西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

ガウデアームス(されば楽しまん)―ブラームス「大学祝典序曲」

2016-08-07 13:55:10 | 音楽一般
ヨハネス・ブラームスに作品80「大学祝典序曲」があるが、これには4曲の学生歌より構成されている。そのうちの一つが「ガウデアームス」である。この曲は13世紀に、ボローニャの司教が作曲したものということだ。
中世の大学ということで、使われている言葉は、ラテン語である。ラテン語は、ミサ曲をはじめ、音楽の理解にも必要で、バッハやベートーベンのミサ曲、ブルックナーのモテットなどを深く知るにはどうしてもその知識が必要になる。現代語と異なり、かなり語形変化が厄介である。大学時代に学んだが、十分理解したなどとは言えない。自分でその変化を理解したいとこの何か月か取り組み、自分なりにわかりやすい変化表を作ったりした。まだその入り口のところで、統語論には入っていけてないが、とりあえず、目にしたこの「ガウデアームス」の分析を試みた。
やはり声に出さないと理解も十分にはならないので、カタカナ読みを付けてみた。ラテン語は極めて日本語に近い音を持ち、その点は我々日本人に向いた言語だ。

Gaudeamus igitur

1.
Gaudeamus igitur, juvenes dum sumus;
ガウデアームス イギトゥル, ユウェネース ドゥム スムス;
Post jucundam juventutem, post molestam senectutem,
ポスト ユークンダム ユウェントゥーテム, ポスト モレスタム セネクトゥーテム,
nos habebit humus.
ノース ハベービト フムス.

gaudeamus gaudeo(2)「喜ぶ・楽しむ」の接続法現在複数1人称。「意志の接続法」の働きをし、「~しようではないか」(勧奨)の意。
igitur (接)それ故に・されば
dum (接)~の間に
sumus sum「~である」の能動相直説法現在複数1人称
juvenes juvenis,e(形)若い、の男・女性複数主格
post (前)~の後で
jucundam jucundus,a,um(形)快い・楽しい、の女性単数対格
juventutem yuventus,tutis(女)青年・青春、の単数対格
molestam molestus,a,um(形)煩わしい・不快な・苦痛な、の女性単数対格
senectutem  senectus,tutis(女)老年、の単数対格
nos nos(人称代名詞)我々は、のここでは同形の対格「我々を」
habebit habeo(2)「持つ」の能動相直説法未来単数3人称
humus humus(女)大地、の単数主格

(筆者訳)
されば楽しまん、若さのあるうちに;
楽しさあふれる青春の後には、煩い多い老年の後には、
大地がわれらの帰るところとなることだろう。

(男)(女)(中)は、(ここでは女だけだが)は名詞の性を表わす(ドイツ語などと同じ)
(形)(前)(接)などは、英語と同じく品詞を表わす。
(対)は、格変化の一つで、ラテン語は、主格(~は)、属格(~の)、与格(~に)、対格(~を)、奪格(または従格)(~とともに・~によって・~から・~において)、呼格(~よ)の6つの格がある。ドイツ語より2つ多い。

2.
Vita nostra brevis est, Brevi finietur.
ウィータ ノストラ ブレウィス エスト, ブレウィー フィーニエートゥル.
Venit mors velociter, Rapit nos atrociter,
ウェニト モルス ウェーローキテル, ラピト ノース ア(-)トローキテル,
Nemini parcetur.
ネーミニー パルケートゥル.

vita(1)生命・人生・生涯、の単数主格(女性名詞)
nostra noster(所有形容詞)「我々の」の女性単数主格、vitaが女性名詞であることに合わせている
brevis brevis,e(形)短い、のここでは女性単数主格
est sum(前掲)の能動相直説法現在単数3人称
brevi (副)「簡単に・すみやかに」
finietur finio(4)「終える・(受動)終る」の受動相直説法未来単数3人称。
venit venio(4)「来る」の能動相直説法現在単数3人称
mors mors,mortis(女)死、の単数主格
velociter (副)swiftly,speedilyとラテン語・英語辞典にある。「すばやく・速く」
rapit rapio(3b)「奪う・ひったくる」の能動相直説法現在単数3人称
nos (前掲)
atrociter (副)violently,fiercely,cruelly,harshly、と辞典にある。「乱暴に・激しく・猛烈に・残酷に」
nemini nemo(3)何人も~ない、の単数与格(男女性)
parcetur parco(3)「容赦する」の受動相直説法未来単数3人称、与格を支配する。

(筆者訳)
我々の人生は短い、あっという間に終わってしまうだろう。
死はすばやくやって来て、われらを残酷に奪い取ってしまう、
死は誰をも容赦しないのだ。

名詞は、5つの変化に分かれる。そのうち、-aで終わる(1)は女性名詞を、-us,-umで終わり(2)とあるのは、それぞれ男性名詞、中性名詞を表わす。その他については、男女中で示される。
動詞は、(1)(2)(3)(3b)(4)の5つに分類される。動詞には、不規則動詞以外はこの分類が示される。

(続く)