浜矩子(のりこ)著『さらばアホノミクス 危機の真相』を読む。
経済に疎い私でもすいすい読めて、「なるほど!」と納得することが多かった。
浜さんの論理は明快でしかも的を射ており、読みながら何度も
「そうだ!そうだ!」と叫んでいた。
読後が実に爽やかなのだ。
現在の日本で、これほどの侠気ある論客は少ないのではないだろうか。
最近はテレビでお見かけする機会が減ったように思うが、是非、コメンテーターとして
現政権への【喝!】を拝聴したいものだ。
目から鱗の言葉を、一部引用させて頂きます。
(1)経済政策は、経済活動が均衡状態から遠ざかった時、その歪みを是正するためにある。
均衡点への経済活動の回帰を支援するためにある。
ところが、強さと力ばかりを追求する現在の政策運営は、日本の経済活動の
調子を狂わせるばかりだ。このようなやり方とは、何としても、
おさらばする必要がある。
(2)2015年4月、安倍首相はアメリカで次のように演説している。
「アベノミクスと私の外交安全保障政策は表裏一体でございます」
「デフレから脱却して経済を成長させGDPを増やすことができれば、
むろん社会保障の財政基盤を強化できますが、もちろん防衛費も
しっかり増やすことができます。・・・
つまり、強い経済はしっかりした安全保障、安全保障政策の建て直しに不可欠である」
これがアベノミクスの正体です。まさに「強いお国」を構築するために
強い経済基盤を作る。
安倍首相の頭の中にあるアベノミクスとはそういうことなのです。
これはもはや経済政策ではありません。
(3)外交安全保障と表裏一体のアホノミクスにおいては、実をいえば恩恵が
したたり落ちるようが落ちまいが、そんなことはどうでもいいのだと思います。
あくまでも強い者がより強くなり、大きな者がより大きくなり、
豊かな者がより豊かになりさえすれば、それでいいのです。
そのことが、「強い日本を取り戻す」ことにつながれば、
弱者がどうなろうと知ったことではない。
(4)今や日本経済は輸出主導型成長の経済ではありません。日本は輸出大国ではなく、
実は輸入大国です。これは国際収支構造を見れば明らかです。
原油などのエネルギーに始まり、多くの生産財や資本財はもちろん、
人々の生活に密着している消費財も、地球上のあらゆる国からの輸入に頼って、
日本という大きな国の経済を回しているのです。
そのような中で円安を追及する政策はまったく理にかないません。
このような成熟度、経済活動や生産体制のグローバル化を考えれば、
自国通貨安を追及することは実に多くの意味で明確にアナクロニズムだといえます。
経済大国が自国通貨安に頼って若き日の輸出主導型成長を取り戻そうとするのは、
やっぱり大人げない。
(5)これだけ大きな経済になれば、どこかで成長が止まるのは当然のことですし、
日本はすでに十分豊かなわけです。そこから無理やり成長を目指せば、
歪みが生じてしまいます。
そのような状況下で追及すべきことは「分配政策」です。
これまでの成長の果実である豊かさを、いかに上手く、いかに賢く分かち合うか。
それが問われている。
私は、今の日本経済の最大の問題は「豊かさの中の貧困」だと考えます。
「相対的貧困率」という指標があります。日本はこの比率がなんと
16%に達しているのです。
6人に1人は貧困です。ほぼ同様に、子どもの貧困率も16%で、
6人に1人の子どもはご飯をお腹いっぱい食べられない状態にあります。
これは、もとより社会的・道義的に絶対に許されないことですが、
経済活動のあり方としても実は合理性がない。
富の偏在は、結局のところ、経済基盤の歪みと脆弱(ぜいじゃく)性を
深化させていきます。
(6)彼らは株式市場によって政策を人質に取られてしまった。株式市場が
政策の司令塔になってしまっています。そうした中で、日銀がETFを買ったり、
GPIFが運用全体に占める株式の比率を上げたりして株価を
無理やり操作してきたわけです。それを見た外国人投資家が
「それ儲かるぞ」と入ってくる。それで株価は上がりますが、それはPKOというより、
もはやPLOです。ただ強さを誇示したいという人たちの発想です。
日銀が買っている国債は300兆円を超え、GDPの5分の3に達しています。
金融政策は財政を支え、財政政策は本来の機能を果たさない。
財政政策は所得再分配を行うためにありますが、先ほどの貧困率の例でも
明確なように、全くその役割を果たしていません。
財政も国債残高は1000兆円を超え、危機的な状況です。
S&Pからまた格下げされて「AAマイナス」から「Aプラス」(上から5番目)まで
落ちました。安倍首相は本気で財政再建しようなんて思っていないでしょう。
この調子で財政が行き詰まり続けていくと、行き着く先はどうも
統制経済しかないように思えてきます。
