稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

日本剣道形「太刀の形一本目」の左諸手上段について

2025年04月11日 | 剣道・剣術

長正館の剣道稽古で、ひとりの中堅剣士が子供たちに剣道形を教えていた。
遠くで見ていると太刀一本目の打太刀の上段が妙にぎこちない。
近寄ると相手に正対したまま左上段に構えている。身体は妙にねじれている。

「それはおかしい、少し右肩を引きなさい」と指摘したら、
その中堅剣士は、ある講習会で「左上段は正対姿勢です」と説明されたとの事。

そんなバカな。と思いながらも全日本剣道連盟でそう決めたのなら従うしかないので
「調べておきます」と黙ってしまった。

次の日、別の稽古会である八段先生に、
「いまの剣道形の太刀一本目は・・諸手左上段を正対姿勢になりなさい・・と変更されたんですか?」とお聞きした。
即座に否定され、さらに経緯を説明すると「それは、あまりに一重になって左肩が出過ぎる者がいたので・・も少し正対しなさい
・・と指導されたのでしょう。諸手左上段は左自然体で間違いありません。」との事。何をバカな・・と笑っておられた。

こんな質問は、質問するのも恥ずかしいほどで左自然体はごく当たり前のことなのだ。
まるで「太陽は東から昇るんですか?」というような質問をしてるようなもの。

あとで調べると剣道社会体育教本にも左自然体と書いてあった。



一般の書では、まあ権威のある文献として重岡曻先生「日本剣道形(昭和52年)」で、ここでも左自然体と明記してある。



ただこの本には、左上段が正対しているかのように見える写真が載っている。
見る者の理解が無いと「正対かな?」と誤解をする恐れがあるのだ。

この中堅剣士に伝えたのは、
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長正館では小野派一刀流という古流剣術を並行して稽古している道場で、
長井長正先生、井上勝由先生ともに剣道形には大変うるさく細かなところまで指導され今もそれを引き継いでいる。
講習会で「正対しろ」というのが受け取り側の勘違であれば仕方が無いが、
もし全日本剣道連盟の指導方針から外れた指導だったとしたらトンでも無い話である。
長正館の剣道形の子供たちへの指導は「諸手左上段は左自然体」で統一してください。
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剣道(剣術も)、特に形の稽古で注意しなければならないのは
権威のある者が何か強調して指導すると、その強調された部分が一人歩きして元の意図とは異なる内容に伝達し伝承してしまう事である。
そのため各人とも、常に理合の整合性を確認しながら稽古を続けなければならないのだ。
上の者が正しいとは限らないし、間違って聞き取る下の間違いもある。

自分自身の戒めとして気をつけていきたいものである。


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