ、長期戦にたえる作業員の安全確保の体制を、政府の責任で整備することを強く求める。これがなければいかなる「収束計画」も机上の話になる。

(2)国の責任で被害への全面的で迅速な賠償を東京電力に実施させる

 福島原発災害は、「安全神話」にどっぷりとつかり、警告を無視して安全対策を怠ってきた東京電力と歴代政府によってもたらされた人災である。賠償責任は、第一義的には東京電力が負うことはもちろんだが、電力業界、金融機関、原発メーカーなどにも責任と負担を求めることが必要である。被災者の苦難を取り除き、すべての被害が賠償されるように、国が責任をもってとりくむことを求める。

 ――(被害への全面賠償を明確にする)被害については、全面賠償を東京電力に行わせなければならない。全面賠償とは、原発事故がなかったらあったであろう収入と、現実の収入との差をすべて賠償するということである。この原則を明確にして、それを必ず行うことを国として誓約すべきである。勝手な「線引き」をして被害者を切り捨てるようなことがあってはならない。いわゆる風評被害についても同様である。また、避難によって生じたあらゆる被害(たとえば避難中の盗難、家屋・建物の劣化、精神的被害など)も賠償の対象とするのも当然である。

 ――(産業被害などへの仮払いをただちに)農業、漁業、商工業など産業被害への賠償の仮払いは、いまだに行われていない。東京電力の引き起こした災害によって、事業ができなくなった被害者に、2カ月以上も何の賠償も補償もされず、何の責任もない被害者が苦境に陥っている現状は、法治国家として異常としか言いようがない。すみやかに賠償の仮払いを行う――被害者の手もとに届くようにするとともに、危機収束が長期化しているもとで、仮払いも1回限りとせずに継続的に実施する必要がある。

 原発から30キロ圏内の住民の個々の方々には仮払いの手続きがとられているが、30キロ圏外からの避難者は対象外とされている。これらの方々への仮払いもすみやかに行うべきである。

 ――(債務は国が肩代わりし、東電に負担責任を)中小企業や、農業者、漁業者が抱える債務の問題も深刻である。原発災害で事業ができなくなり、収入が途絶え、借金が返済できなくなっている。東京電力が全面賠償するまでの間、返済猶予をふくめ国が債務を一時的に「肩代わり」する措置をとる必要がある。もちろん、この場合も東京電力に負担責任を求める。

(3)放射能被害への国民の不安に応える措置をとる

 ――(放射能汚染を正確かつ綿密に計測・把握し、納得のいく説明と万全の措置を)政府は、住民の避難や学校などでの放射能汚染について、いろいろな措置をとっているが、その根拠となる放射能汚染の把握と住民への説明がきわめて不十分である。

 いったんは政府が「計画的避難区域」に指定したが、町独自の測定で「避難の基準値」を下回っていることを指摘され、撤回する(川俣町小綱木、大綱木地区)など、政府の責任と姿勢が問われる事態も起きている。

 学校の土壌汚染について、政府内部で危険性についての意見の食い違いが表面化していることに、多くの国民が不安をつのらせている。野菜、水産物、飲料水など食料への放射能汚染の不安も大きい。福島市、郡山市などを含めて、放射能汚染の計測を綿密に行い、専門的・科学的知見をふまえた理解と納得のいく説明と、万全の措置をとることを、強く求める。

 ――(作業員と住民の健康管理と医療保障のための恒久的対策を)作業員と住民にたいして、内部被ばくを含めた厳重な健康管理を行い、国として恒久的・全面的な医療保障を行うことを求める。

(4)被災者の救援、避難住民の実情に応じた柔軟な対応を

 ――(避難を強いられている住民に安定した生活を)不自由で不便な避難生活が長期化している。政府は、避難生活を強いられているすべてのみなさんに、安定した住宅、生活にかかる費用、医療や教育など当たり前の生活を保障する責任がある。もちろん、それにかかる経費は東京電力が負担すべきものである。

 ――(住民の要望もふまえ柔軟な対応を)「計画的避難区域」に指定された地域内には、工場も、介護施設もある。住民の安全をしっかり確保することを前提にしながら、実情に即した柔軟な対応をとることが、関係自治体から強く要請されている。「緊急時避難準備区域」についても、地域内への仮設住宅の建設などについて、放射線の実態からみて安全を確保できるなら、コミュニティーを保持することを重視して柔軟な対応をしてほしいという要望も出されている。放射能汚染から住民の健康を守るという責任を果たしながら、それぞれのケースについて丁寧に実情をつかみ、地域の方々の生活や故郷への思いをくみあげた柔軟な対応、心ある対応をとることを求める。

(5)原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別法の制定を

 福島県は、前例のない原子力災害に対応するために、国が責任をもって原子力災害の応急対策、復旧対策、復興政策を一元的にすすめる体制の確立、全面的、長期的対策の推進などのために、新たな法整備(特別法)を国に要請している。わが党も、原子力災害にたいする特別法は、必要だと考える。