いずれにせよ、現政権下では構造改革という言葉の意味が、
「強い日本を取り戻す」という脈絡の中でしかとらえられていない。
そのために改正労働者派遣法などを持ち出してくることになる。
労働法制は労働者の人権を守るためにあるのに、それを骨抜きにしてしまえ
という発想です。
これが安倍内閣の言うところの構造改革とか規制改革というわけですから、
まともな政策は何も期待できません。
こうした先には、株価は早晩維持できなくなり、通貨も売られ、国債の価値も見限られる
でしょう。「株安・通貨安・債権安」のいわゆるトリプル安に見舞われることになると
思います。経済政策が本来行うべきことから外れたことをやり続ければ、こうした形で
いつかしっぺ返しをくらうことになるのです。
(7)日本の安保法制を見ても危うさを感じますね。安倍晋三首相は
「戦後レジームからの脱却」を標榜(ひょうぼう)しています。
つまりは「戦前」に戻りたいということですが、まさに時代錯誤です。
この共生の時代において強さを取り戻すことに固執するとは、
時代感覚のなさがあまりにも著しい。時代錯誤の誇大妄想ほど怖いものはありません。
そのような方向感とは、早く決別したいです。
「さらば、アホノミクス!」ですよ。
(第1章のほんの1部、引用させて頂きました)
その他に気になったのは、TPPの正体です。(第2章より)
2010年春先ごろは、「TPSEP(環太平洋戦略的経済連携協定)」という
言い方が主流だった。
だが、いつのまにかS(Strategic=戦略的)とE(Economic=経済の)が消えて、
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)という、何ともフンワリした感じに替えられた。
ところが安倍晋三首相は、4月29日の米議会での演説では次のように発言している。
「TPPは単なる経済的利益をはるかに超える」もので「我々の安全保障に関わる」テーマだと
明言した。続いて「長期的にみたその戦略的価値(strategic value)」は
「驚嘆すべきもの(awesome)」だと言っている。
事がなるまでは本音を隠す。狙いが成就したところで正体を現す。
TPPにはどうもこんなイメージがつきまとう。 (引用ここまで)
※水面下で日本がどんどん変えられていく。そして気がついた時には……。
国民がTPPの正体を知るのは、参院選の後になるのだろうか?
経済に疎い私でもすいすい読めて、「なるほど!」と納得することが多かった。
浜さんの論理は明快でしかも的を射ており、読みながら何度も
「そうだ!そうだ!」と叫んでいた。
読後が実に爽やかなのだ。
現在の日本で、これほどの侠気ある論客は少ないのではないだろうか。
最近はテレビでお見かけする機会が減ったように思うが、是非、コメンテーターとして
現政権への【喝!】を拝聴したいものだ。
目から鱗の言葉を、一部引用させて頂きます。
(1)経済政策は、経済活動が均衡状態から遠ざかった時、その歪みを是正するためにある。
均衡点への経済活動の回帰を支援するためにある。
ところが、強さと力ばかりを追求する現在の政策運営は、日本の経済活動の
調子を狂わせるばかりだ。このようなやり方とは、何としても、
おさらばする必要がある。
(2)2015年4月、安倍首相はアメリカで次のように演説している。
「アベノミクスと私の外交安全保障政策は表裏一体でございます」
「デフレから脱却して経済を成長させGDPを増やすことができれば、
むろん社会保障の財政基盤を強化できますが、もちろん防衛費も
しっかり増やすことができます。・・・
つまり、強い経済はしっかりした安全保障、安全保障政策の建て直しに不可欠である」
これがアベノミクスの正体です。まさに「強いお国」を構築するために
強い経済基盤を作る。
安倍首相の頭の中にあるアベノミクスとはそういうことなのです。
これはもはや経済政策ではありません。
(3)外交安全保障と表裏一体のアホノミクスにおいては、実をいえば恩恵が
したたり落ちるようが落ちまいが、そんなことはどうでもいいのだと思います。
あくまでも強い者がより強くなり、大きな者がより大きくなり、
豊かな者がより豊かになりさえすれば、それでいいのです。
そのことが、「強い日本を取り戻す」ことにつながれば、
弱者がどうなろうと知ったことではない。
(4)今や日本経済は輸出主導型成長の経済ではありません。日本は輸出大国ではなく、
実は輸入大国です。これは国際収支構造を見れば明らかです。
原油などのエネルギーに始まり、多くの生産財や資本財はもちろん、
人々の生活に密着している消費財も、地球上のあらゆる国からの輸入に頼って、
日本という大きな国の経済を回しているのです。
そのような中で円安を追及する政策はまったく理にかないません。
