けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

ウオール・ストリート・ジャーナルの記事から読み解く「アメリカによる日本の見方」

2014-02-19 23:09:02 | 政治
少しばかりウオール・ストリート・ジャーナルに記載された記事を読み漁ってみた。中国系の息がかかった人材が新聞社や政界・経済界に浸透しているアメリカ国内においては、あまりに刺激的で読んでいると頭を傾げたくなる記事もあるのであるが、結論としてはその様な記事に一喜一憂する必要もないようであるという結論に達したので簡単に紹介してみる。

まず、最初に取り上げる記事は下記のものである。

ウオール・ストリート・ジャーナル2014年2月17日「日本に対する怒りの輸出に失敗した中国.

タイトルから分かるように、中国が日本の歴史認識問題で世界が日本を批判するように誘導しようとした動きに対し、概ねその企てが失敗したことを報じたニュースの様に見える。このタイトルから受ける印象は、日本の日頃からの主張、ないしは日本のこれまでの行動が示した真実が中国の謀略を防いだという記事のように感じ取れてしまうのだが、中身を読むと全く逆のことが書かれている。例えば、幾つかの表現を引用してみよう。
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「歴史問題に関する中国の外交官の主張には説得力があった。」
「中国政府が日本に対して抱いている不満は正当なものだ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相がナチスによるユダヤ人虐殺を軽視したり、米国の政治家が主人と性的関係を持つよう強要された奴隷を売春婦と呼んだりすることは考えられないだろう。しかし、著名な日本の政治家たちは最近、何度もこれに等しい発言をしている。」
「中国は第2次世界大戦中、計り知れない苦しみを味わった。戦時中の罪の全責任を引き受けようとしない日本を非難する権利は韓国だけでなく中国にもある。」
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どうしてこの様な一方的なスタンスの記事が掲載されるのかは非常に興味深いところだが、この記事の最後の結びを引用してみよう。

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「歴史をめぐる中国の不満がいかに正当なものであっても、米国が日本を非難しないのは、中国が近隣諸国をいじめる独裁国家で、アジア太平洋地域を仕切る米国の指導力に深刻な脅威をもたらしていると広く認識されているためだ。
日本がどれほど悔い改めてもこの認識を拭い去ることはできない。」
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つまり、歴史問題における中国・韓国のスタンスが正当であることを断定し、それでも中国は「日本に対する怒りの輸出に失敗した」と結論付けている。その理由は、アメリカの認識が「中国が近隣諸国をいじめる独裁国家」であるからであり、「虐めっ子の言い分は仮にスジが通っていても聞いてあげることはない」のと同等であるとしている。なお、この記事を読む限りでは、このアメリカの「中国が近隣諸国をいじめる独裁国家」という認識について、否定はしていないがこれが正当な認識だとも言っていない。(正当か不当かは別として)様々な思惑の中のパワーバランスが丁度拮抗している地点で、行いの悪い日本が命拾いしているという内容の記事となっている。なんとも納得できない記事である。

しかし、ではこの記事の著者は誰なのかというのが気になるところである。記事の最後に著者の紹介が記されていたのでこれも引用しよう。

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Ying Ma氏は「Chinese Girl in the Ghetto(ゲットーの中の中国人少女)」の著者で、香港の公共放送局、香港電台で「China Takes Over the World(中国が世界を征服する)」の司会を務める。ツイッターは@gztoghetto」
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調べてみたが国籍までは分からなかったが、香港を拠点とする中国系の人(ないしは中国人)で、かなり中国に軸足を置いた人らしい。たまたま香港という場所が、長いこと英国領であったがために英語に堪能な中国人が多く、(国家戦略的な意図が背景にあることは勿論だが)英語での中国よりの発信が日本に比べて多く、日本人には信じ難いほど中国の言い分を鵜呑みにするメディア・人がアメリカ、イギリスに多かったりする。この事態を是正するのは日本として当然の権利だと思われるのだが、第2次世界大戦での戦勝国側の論理としては、日本に戦争の敗北の受け入れを強いるのみならず、戦後何十年も経過する中で吹聴された数多くのデマに関しても、戦勝国の権利として「デマをデマのまま受け入れよ!」と主張しているようにも見て取れる。

これがウオール・ストリート・ジャーナル紙がアメリカ国民に「伝えるべきニュース」として選んだ記事なのかと頭を抱えてしまうところであるが、しかし、これが全てではない。この記事の真逆を行くような記事もある。下記の記事はウオール・ストリート・ジャーナルの「社説記事」であるから、こちらの方が社の公式見解と言える。

ウオール・ストリート・ジャーナル2014年2月6日「【社説】日本には集団的自衛権が必要―アジアの民主主義に貢献

タイトルの通り、日本の集団的自衛権容認を好意的に評価する内容の記事である。元々アメリカ側から日本に求めていた集団的自衛権の問題であり、下記の様にその意義を説いている。