 原子力災害にたいして、全面的な賠償や安定した避難生活の保障をはじめ、現行法のもとでも最大限の対応をすみやかにとることは当然だが、もともとこうした大規模な原子力災害を想定した法体系はなく、現行法ではカバーできない問題が多いことは事実である。広域的な避難における生活支援や自治体機能の確保、地域の再生や住民の健康被害をふくむ恒久的対策などにかかわって、原子力災害から住民のいのちと生活をまもる特別の措置が必要になっている。原子力災害の緊急対策、復旧、復興に、一体的・総合的に対応できる特別法を制定することを要求する。

3、原発からの撤退を決断し、原発をゼロにする期限を切ったプログラムの作成を

 福島原発事故は、原発の危険性について、つぎの深刻な問題点を、万人の前に事実をもって明らかにした。

(1)いまの原発技術は、本質的に未完成で危険

 第一に、いまの原発技術は、本質的に未完成で危険なものであるということである。原子炉は、莫大(ばくだい)な量の放射性物質=「死の灰」を内部にかかえているが、どんな事態がおこっても、それを内部に閉じ込めておく絶対かつ完全な技術は、存在していないことが明らかになった。冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となり、大災厄をもたらすという、軽水炉のもつ構造上の本質的欠陥が証明された。放射性廃棄物の処理方法がまったく確立していないため、全国の原発に莫大な量の使用済み核燃料が蓄積されていることの危険も明らかになった。

 そしてひとたび、大量の放射性物質が外部に放出されれば、もはやそれを抑える手段が存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、時間的にも将来にわたって危険をおよぼす可能性があり、地域社会全体の存続そのものを危うくする危険をもつものであることが、明らかになった。

(2)世界有数の地震・津波国に集中立地することの危険

 第二に、こうした危険をもつものを、世界有数の地震国であり、世界一、二の津波国である日本に集中立地することは、とりわけ危険きわまりないものである。今回の巨大地震は、日本での今後の地震の危険性についての、専門的知見の根底からの見直しを求めており、日本列島のどこにも、大地震と大津波の危険性のない「安全な土地」とよべる場所は存在しない。日本に立地している原発で、大地震・津波にみまわれる危険性がないと断言できる原発は一つもない。

(3)「安全神話」への固執の深刻な結果が明瞭に

 第三に、歴代政府が、「日本の原発では重大事故はおこらない」とする「安全神話」にしがみつき、繰り返しの警告をも無視して安全対策をとらなかったことが、どういう深刻な結果をもたらすかが明瞭となった。

 いまの原発技術が本質的に未完成で危険なものであるという認識をもたず、それを地震・津波国である日本で大増設することの危険性の認識ももたず、どんな技術にも「絶対安全」は存在せず事故の可能性は排除できないという認識をもたず、「安全神話」にどっぷりつかり、対策を行ってこなかった、歴代政府、電力会社の責任はきわめて重大である。原発をもつ世界の主要な国家の中で、日本のように「安全神話」にしがみつき続けた国は、他に一つもないことを、きびしく指摘しなければならない。

(4)原発推進から撤退への転換を要求する

 以上をふまえて、わが党は、原発推進から撤退への転換を要求する。

 ――(原発からの撤退、原発ゼロへのプログラムの策定を)政府が、原発からの撤退を政治的に決断すること、原発をゼロにする期限を決めたプログラムをつくることを、強く求めるものである。

 そのさい、原発の新増設計画を中止すること、浜岡原発を一時停止にとどめず廃炉とすること、福島第1・第2原発を廃炉にすること、老朽化した原発の運転を中止すること、住民合意のない原発の運転を中止すること、放射性廃棄物の再処理施設を閉鎖すること、プルトニウム循環サイクルから撤退すること――これらはすみやかに決断・実行する必要がある。

 また、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の開発と普及・促進、低エネルギー社会への移行のために、最大限の知恵と力をそそぐことを求める。

 ――(危険を最小限にする原子力の規制機関を)原発ゼロにいたる期間に、原発事故の危険を最小限のものとするための、考えうるかぎり、可能なかぎりのあらゆる安全対策をとるとともに、そのための強力な権限と体制をもち、推進機関から完全に分離・独立した原子力の規制機関を緊急に確立することを要求する。

 原発は、運転停止後も、廃炉までに20年程度かかると言われ、その過程で放射能が外部に流出しないよう最大限の努力が必要である。さらに、使用済み核燃料の処理技術はまったく確立されておらず、その技術を確立し、それにもとづく処理作業が完全に終了するまで、きわめて長い期間、核廃棄物を環境から厳重に隔離し、監視しつづけなければならない。強力な権限と体制をもった規制機関の確立は、そのためにも必要である。

2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」



志位委員長の報告

2011-03-24 12:39:11 | 日本共産党政策・提言等

2011年3月24日(木)「しんぶん赤旗」

被災者支援、いっせい地方選挙勝利 全国決起集会

志位委員長の報告


 23日に日本共産党本部で行われた被災者支援、いっせい地方選挙勝利 全国決起集会への志位和夫幹部会委員長・東日本大震災対策本部長の報告は次の通りです。


写真

(写真)報告する志位和夫委員長=23日、党本部

 みなさん、おはようございます。全国で奮闘されている同志のみなさんに心からのあいさつをおくります。とりわけ被災地で、自ら被災しながら、日夜、懸命に救援のための奮闘をされている同志のみなさんに熱い連帯のあいさつをおくります。(拍手)