このような成熟度、経済活動や生産体制のグローバル化を考えれば、
自国通貨安を追及することは実に多くの意味で明確にアナクロニズムだといえます。
経済大国が自国通貨安に頼って若き日の輸出主導型成長を取り戻そうとするのは、
やっぱり大人げない。
(5)これだけ大きな経済になれば、どこかで成長が止まるのは当然のことですし、
日本はすでに十分豊かなわけです。そこから無理やり成長を目指せば、
歪みが生じてしまいます。
そのような状況下で追及すべきことは「分配政策」です。
これまでの成長の果実である豊かさを、いかに上手く、いかに賢く分かち合うか。
それが問われている。
私は、今の日本経済の最大の問題は「豊かさの中の貧困」だと考えます。
「相対的貧困率」という指標があります。日本はこの比率がなんと
16%に達しているのです。
6人に1人は貧困です。ほぼ同様に、子どもの貧困率も16%で、
6人に1人の子どもはご飯をお腹いっぱい食べられない状態にあります。
これは、もとより社会的・道義的に絶対に許されないことですが、
経済活動のあり方としても実は合理性がない。
富の偏在は、結局のところ、経済基盤の歪みと脆弱(ぜいじゃく)性を
深化させていきます。
(6)彼らは株式市場によって政策を人質に取られてしまった。株式市場が
政策の司令塔になってしまっています。そうした中で、日銀がETFを買ったり、
GPIFが運用全体に占める株式の比率を上げたりして株価を
無理やり操作してきたわけです。それを見た外国人投資家が
「それ儲かるぞ」と入ってくる。それで株価は上がりますが、それはPKOというより、
もはやPLOです。ただ強さを誇示したいという人たちの発想です。
日銀が買っている国債は300兆円を超え、GDPの5分の3に達しています。
金融政策は財政を支え、財政政策は本来の機能を果たさない。
財政政策は所得再分配を行うためにありますが、先ほどの貧困率の例でも
明確なように、全くその役割を果たしていません。
財政も国債残高は1000兆円を超え、危機的な状況です。
S&Pからまた格下げされて「AAマイナス」から「Aプラス」(上から5番目)まで
落ちました。安倍首相は本気で財政再建しようなんて思っていないでしょう。
この調子で財政が行き詰まり続けていくと、行き着く先はどうも
統制経済しかないように思えてきます。
いずれにせよ、現政権下では構造改革という言葉の意味が、
「強い日本を取り戻す」という脈絡の中でしかとらえられていない。
そのために改正労働者派遣法などを持ち出してくることになる。
労働法制は労働者の人権を守るためにあるのに、それを骨抜きにしてしまえ
という発想です。
これが安倍内閣の言うところの構造改革とか規制改革というわけですから、
まともな政策は何も期待できません。
こうした先には、株価は早晩維持できなくなり、通貨も売られ、国債の価値も見限られる
でしょう。「株安・通貨安・債権安」のいわゆるトリプル安に見舞われることになると
思います。経済政策が本来行うべきことから外れたことをやり続ければ、こうした形で
いつかしっぺ返しをくらうことになるのです。
(7)日本の安保法制を見ても危うさを感じますね。安倍晋三首相は
「戦後レジームからの脱却」を標榜(ひょうぼう)しています。
つまりは「戦前」に戻りたいということですが、まさに時代錯誤です。
この共生の時代において強さを取り戻すことに固執するとは、
時代感覚のなさがあまりにも著しい。時代錯誤の誇大妄想ほど怖いものはありません。
そのような方向感とは、早く決別したいです。
「さらば、アホノミクス!」ですよ。
(第1章のほんの1部、引用させて頂きました)
その他に気になったのは、TPPの正体です。(第2章より)
2010年春先ごろは、「TPSEP(環太平洋戦略的経済連携協定)」という
言い方が主流だった。
だが、いつのまにかS(Strategic=戦略的)とE(Economic=経済の)が消えて、
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)という、何ともフンワリした感じに替えられた。
ところが安倍晋三首相は、4月29日の米議会での演説では次のように発言している。
「TPPは単なる経済的利益をはるかに超える」もので「我々の安全保障に関わる」テーマだと
明言した。続いて「長期的にみたその戦略的価値(strategic value)」は
「驚嘆すべきもの(awesome)」だと言っている。
事がなるまでは本音を隠す。狙いが成就したところで正体を現す。
TPPにはどうもこんなイメージがつきまとう。 (引用ここまで)
※水面下で日本がどんどん変えられていく。そして気がついた時には……。
国民がTPPの正体を知るのは、参院選の後になるのだろうか?





