オレは,社会の矛盾を是正する世直しの最初の一歩として,不条理な校則で全国的に有名な富士応理高校に入学した。もちろん,校内の不条理を一掃するのが目的である。
入学手続き後,生徒手帳を手に入れたので,さっそく噂の不条理な校則にチェックを入れることにした。
校則は,『校則違反をしたものは厳罰に処す。』という一文から始まっている。
それを目にしたとたん,ヤツら,本気だな,と武者震いを覚えた。
それに続く第一条にはこう書かれていた。
『第一条 校則に従ってはならない。』
・・・?
読んですぐには意味がつかめなかった。何を言っているんだ,コレは?
第一条に従って他の校則を破ったとしても,第一条に従ってしまった時点で第一条を破ったことになってしまう。
第一条に従わなかったとすると,第一条に書かれた内容を守ったことになってしまい,結果として第一条を破ったことになる。
いきなり第一条からとてつもないのが出てきた。ぐるぐる考えているうちに,オレの頭はピーとホイッスルを鳴らし,湯気を立て始めた。
こうなると,もう,チェックを入れるどころではない。
むしろ,入れるべきはツッコミであろう。
「不条理っていうより不合理じゃん!」
そう叫んでオレは生徒手帳を床にたたきつけた。
簡単にへこたれはしない。望むところだ。敵が強大であることを確認できて,「オラ,ワクワクしてきた」といったところである。
高校に入学したら,さっそく生徒会長になってやる。そして全校生徒と結託して,まずは校則をすべてまっとうなものに改正してやる!
オレは,らんらんと目を輝かせながら,来るべき高校ライフの計画を練り始めた。
(完)
※ 実は,この第一条があることで困るのは生徒だけではなく,校則に違反したかどうかを判定して処罰する側の教師も困るのである。第一条のせいで,ある生徒が校則を全て守れているのかどうか,逆に言えば,どれか一つでも破っているかどうかが誰にも判定できないからである。
これは Smullyan 氏の著書などで知った「サンチョ・パンサのパラドックス」と呼ばれるものと同種のパラドックスであろう。Wikipedia に「ワニのパラドックス」という名で同種のパラドックスが紹介されている。
入学手続き後,生徒手帳を手に入れたので,さっそく噂の不条理な校則にチェックを入れることにした。
校則は,『校則違反をしたものは厳罰に処す。』という一文から始まっている。
それを目にしたとたん,ヤツら,本気だな,と武者震いを覚えた。
それに続く第一条にはこう書かれていた。
『第一条 校則に従ってはならない。』
・・・?
読んですぐには意味がつかめなかった。何を言っているんだ,コレは?
第一条に従って他の校則を破ったとしても,第一条に従ってしまった時点で第一条を破ったことになってしまう。
第一条に従わなかったとすると,第一条に書かれた内容を守ったことになってしまい,結果として第一条を破ったことになる。
いきなり第一条からとてつもないのが出てきた。ぐるぐる考えているうちに,オレの頭はピーとホイッスルを鳴らし,湯気を立て始めた。
こうなると,もう,チェックを入れるどころではない。
むしろ,入れるべきはツッコミであろう。
「不条理っていうより不合理じゃん!」
そう叫んでオレは生徒手帳を床にたたきつけた。
簡単にへこたれはしない。望むところだ。敵が強大であることを確認できて,「オラ,ワクワクしてきた」といったところである。
高校に入学したら,さっそく生徒会長になってやる。そして全校生徒と結託して,まずは校則をすべてまっとうなものに改正してやる!
オレは,らんらんと目を輝かせながら,来るべき高校ライフの計画を練り始めた。
(完)
※ 実は,この第一条があることで困るのは生徒だけではなく,校則に違反したかどうかを判定して処罰する側の教師も困るのである。第一条のせいで,ある生徒が校則を全て守れているのかどうか,逆に言えば,どれか一つでも破っているかどうかが誰にも判定できないからである。
これは Smullyan 氏の著書などで知った「サンチョ・パンサのパラドックス」と呼ばれるものと同種のパラドックスであろう。Wikipedia に「ワニのパラドックス」という名で同種のパラドックスが紹介されている。
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