 3月11日に発生した東日本大震災によって、現在までに判明しているだけでも9千人を超える方々が亡くなられました。その中にはわが党の同志もおられます。私はまず、被災されたすべての方々に心からのお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方々とそのご家族に深い哀悼の気持ちを申し上げます。犠牲となった方々に黙とうをおこないたいと思います。ご起立ください。黙とう。黙とうを終わります。ご着席ください。

 今日、全国決起集会をもったのは、東日本大震災という未曽有の災害にたいして日本共産党としてどう立ち向かうか、明日から開始されるいっせい地方選挙をどうたたかうかについて、全国が心一つに頑張り抜く意思統一をおこなうことにあります。

一、東日本大震災と日本共産党の活動の現状について

国難というべき戦後最大の大災害

 まず大震災と日本共産党の活動の現状について報告します。

 東日本大震災は、文字通りの国難というべき戦後最悪の大災害となりました。亡くなった方は現時点で9千人を超え、行方不明の方は1万3千人を超えました。被災地域は、前例がないほどの広範囲におよび、二十数万人の方々が、不自由な避難所での生活を続けておられます。地震と津波による被害で、少なくない太平洋沿岸の町がそっくり壊滅し、建物などの物的被害は、なお全容がつかめないほど甚大です。

 くわえて東京電力福島第1原子力発電所の事故は、なお予断を許さない危険な状態を脱していません。原発事故によって周辺に住む多くの方々は、故郷の今後への不安をもちながら退避を強いられています。

 災害の最前線のきわめて困難な条件のもとで、多くの行政関係者、専門家と技術者、医師・看護師・福祉施設職員のみなさんなどが、不眠不休で被災者救援と原発危機対応にあたっておられます。私は、それらのすべての方々の努力に心からの敬意を表明するものであります。

党中央委員会と国会議員団のとりくみ

 日本共産党は、3月11日、私、志位を本部長、市田忠義書記局長を本部長代理、穀田恵二国対委員長を事務局長とする「東日本大震災対策本部」を設置したのにつづき、3月16日、宮城県仙台市に、高橋ちづ子常任幹部会委員・衆議院議員を本部長、太田善作常任幹部会委員を副本部長とする「現地対策本部」を設置し、党として可能なあらゆる活動にとりくんできました。

 わが党は、この間の党首会談、「各党・政府震災対策合同会議」などで、被災者にたいする燃料、水、食料、情報、医療などのすみやかな支援をおこなうこと、原発事故対策にたいしては原子力安全委員会とあらゆる専門家・技術者の知恵と力を総結集し危機の打開をはかること、正確な情報を国民に知らせ健康を守るための万全の対策をとることなど、政府にたいして一連の要請をおこなってきました。北海道、東北、関東などを地元とする党国会議員は、被災地に伺い、被災者の状況と要望をお聞きし、それを政府に提起・実行を求める仕事にとりくんできました。

被災地の党組織の奮闘――日本共産党の立党の精神を体現

 被災地の党組織、党支部と党員、地方議員のみなさんは、自ら被災している非常な困難ななかでも、被災住民のみなさんと力をあわせ、懸命な救援活動にとりくんでいます。

 地方議員の同志を先頭に、避難所訪問にとりくみ、被災者と避難所の運営にあたっている方々の要望を聞き、困難な避難所生活の改善のために日々奔走しています。避難所に移れず自宅などで生活されている高齢者や一人暮らしの方々への訪問と支援の活動も、重視してとりくんでいます。家もコミュニティーも破壊されたもとで被災者に声をかけるとりくみを重視し、せきを切ったようにぶつけられるさまざまな不安や苦しみを受け止め、激励・救援する活動をすすめています。温かいおにぎりや炊き出しなどの支援も、被災地の各地でとりくまれています。

 いま被災地では、燃料、水、食料、医療品、衛生用品、ミルクなど物資の不足が深刻です。ガソリン不足などで、支援物資が避難所まで届かないという問題があります。「現地対策本部」では、各県の実情をふまえつつ、岩手、宮城、福島に支援物資受け入れセンターを設置し、支援物資を被災者まで届ける仕事を開始しています。青森、秋田、山形などの近県で、地元の党組織は、県労連、農民連、新婦人などと協力し、共同センターを設置し、コメ、リンゴ、牛乳、灯油などを、被災地の避難所まで輸送する活動を始めています。全労連をはじめ全国の団体支援も始まっています。全日本民医連は、全国から医師・看護師を含む700人以上の医療スタッフを交代で現地に派遣し、被災者の命をつなぐために奮闘しています。

 「現地対策本部」から寄せられた被災地の同志の奮闘の一部を紹介したいと思います。

 宮城県のある保育園の元園長の同志は、津波が来た瞬間に近所の保育園に駆けつけ、子どもたちを間一髪で避難させ、一晩中子どもたちとともに過ごし、救助されて避難所に行っても、子どもたちと一緒に行動し、避難所に保育所をつくるなど、子どもたちの命を守り抜くために大奮闘をしています。

