西洋音楽歳時記

旧称「A・Sカンタービレ」。07年には、1日1話を。その後は、敬愛する作曲家たちについて折に触れて書いていきます。

弦楽四重奏曲補遺

2009-02-21 23:10:21 | ベートーヴェン
「弦楽四重奏曲第13番」はどのような聴き方をすべきなのかと考えることがある。
ベートーヴェンは1825年から26年にかけて、6楽章からなるこの曲を作曲したが、この時終楽章はいわゆる「大フーガ」が置かれていた。全曲で46~7分で、この「大フーガ」は15分ほどを占める。全体の約3分の1で、まさに「大」フーガである。内容も初演当初から難解との評判が立ち、周囲の友人から新しく作り直すべきだとの提案がなされた。本意ではなかっただろうが、新しい終楽章が作られることになった。それが、最後となった弦楽四重奏曲第16番の完成後に書かれた終楽章の新版である。我々は、そういうわけで、2つの終楽章を持つことになった。現在、この新版を終楽章にして、「大フーガ」の方は単独で聴くことがあるかもしれない。そのような配列で、置かれているLP、CDが多いように思う。私が最初に親しんだアマデウス弦楽四重奏団によるものは、このタイプだった。しかしいくつかこの曲の録音を見ると、「大フーガ」を最初に持ってきているものもあった。アルバン・ベルク弦楽四重奏団やスメタナ弦楽四重奏団はこの配列である。少数派のように思うが、私はこちらで聴いてみたいと今では思っている。

この「大フーガ」は、どのような経緯か不明だが、作曲者自身で、弦楽合奏用と四手のピアノ曲用とに編曲されている。カラヤン指揮で弦楽合奏版を聴くことができるが、これは優れた演奏と思います。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、全部で16曲ということになるが、実はもう一曲書いている。第1期の後半の1802年に完成された「弦楽四重奏曲 ヘ長調」である。これは、「ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調(作品14-1)」の自ら行った編曲である。今日始めて、この2つを続けて聴いてみました。最初から弦楽四重奏曲として作曲されたような印象を持ちました。この作品を全集に入れている団体は多くないですが、17曲目の弦楽四重奏曲と呼びたいような気がします。

他にも、ベートーヴェンは、弦楽四重奏のための前奏曲とフーガ ヘ長調(Hess 30)、弦楽四重奏のための前奏曲とフーガ ハ長調(Hess 31)、弦楽四重奏曲のためのメヌエット 変イ長調(Hess 33)、ヘンデルの《ソロモン》序曲のフーガの弦楽四重奏用編曲(Hess 36)などを1790年から1798年頃にかけて書いているが、アルブレヒツベルガーなど彼の作曲上の師による勉強の成果と呼んでよいようなものと思われる。

2月7日 弦楽四重奏曲第14番 ラサール弦楽四重奏団(CD)
2月14日 弦楽四重奏曲第16番 ヴェーグ弦楽四重奏団(CD)
      弦楽四重奏曲第13番 第6楽章(終楽章) アルバン・ベルク弦楽四重奏団(CD)
2月21日 ピアノ・ソナタ第9番 ニコラーエワ(CD)
      弦楽四重奏曲 ヘ長調 アマデウス弦楽四重奏団(LP)
      弦楽四重奏のための前奏曲とフーガ ヘ長調(Hess 30) メンデルスゾーン弦楽四重奏団(CD)
      弦楽四重奏のための前奏曲とフーガ ハ長調(Hess 31) メンデルスゾーン弦楽四重奏団(CD)
      弦楽四重奏曲のためのメヌエット 変イ長調(Hess 33) ハーゲン弦楽四重奏団(CD)
      ヘンデルの《ソロモン》序曲のフーガの弦楽四重奏用編曲(Hess 36) ハーゲン弦楽四重奏団(CD)