稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

剣道講和(敬老の日に話した内容、年不明)- 3/5

2017年12月09日 | 長井長正範士の遺文
攻防打突の間の足の運びで特に留意すべきは、前後は古流に習って歩み足のこと。
基本はあくまで送り足ではあるが、これにこだわらず昔、真剣勝負の時、
相当離れた距離から走っていって生死の間で勝負を決めた。
また、数合い渡り合って死闘をやった時の足使いは主に走り足か歩み足であり、
一刀流の組太刀はみな走り足と歩み足で形が構成されている。

ただ斬撃の瞬時は右足右手前であることは当然であるが、
そこまでの動きは歩み足が自然であり、後ろに間をとるにしても、
前の右足から下がり左足右足と交互に下がる動作が多いのである。
もし前の右足を後に引いた時、相手が正面を打ってきた時は、
前に残った左足を軸に身体を斜め右にひねって、
相手の打ち出す右小手の隙を打つことが出来る。

これは相手の真線上から、我は僅かに左に逸れるからで、
真剣勝負の相打ちの面であっても、歩み足から生じる腰の捻り
(右足軸に腰を左に捻ると同時に後の左足を右足の後ろに瞬時に移動)で
逆に面を打つことが出来る。

心は既に打ちたい勝ちたい打たれたくないという我が心を切り落としている。
この心、即ち「剣身」が思わず打って出て勝を制するのである。

(続く)


(昭和45年4月9日、国際親善大会、万博会場にて)
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