 岩手県の陸前高田市の戸羽市長は、夫人が行方不明という悲しみのもとで、被災者救援の陣頭指揮をとっておられますが、わが党市議は、市職員のみなさんとともに、市長を支え、「職員の3分の1が安否不明」というもとで、行政の責任を果たすために奮闘しています。党市議は、津波にわが家を流され、目の前で親戚も流されるというもとで、自ら避難所の事実上の責任者を引き受け、看護師の経験も生かして体操をよびかけ、みんなの体調管理に心をくだくなど、懸命の奮闘を続けています。多くの市職員は、被災以来、着替えもせずぬれたままで、靴の上にスーパーのゴミ袋をゆわえて、必死の救援活動にとりくんでいるとのことであります。

 福島県の南相馬市のわが党市議は、自ら大きな被災をしながら、地震、津波、原発事故被害という複合災害に苦しむ市民の命を守るために奮闘しています。桜井市長が被災地の窮状を訴えるなかで、燃料補給のためのタンクローリーが南相馬市に入ることになった。ところがせっかく入ることになったタンクローリーが、原発事故の状況をみる中で、途中で引き返してしまうという事態が起こりました。その状況を聞いた党市議は、会津若松の親戚から特殊免許をもった人を探し出して、タンクローリーの運転を頼み、南相馬市まで輸送させたという報告も寄せられております。

 こうした被災地での献身的な奮闘が、いま無数にとりくまれています。きわめて困難な状況下にある被災地での同志たちの奮闘は、国民の苦難軽減のために献身する日本共産党の立党の精神を体現したものであり、また、草の根で国民と結びついた日本共産党ならではの活動であり、私は、全国の党組織のみなさんが、この頑張りに固く連帯して奮闘することを強くよびかけたいと思います。(大きな拍手)

全国の党組織の活動――国民的な救援活動の先頭にたって

 全国の党組織は、大震災の直後から、被災地救援の活動に立ち上がっています。救援募金活動は、短期間に2億5000万円を超えるとりくみになっています。

 いま多くの国民は、連日報道される被災地の状況を見て、「自分も何かをしたい」という強い思いをもっています。10代、20代の若者が、わが党の募金活動をみて、飛び入りでマイクで訴えたり、募金箱をもつなどの行動をおこなっていることが、全国各地から報告されています。関西のある大学の学生10人が、わが党の事務所を訪問し、「救援募金をやりたい。募金の受け皿になってほしい」と相談にきました。最初は他の党に相談してみたが、「対応できない」といわれ、あらためてインターネットで「救援募金」で検索したら、地元の日本共産党事務所にぶつかり、さっそく電話して訪問してきたとのことでした。「初めての募金なので共産党の名前でやらせてほしい」ということになり、日本共産党の募金箱をもって2時間で24万円を超す募金を集めたということでした。

 この国難ともいえる危機にあたって、全国各地で、日本共産党員としてのエネルギーが深いところから発揮されつつあることはきわめて重要です。これまで党活動に参加できてこなかった同志が、つぎつぎに募金活動など救援活動に参加しつつあります。ある県委員長は、「これまで立ち上がっていなかった党員が多数がんばっている。党内に立党の精神に立った巨大なエネルギーがわきおこっている」との報告を寄せました。

 全国から寄せられた義援金は、宮城県、岩手県、福島県の3県に、第1次分としてそれぞれ1000万円ずつお渡しいたしました。引き続き被災した市町村に順次届けるようにいたします。現時点では、現地からの要望にこたえ近県からの物資支援は強めますが、党が独自に、全国的規模での物資の支援、一般のボランティア支援にとりくむ条件は、まだ存在していません。そうしたもとで、募金活動は、現時点で、全国の党組織がとりくむことができる被災地への救援の主要で最大の手段であり、これをさらに思い切って強めることを心からよびかけるものであります。

 この間、全国の都道府県、市区町村のわが党議員団は、それぞれの自治体にたいして、被災者の住宅確保をはじめとする避難の受け入れや物資の支援などの広域支援に自治体としてとりくむことを、いっせいに申し入れてきました。全国の自治体で被災者の方々の受け入れが開始されています。受け入れがおこなわれた自治体では、それぞれのところで被災者を温かく迎える活動がすでに始まっていますが、わが党もこれに適切な形でとりくむ活動を強めたいと思います。

 現時点では、全国からの一般のボランティア支援を被災地で受け入れる条件はまだ整っていませんが、ボランティア登録は積極的にすすめ、受け入れ条件が整った被災地域から支援に入るようにしたいと思います。

二、当面する党活動の基本について

 つぎに当面する党活動の基本について報告します。

 わが党は、この大震災にあたって、14日、「東日本大震災の被害が未曽有の規模で広範囲に及んでおり、救援と復興にすべてを傾注すべき」として、いっせい地方選挙を全国的に延期することを政府・各党によびかけました。しかし、民主党、自民党、公明党などが、全国的延期はおこなわないことを主張し、残念ながらわが党の提起は実りませんでした。

