自転車の後部に乗った私は、前にいる男に囁く。
もう20年もあっていないが、元商社マンでヨットの販売などをしており、ダンディではあったが、私に数百万の借財をして、行方をくらましていた男である。
「いったいどこに連れて行く気かね?」
「数千億が到着することになっているので、あなたにも目撃して欲しい」と男。
「いや、そういう話には興味はない、降ろして欲しい」
「そういうわけにはいかない、あなたがいてくれる必要があるんだ。理由はいえないんだが・・・」
暗い夜の原っぱのようなところを、無灯火の自転車がよろよろと走っている。
すぐ横は、川のようだが、暗くてよくわからない。
どうやらその川べりで、あちこちに怪しげな男たちがたむろしてひそひそ話をしている。
その声が、何重にも合わさり、頭が痛くなる。
「あいつらに捕まると話は消えてなくなるんだ」
男の呼吸は荒くなっている。
ひょいと男の顔を覗き込むと、のっぺらぼうの暝い闇しか見えない。
図版:小豆とぎ
もう20年もあっていないが、元商社マンでヨットの販売などをしており、ダンディではあったが、私に数百万の借財をして、行方をくらましていた男である。
「いったいどこに連れて行く気かね?」
「数千億が到着することになっているので、あなたにも目撃して欲しい」と男。
「いや、そういう話には興味はない、降ろして欲しい」
「そういうわけにはいかない、あなたがいてくれる必要があるんだ。理由はいえないんだが・・・」
暗い夜の原っぱのようなところを、無灯火の自転車がよろよろと走っている。
すぐ横は、川のようだが、暗くてよくわからない。
どうやらその川べりで、あちこちに怪しげな男たちがたむろしてひそひそ話をしている。
その声が、何重にも合わさり、頭が痛くなる。
「あいつらに捕まると話は消えてなくなるんだ」
男の呼吸は荒くなっている。
ひょいと男の顔を覗き込むと、のっぺらぼうの暝い闇しか見えない。
図版:小豆とぎ
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