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集団的自衛権は別の理由でも日本にとって重要だ。その原則は民主主義国が独裁者の脅威に立ち向かうために結束するべきだとするもので、第二次大戦後の世界秩序の要となっている。欧州ではこの構想に基づき、ソビエト連邦を抑止するため北大西洋条約機構(NATO)が設立された。
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つまり、冷戦時代のヨーロッパにおけるNATOの位置づけと同様に、東アジアにおける日本の貢献を評価しているのである。そして「日本が率いる民主主義国の連合は、中国から迫り来る独裁主義に対峙する一段と有効な勢力となりうる。」とも述べている。明らかに中国の独裁主義を非難し、日本の行動の正当性を保証しているのである。ただ、アジア諸国の懸念として「安倍首相が昨年12月28日、A級戦犯をまつった靖国神社に参拝したことや、(日本軍の)戦争中の残虐行為を否定する一部の政府高官の発言で、アジアの隣国は日本の軍国主義の亡霊がまだ完全に追い払われていないという疑念を募らせている。」とも指摘しているが、ここでの表現は「疑念を募らせている」であり、微妙なニュアンスとしては「あくまでも疑念であり、的を得ている可能性は低い」という指摘の様にも読める。そして、「中国は集団的自衛権をめぐり大騒ぎする一方で、中国政府首脳は自らの行動が政治的に道筋を開いたと考えるかもしれない。中国が尖閣諸島や南シナ海の問題をめぐって武力で現状を変えようとし続けるなら、安倍首相あるいは次の首相が憲法第9条を丸ごと削除するかもしれない。」との指摘からは、日本がこの様な「右傾化」と言われるような事態を招いた根本原因は中国にあり、「安倍首相は、日本をアジアで主導的役割を果たすことのできる正常な国にしようとする取り組みにおいて称賛に値する。日本政府は平和に貢献し、この70年間で過去の行為を償ってきた。」と我々日本人の感覚をなぞらえるような評価で締めくくっている。

なお、この記事の日本の右傾化を招いたのは中国だとするご指摘は、同様に下記の記事からも読み取れる。

ウオール・ストリート・ジャーナル2014年2月12日「過去への謝罪にうんざりな日本

まず、記事の出だしから「学者で評論家の秋山信将氏の言葉を借りれば、日本は第2次世界大戦で負けたことをはっきりと認め深く謝罪する『グッド・ルーザー』役を演じ続け、久しく二級国家としての地位に甘んじてきたが、その役回りにすっかりうんざりしている。」としており、戦後70年の日本の歩みを正しく表現する言葉で始まっている。ただ、記事の途中で「安倍氏がナショナリストであるのは疑いない」とも言っているが、ナショナリスト、ないしは右翼と言うのは立ち位置のポジション次第で相対的にその様に言われることはあるから、これ自体はそれ程悪質ではない。そして、「日本の国民は日本が近隣諸国にもう十分に悔恨の情を示したとのメッセージを送っている」として、右でも左でもない平均的な日本人は、これまでの70年間の歩みの中で十分な謝罪を行っていると感じており、それを比較的公平な目で否定することなく記述している。一方で、中国・韓国の立場の紹介として用いられた言葉は「だが近隣諸国では、日本が永久に謝罪を続けることを広く期待している」であった。常識的に、一度戦争に負けたら「未来永劫、無限の年月をかけて謝罪し続けなければならない」という必然性は欧米人は持ち合わせていないから、これは暗に中国・韓国の感覚が少しずれていることを暗に批判している。実際、朴大統領は千年の恨みとも言っているので、単に国民感情としてあるだけでなく、少なくとも韓国はそれを正当な権利だと公言してはばからないのである。記事全体を通してだが、安倍総理を含め日本政府については好意的に捉えているが、ガラス細工の様な東アジアの安全保障体制の維持を考えるうえで、安倍総理が起こす僅かな水面に非常にセンシティブになっている感が伺える。これを「不安」という言葉で表している。

色々と書いてきたが、アメリカにおける日本の評価を理解しようとするとき、一部には中国系のステレオタイプの反日記事を受け入れる人々がいる一方、「社説」というオフィシャルな記事からも分かるように、日本のことはそれほど悪くは見てはいないが「何となく不安」に感じている人が大半なのだと思う。であれば、例えば靖国参拝などのひとつひとつの行動に対して説明責任をしっかり果たし、その個人(安倍総理)の人間性を明らかにすることで信頼を勝ち得ていくしかない。少なくとも「失望」という言葉を「売られた喧嘩」と捉えるのではなく、相手の反応にぶれることなく、淡々とやるべきことをやるというのが正攻法なのである。

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