 こうしたもとで、わが党は当面する党活動の基本について、つぎの点を揺るがず堅持して奮闘します。

 ――国民の苦難軽減を立党の原点としているわが党の本領を発揮して、被災地の救援・復興のために、被災地と全国の党組織が心を一つに総力をあげて頑張り抜きます。

 ――いっせい地方選挙にあたっても、この立場を貫き、今回の選挙戦全体を、日本国民が、国民的エネルギーを発揮して、被災地への救援・復興をやりぬき、戦後最大の国難を打開し、それを通じて新しい社会をつくる契機にしていくという姿勢で選挙にとりくみ、わが党の勝利・前進をめざします。

三、いっせい地方選挙の訴えの基本について

 つぎにいっせい地方選挙の訴えの基本について報告します。

 今回のいっせい地方選挙は、東日本大震災による災害と福島原発事故の危機によって、様相が大きく変化しており、国民への訴えも発展させる必要があります。いまの戦後未曽有の危機のなかで、この国難にどういう姿勢で臨んでいるかが、地方選挙ではありますが、有権者の政党選択の基準として重要な意味をもつ選挙となっています。

 選挙戦の訴えにさいしては、大震災にたいしてわが党がどういう姿勢で臨み、どういうとりくみをしているかを伝えるとともに、日本国民が立場の違いをこえ、国民的エネルギーを発揮して、力をあわせてこの災害を乗り越え、新しい社会を築こうという訴えを前面にすえることが大切です。この訴えとあわせて、それぞれの地方自治体の政治を「福祉・防災のまちづくり」に転換する――住民の命と暮らしを守る自治体をつくろうという党の立場を訴えるようにしていきたいと思います。

 この立場から、今回のいっせい地方選挙での訴えの基本については、つぎの諸点が重要になってきます。

被災者救援、原発事故の危機回避――二つの緊急の大問題にとりくむ

 第一は、直面する危機を打開することであります。

 東日本大震災の被災者救援、福島原発事故の危機回避は、多くの人々の命に直結します。この二つの大問題は、政治的立場をこえて、日本国民の総力をあげ、何としても打開しなければならない緊急課題であります。日本共産党は、この二つの緊急の大問題に真正面からとりくみ、政府・自治体とも協力し、広く国民と力をあわせ、解決のためにあらゆる努力を傾注します。

 ――避難所での二次災害をふせぐためにあらゆる力をつくします。救援された方々が、避難所生活で命を落とす痛ましい事態の拡大を、何としても防がなければなりません。燃料、水、食料、医療品など支援物資を、被災者のもとにとどけ、医療、介護などのケアスタッフを派遣するために党としても全力をつくします。

 ――より安定した避難所の確保が必要です。そのために広域的な協力体制づくりを強化します。空いている公共住宅、雇用促進住宅、公務員宿舎の活用、民間住宅の借り上げなどを、全国各地で推進します。

 ――希望者のすべてが入れる仮設住宅を速やかに建設することも喫緊の課題です。仮設住宅の建設は一部で開始されていますが、災害の規模にみあった、思い切った大量建設が必要です。

 ――福島原発事故の当面の危機を何としても収束するために、原子力安全委員会、原子炉メーカー、原子力機構、大学などの専門家、関係技術者の知恵と能力の総結集をはかることを、政府に引き続き強く求めていきます。

 ――原発事故から国民の命と健康を守るために、国民への正確な情報伝達、ヨウ素剤の周辺住民への配布、被ばく検査と除染、避難者の生活と医療の支援などを、政府が責任をもっておこなうことを要求します。

 ――原発事故によって、すでに一部の原乳、ホウレンソウ、カキナなどから暫定基準値を超える放射能が検出され、政府が出荷停止を指示するなど、農家に重大な被害をあたえています。農業も含めて国民にあたえた被害は、東京電力と国が全面的に補償することを強く求めていきます。

 ――原発災害に関する正確な情報を、政府が責任をもって国民に伝えることの重要性をとりわけ強調したいと思います。日本学術会議が、18日発表した声明では次のように訴えています。「未曾有の災害に直面して国民が覚える不安感は、直面するリスク(危険)に関する正確な情報が、必ずしも的確に伝達されていないことに起因することが少なくありません。たとえ深刻な情報であっても――むしろ深刻な情報であればあるほど――正確に国民に伝えられるべきものです。そうであればこそ、事態の深刻さを冷静に踏まえた適切な行動を求める呼びかけは、人々を動かす力となるものです」。その通りだと思います。放射能についての正確な測定結果を含む情報を国民に公開し、国民と共有してこそ、安易な楽観視も、過剰な危惧も抑制し、風評被害を防止することもできます。わが党はこのことを強く求めていくものです。

戦後未曽有の災害からの復興に、国の総力をあげてとりくむ

 第二は、戦後未曽有の災害からの復興に、国の総力をあげてとりくむことであります。

 地震と津波で破壊された市町村では、住宅も、商店街も、役場も、学校も、病院も、道路も、橋も、港も、あらゆるものを一から作り直さなければなりません。壊滅的打撃を被った農林漁業と中小企業を再建しなければなりません。

