西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ショスタコービチ「交響曲第9番」

2007-11-03 10:36:37 | 20世紀音楽
今日は、ショスタコービチの交響曲第9番が初演された日です(1945年、レニングラード)。
初演が行われた1945年は、今となってはもうずいぶん過去のものとなった第二次世界大戦が終結した年です。5月にドイツでの、そして8月に日本での戦争が終わり、新しい世界が困難な中にも待ち受けていると思われた時期でありました。そういう中で、ソビエト・ロシアでのそれは「大祖国戦争」を戦い抜いた記念すべき時を迎えていたものと思われます。当然、第5交響曲でソビエト当局に「帰順」したと思われていた、作曲家ショスタコービチにも最大の期待が寄せられていたことでしょう。「交響曲」で「第9番」となれば、これまでの偉大な作曲家たちの作品が連想されるわけで、当局がこの中に戦勝気分を見出したく思ったのも無理からぬことでした。ショスタコービチはうまくこの心理をついたのでした。ショスタコービチの交響曲第9番は、彼の全15曲のなかでも、第二「十月革命に捧ぐ」に次いで短い27分ほどの作品で、当局の言葉を借りるなら「イデオロギー的確信を伴わない」ものだったということです。その後、演奏から遠ざけられたということです(第二も同じく、そのモダン性によって、しばらく演奏されない時期が続いたという)。
ショスタコービチは、最後の交響曲第15番で(おそらく自身これが最後となると思っていたことでしょう)、唐突にも、ウィリアム・テル序曲が出てきたり、ワルキューレが出たりと、聴く者に疑問を抱かせる遊びをしています。このような中に、彼が生きた時代、政治体制に対する彼の痛烈な答が入っているように思えてなりません。彼は、あくまでも自然児だったのです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