あるうららかな秋の日。
紅葉も真っ盛りで,日が暮れると肌寒いが,日中は心地よい陽気である。
公園のベンチで読書をしているところを,親子連れが通りがかった。
本から目を離し,仲睦まじい親子の姿を見てしばし和んでいると,木の枝からぶら下がっているものを見つけた子供がこう言い放った。
「あ,首吊り坊主だ!」
せっかく築き上げてきた文学的世界が一瞬で消し飛ぶ破壊力に満ちた一言である。
それは首吊り坊主ではなく,てるてる坊主だ。
子供にありがちな言い間違いだろうからと気を取り直した矢先,親の返答が追い討ちをかけた。
親「あ,ほんとだー。かわいい首吊り坊主だねー。」
お前が教えたんかい!!(怒)
親よ。正しい名称を次世代に伝えるということは,大人の義務だと思うんですよ。
親「よくできた首吊り坊主だねぇ,これは。グッ,グブ。」
子「ケケ。ボク,もっと大きい首吊り坊主が見たいなー。」
親「そうかい。そこらへんにちょうどいい材料があればいいんだけどねぇ。ゲッゲッゲッ。」
僕の憤怒の視線が親子の背中を焦がしたのだろうか。
僕の気配に気づいたらしく,親子はゆっくりと僕の方を振り返った。
子「ねぇ,あれなんかどうかなぁ。グブブ。」
親「ゲッゲッ。ちょうど手ごろな材料じゃないか。どれ,あれで作るとしようかねぇ。ゲゲゲゲ。」
子「わぁい,やったあ!グブッ,早く作ってよ,早く!ケケッ,ケケケケケッ。」
何か得体の知れない生き物が,まるで蛙を見つめる蛇のような目つきで僕を見据えたまま,こちらへ静かな足取りで忍び寄ってきた。
僕は体がすくんでしまい,身じろぎもできぬまま,その瞬間まで目を大きく見開いて,近づいてくる親子をただただ見つめ続けることしかできなかった。
(完)
紅葉も真っ盛りで,日が暮れると肌寒いが,日中は心地よい陽気である。
公園のベンチで読書をしているところを,親子連れが通りがかった。
本から目を離し,仲睦まじい親子の姿を見てしばし和んでいると,木の枝からぶら下がっているものを見つけた子供がこう言い放った。
「あ,首吊り坊主だ!」
せっかく築き上げてきた文学的世界が一瞬で消し飛ぶ破壊力に満ちた一言である。
それは首吊り坊主ではなく,てるてる坊主だ。
子供にありがちな言い間違いだろうからと気を取り直した矢先,親の返答が追い討ちをかけた。
親「あ,ほんとだー。かわいい首吊り坊主だねー。」
お前が教えたんかい!!(怒)
親よ。正しい名称を次世代に伝えるということは,大人の義務だと思うんですよ。
親「よくできた首吊り坊主だねぇ,これは。グッ,グブ。」
子「ケケ。ボク,もっと大きい首吊り坊主が見たいなー。」
親「そうかい。そこらへんにちょうどいい材料があればいいんだけどねぇ。ゲッゲッゲッ。」
僕の憤怒の視線が親子の背中を焦がしたのだろうか。
僕の気配に気づいたらしく,親子はゆっくりと僕の方を振り返った。
子「ねぇ,あれなんかどうかなぁ。グブブ。」
親「ゲッゲッ。ちょうど手ごろな材料じゃないか。どれ,あれで作るとしようかねぇ。ゲゲゲゲ。」
子「わぁい,やったあ!グブッ,早く作ってよ,早く!ケケッ,ケケケケケッ。」
何か得体の知れない生き物が,まるで蛙を見つめる蛇のような目つきで僕を見据えたまま,こちらへ静かな足取りで忍び寄ってきた。
僕は体がすくんでしまい,身じろぎもできぬまま,その瞬間まで目を大きく見開いて,近づいてくる親子をただただ見つめ続けることしかできなかった。
(完)
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