 被災地の多くが、この間の地域経済の衰退、高齢化と過疎化などの荒波を受けてきた市町村であり、もともと財政基盤が弱いところに、震災の大打撃を被っています。国家的、国民的なとりくみがなくては、とても復興は達成できません。

 さらに大震災の社会的、経済的影響は、被災地に限られたものではありません。全国的な生産の減少、消費の低迷など、日本の経済社会そのものが大きな打撃を受けています。

 それだけに復興には、国民的なエネルギーの発揮が必要です。大きな困難はありますが、文字通りの国家的プロジェクトで復興をやりとげるなら、それは日本社会と日本経済の新しい発展と成長のあゆみを開くことにもつながるでしょう。

 復興にあたっての基本的考えとしては、「生活再建、地域社会の再建こそ、復興の土台」――住宅がつくられ、地域のコミュニティーが再建されてはじめて復興といえる――という立場が大切だと考えます。この立場にたって、文字通りの国家的なプロジェクトで復興をやりとげることを訴えるとともに、わが党はその先頭にたって奮闘する決意を表明するものです。

 ――「生活再建」では、被災者への個人補償の抜本的な拡充が不可欠です。阪神・淡路大震災を契機に、被災者をはじめ国民的な運動で、「住宅は私有財産だから個人責任」という国のかたくなな姿勢を変え、被災者生活支援法がつくられました。ただ、現行制度は全壊でも300万円の支援にとどまっており、これを大幅に引き上げることを強く求めるものです。

 ――「地域社会」の復興では、自治体への十分な財政支援が必要になってきます。津波で押しつぶされ、地盤が沈下した同じ場所に街を再建することができるかどうかなど、今回の復興には従来になかった新しい問題も生まれてきます。何よりも住民と自治体の自主性を尊重しながら、住民合意で新しい街づくりをすすめる抜本的支援を国がおこなうことが必要であります。

 ――「地域経済」の復興では、壊滅的打撃を受けた漁業、広大な農地が海水につかり、土砂に埋められている農業など、農林漁業の再建には従来の法律の枠組みを大きく超えた支援と補償が必要です。中小企業や自営業者にたいしても、これまでの枠組みを超えた思い切った支援と補償が求められます。

 ――これらを実行するための財源は、阪神・淡路大震災の規模よりもはるかに大きなものを必要とすることになるでしょう。

 まず来年度予算を抜本的に組み替える大規模補正をおこなうことを提案します。法人税減税や証券優遇税制の延長など、2兆円におよぶ大企業・大資産家減税は中止すべきであります。歳出全般を見直し、高速道路無料化と子ども手当の上乗せの中止、米軍への「思いやり予算」やグアムの米軍基地建設費の中止、不要不急の大型公共事業の中止、原発の建設・推進経費の中止、そして政党助成金の撤廃などをおこない、これらの予算を復興のためにあてるべきであります。これらで年間5兆円程度の財源を確保することができます。

 さらに政府として、244兆円にのぼる大企業の内部留保を、復興と被災地域の経済再建に活用する手だてをとることを提唱します。大企業に、被災地での雇用確保、関連中小企業の再建支援などの社会的責任を果たさせるとともに、従来の国債とは別枠で、「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けることを要請すべきであります。大企業は巨額の内部留保をもち、「手元資金」だけでも64兆円におよび、「使い道がなくて困っている」状態であります。いまこそこの巨額の資金を、被災地と日本復興のために役立てるときではないでしょうか。それは日本全体の内需を拡大し、日本経済が打撃から立ち直って発展をとげるうえでも大きなプラスとなるでしょう。

 以上の立場で日本共産党は、被災地復興のために全力を尽くすことを、表明するものであります。(拍手)

原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換を

 第三は、原子力行政、エネルギー政策の抜本的な転換であります。

 福島原発の事故は、「想定を超えた」自然災害による不可抗力の事故ではありません。福島原発に対して、日本共産党や市民団体が、チリ地震級の津波がくれば冷却設備が機能しなくなり、重大事故に陥る危険をくりかえし指摘し、改善を求めてきたにもかかわらず、東京電力側がそれを拒否してきたという事実があります。この事故は、「日本では重大事故は起きない」という「安全神話」をふりまき、安全対策をなおざりにして原発をやみくもに推進してきたこれまでの原子力行政による人災といわねばなりません。

 福島原発の危機回避にあらゆる知恵と能力を結集することを最優先課題としてとりくむとともに、日本の原子力行政、エネルギー政策は、従来のままでよいのかを、根本的に再検討する国民的議論が必要だと考えます。

 まず安全最優先の原子力行政への転換が必要です。わが党は、そのために、つぎの諸点が大切だと考えます。

 ――日本の原子力行政の最大の問題は、「安全神話」を基礎としていることにあります。原発に関しても、これまで政府は「苛酷事故――大量の放射性物質が放出されるような重大事故――が起こることは日本では現実に考えられない」として、国際原子力機関(IAEA)が求める苛酷事故を想定した対策をつくることすらしてきませんでした。「安全神話」とは、「原子力は安全だから心配はない」とする立場ですが、これを国民に宣伝するとともに、自分もこの「神話」にとらわれて、安全対策をおろそかにするというものであり、こんな「神話」に固執している国は、日本以外には世界のどこにもありません。アメリカで、1979年にスリーマイル島の原発事故が起こったとき、事故調査の最終報告書でもっとも強調されたのは、「原子力発電は安全だ」という思い込みにこそ最大の問題があった、これを「原子力発電は本来的に危険性の高いものである」という姿勢に切り替えなければならないという反省でした。この教訓は、いまでは世界の多くの国ぐにの共通の認識になっています。こんどこそ「安全神話」を一掃し、原子力のもつ本来的な危険性について国民に正直に語り、政府が国民の安全確保のために万全の体制をとる、正直で科学的な原子力行政へと転換することを、わが党は強く求めるものであります。

