姪っ子メグ さっき見に行ったフィルムセンターの「生誕百年映画監督黒澤明」は先月までやっていた前半展示とだいぶん入れ替えていたね。
キミオン叔父 ああ。海外ポスターなんかがね。今回は『七人の侍』なんかはポーランド、東ドイツ、スペイン、アルゼンチン、イタリア、ルーマニア、タイのそれぞれのポスターが掲示されていたけど、お国柄が現れていて面白いね。この頃のポスターって、結構自由にアートしている。いまは、基本は本国版に準拠しているものが多くなってるね。
志村喬さんの蔵していた資料が、給与明細含めて結構出ていたのが面白かった。あと、美術部の予算見積書とかさ、それぞれの部署が苦労しているんだろうなぁって。
黒澤監督って完全主義者でしょ。きっと見積もり通りにいかなくって、頭を抱えていた人がいっぱいいたんだろうな、とか。それにやっぱり黒澤監督の創作ノートとかは緻密よねぇ。
黒澤組になくてはならない野上照代さんはとんでもない記録魔だよね。もう各シーンのカメラワークなんかが詳細に記録されている。これ、映画制作を志すものにとっては最高の教科書だな。
ブリヂストン美術館はセーヌ河で来たか。一番お得意の印象派コレクションだものね。おじさん、セーヌ河は?
ある時期は、毎週のようにセーヌ河のほとりを散歩していたよ。
え?なに?どういうこと?
セーヌもどき(笑)。今はだいぶん変わったけど、オジサンが大学生の頃は、大阪の堂島あたりの光景が夕暮れになるとセーヌ河に似ていると言われたの。
なーんだ。でも、多くの日本人画家がパリに住み着いて、印象派やポスト印象派のスタイルをせっせと模倣しながら、自分のスタイルを創っていくのよね。
昔、支援したアニメ制作会社の社長がさ、セーヌのほとりで6年ぐらい住み着いて、画家修業をしていたんだよ。フルデジタルアニメの出始めの頃で、そのパリ帰りに騙されたわけじゃないけど、おじさんと知人で1億円ぐらい投資してしまったな(笑)。
ヒェー。おフランスにコンプレックス持ってたんじゃないの(笑)。今回は上流から下流の流域を5つに分けて、それぞれの作家たちの作品を展示していたね。まあ、ブリヂストンだからやっぱりモネが目立ったけど。
日本の画家だと近代画家がズラっと並んでいたけどさ、ちょっと異色だったのは、蕗谷虹児が数点あったじゃない。竹久夢二館なんかでよく見るだろ、モダンな挿絵画家だよね。目立っていたね。
佐伯祐三さんもちゃんとあったね。二回目の渡仏で、例の街角のポスターとかテラスとか文字も引用した独特のタッチを見つけたのね。1920年代だから蕗谷虹児なんかが渡仏していた頃よ。
レオナルド藤田は戦争で帰国するまではずっとパリにいたんだけど、ちょっと日本人村とは異なる画家仲間の付き合い方をしていたんだろうね。
でも、とくにパリの都市部の、ノートルダム寺院とかポン=ヌフとかシャンゼリゼ通りとか市庁舎とか、モンマルトルとか・・・あたしたちにとっては絵画もそうだけど、すぐにフランス映画を思い出しちゃうな。
そうだね、印象派の有名な絵を見ながら、ああ、あれはあの映画のこのシーンだって思っちゃうね。
今年は、印象派の展示会が、ほんとにたくさんあったね。
僕の場合は、お冷やかし程度の美術館めぐりで恥かしいけど、まあ懲りずに(笑)
ブリジストン美術館は、私は今年久し振りで、2回行ったのですけれど、やはり印象派充実の核で、今回のようなセーヌ巡り展も打てるようで、なかなか面白く見応えでした。