 ――この立場にたって、原子力政策の思い切った転換をはかる必要があります。国際基準に合致し、今回の震災の教訓も踏まえた新しい安全基準をつくり、全国にある原発の総点検をおこなう必要があります。政府が、昨年策定した14基以上の原発を新増設する無謀な計画はきっぱり中止すべきです。東海地震の想定震源域の真上に位置する浜岡原発は停止すべきです。老朽化した原発の「延命」は中止すべきです。危険きわまりない高速増殖炉「もんじゅ」、プルトニウムが入った燃料を一般の原子炉で燃やすプルサーマルなど、プルトニウム利用の核燃料サイクル政策の中止を強く求めます。

 ――原子力の安全確保の体制の面でも、日本の体制には、世界の水準からみて、重大な欠陥と立ち遅れがあります。わが国が批准している「原子力の安全に関する条約」では、原子力の安全のための規制機関は、原子力発電を推進する行政機関と、明確に分離することを義務づけています。イギリスでは保健安全執行部(HSE)が、ドイツでは環境省が、アメリカでは独立した行政機関として3900人の常勤スタッフを擁する原子力規制委員会(NRC)が原子力の安全のための規制機関としての仕事にあたっています。これらはすべて、推進機関から分離されたものであります。

 ところが、日本では、規制機関とされる原子力安全・保安院は、推進機関である経済産業省の一部門となっています。現在、推進部門から独立した形になっているのは、原子力安全委員会だけですが、その権限はきわめて弱いもので、安全規制や事故対策でも補助的な権限しかあたえられていません。こんな国は欧米にはありません。今回の事故にさいして、原子力安全委員会委員長代理などをつとめた住田健二氏から次のような指摘がされています。「私は、原子力を規制する保安院が、推進する立場の経済産業省の傘下にあることは問題だとかねてから主張してきた。その弊害が、今回も出てしまったように思えてならない」「日本の原子力安全行政の制度的欠陥という、一番心配していたことが露呈してしまった」。わが党は、日本でも、アメリカの原子力規制委員会のような、推進部門から独立し、強力な権限と体制をもった原子力の規制機関をすみやかにつくることを強く要求するものであります。

 これらの安全最優先の原子力行政への転換は、これまでも、わが党がいっかんして求め続けてきたことです。わが国史上最悪の原発事故の教訓に立って、今度こそこの転換を思い切ってなしとげること、それもすみやかになしとげることを、強く要求するものであります。

 同時に、原発依存のエネルギー政策から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)への戦略的な転換を決断すべきであります。ドイツではすでに、発電量の16%を再生可能エネルギーでまかなっています。これは福島第1原発1号機の25基分に相当する発電量です。ドイツではさらに、2020年には発電量の30%以上、2050年には80%をめざす計画を立てています。

 いま多くの国民のみなさんが、原発事故の恐るべき危険性を肌身で感じ、原発依存からの脱却の道を真剣に考え出しています。原発依存から抜け出し、太陽光と熱、風力、水力、地熱、波力、潮力、バイオマスなど再生可能エネルギーへの転換が必要です。同時に社会のあり方としても、「大量生産、大量消費、大量廃棄」、あるいは「24時間型社会」といわれるような社会から脱却して、低エネルギー社会への転換が必要です。わが党は、エネルギー政策の大転換にむけた、国民的な議論と合意をはかることを強く訴えていきたいと思います。

住民の命と暮らしをまもる「福祉・防災のまちづくり」を

 第四に、地方政治の問題では、住民の命と暮らしを守る「福祉・防災のまちづくり」への転換を訴えてたたかいます。

 わが党は、すでに1月に発表した「いっせい地方選挙政策アピール」で、暮らしと地方自治、地方経済を立て直す「四つの転換」――(1)福祉と暮らし最優先への転換、(2)地域に根ざした産業振興への転換、(3)TPP反対、農林漁業再生への転換、(4)住民の声がとどく議会への転換を提起し、全国で住民のみなさんに、その実現を訴えています。震災問題でのわが党の基本的立場と一体に、

 これまで訴えてきた地方政治における「住民が主人公」への転換を堂々と訴えてたたかいます。

 そのさい強調すべきことは、「住民の福祉を守る」という地方自治体の原点と、「災害から命を守る」という自治体の責務とは一体のものだということです。災害から住民の命を守るためには、学校、公共施設、住宅などの耐震化、乱開発の防止と都市計画、堤防の強化など、ハードの面での対策の強化がもとより必要です。同時に、普段から医療、介護、福祉、子育て支援などの強い基盤とネットワークがあってこそ、災害時にも大きな力を発揮します。

 この間、全国で、公立病院の廃止など地域医療を崩壊の危機に陥れ、保健所を半減させ、介護も保育も民間まかせにし、市町村合併の押し付けで役場を住民から遠いものとし、公務員削減で身近な住民サービスを削り、消防力でさえ「広域化」の名で削減する――あらゆる分野で「住民の福祉を守る」という自治体の仕事が、「構造改革」「地域主権」のかけ声で壊されてきました。こういう姿勢でいざという時に住民の命を守ることができるかということが問われなければなりません。この流れを転換してこそ、災害時にも命を守る仕事ができるということを訴えていきたいと思います。

 「住民の福祉を守る」ことは自治体の原点であるとともに、その役割が常日頃から発揮されてこそ、災害にも強い自治体になる。日本共産党は、この選挙をつうじて、全国の自治体が東日本大震災の被災地支援にとりくむとともに、それぞれの自治体が、住民の命と暮らしを守る「福祉・防災のまちづくり」にむけて前進するよう、全力で奮闘するものであります。

四、選挙戦のとりくみについて

「結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動」を

 最後に、選挙戦のとりくみについて報告します。

 実際の選挙活動においては、震災の状況の推移、国民の気分や感情を考慮したていねいな対応が求められていますが、私が何よりも強調したいのは、「支部を主役」に、草の根から、一人ひとりの「結びつきを生かし、広げることを軸にした選挙活動」をすすめるという2中総決定が、こういう時こそいよいよ決定的に重要になっているということであります。結びつきをいかして、対話、「集い」をどんどん広げ、震災問題での救援・復興への支援をよびかけるとともに、地方政治の転換を訴え、わが党への支持を広げていく。そして、被災地救援・復興支援でも、選挙活動でも、その担い手を広げに広げ、住民とともにとりくむ。わが党がもつ草の根の力を発揮して頑張り抜くことが基本中の基本であります。

国民の気分・感情を考慮しながら、堂々と政見を訴え抜く

 いま一つ訴えたいのは、堂々と政見を訴えぬくということです。

 それぞれの地域ごとに、国民の気分・感情にそくした選挙活動のあり方の工夫をおこなうことは必要ですが、いっせい地方選挙は、東日本大震災の救援・復興への全国民的なとりくみを訴えるとともに、今後4年間の地方政治のあり方をどうするかを有権者に問うものであり、地方政治の現状の問題点を明らかにし、わが党の公約を堂々と訴えて、審判を仰ぐことは当然のことであります。「自主規制」「自粛」の名で、政党・候補者の選挙活動を制限し、また自ら選挙活動を放棄する動きが一部にありますが、これらの有権者の冷静で正確な選択を妨げる動きには、わが党はくみしません。

 これは三重県で発行されている伊勢新聞の3月21日付ですが、大震災を理由にした「選挙自粛」の動きについて、「大震災での選挙自粛 小手先の人気取り策 必要な権利と義務の遂行」と題して、つぎのようにきびしく批判しております。「選挙をパフォーマンスと捉える政党や立候補者からすれば、自粛は当然の結論だ。だが、選挙はパフォーマンスではない。……言うまでもなく、民主主義の根幹で、選ぶ側も選ばれる側も権利と義務の行使の機会だ。選ばれる側の自粛は、選挙をパフォーマンスと認めるのに等しく、選ぶ側の選択権を侵す暴挙でしかない」。私もその通りだと思います。

 わが党は今回の選挙戦において、国民の思い、気持ちをよく踏まえながらも、選挙にあたっては全有権者を対象に堂々と政見を訴えぬく姿勢を、揺るがず堅持して奮闘するものであります。

被災地と全国が固く連帯し、日本共産党の不屈の底力を発揮しよう

 同志のみなさん。日本共産党は、今年で、創立89周年を迎えます。わが党の歴史を貫くものは、侵略戦争と植民地支配に反対し、平和と民主主義の旗を掲げて命がけでたたかいぬいた先輩たちの歴史が示すように、日本が国難に遭遇したさいに、理性と正義の旗を勇敢に掲げ、不屈にたたかうというところにあります。戦後最悪の災害で、多くの国民が苦しみのふちにあるいまこそ、日本共産党の革命的伝統と不屈の底力を発揮すべきときだということを私は心から訴えたいと思うのであります。(拍手)

 私は、報告の最後に、被災地で奮闘する同志たちと、全国の同志たちの連帯を重ねてよびかけたいと思います。とりわけ、全国の同志たちが、被災地救援・復興支援にとりくみながら、いっせい地方選挙にも、この新しい条件下で新たな知恵と力をつくして頑張り抜き、立派な結果を出すことは、被災地でいま頑張っている同志たちへの最大の激励ともなるでしょう。その力は、これから長期にわたるであろう被災地の復興という国民的な大仕事を支える重要な力ともなることでしょう。

 全国の同志のみなさんの心を一つにした奮闘をよびかけ、中央委員会がその先頭にたって奮闘する決意を申し上げ、報告といたします。(大きな拍手)