ベクトル三重積の公式が成り立つことを成分によらずに示そうと考えていたが,どうも成分を考えた方が素直であると思えてきた。
まず,b と c は互いに垂直であると仮定しても一般性を失わない。実際,任意のスカラー k に対して
b×(c+kb)=b×c
であるから,k を b・(c+kb)=0 となるように -(b・c) と選べばよい。
同じように,任意のスカラー k に対して
{a+k(b×c)}×(b×c)=a×(b×c)
であるから,a と b×c とが互いに垂直であると仮定しても一般性を失わない。
空間の次元は3であるから,b と c とが垂直であれば b, c, b×c は空間の直交基底をなす。その結果,a が b×c に直交するならば a は b と c の1次結合で表せることになる。すなわち,
a=xb+yc
と表せる。そうすると,
a×(b×c)=xb×(b×c)+yc×(b×c)
となるが,すでにこの右辺の展開式はわかっているから,
a×(b×c)=x(b・c)b-x|b|2c+y|c|2b-y(c・b)c
=y|c|2b-x|b|2c
となる。ところで,
a・b=x|b|2,
a・c=y|c|2
であるから,示すべき公式
a×(b×c)=(a・c)b-(a・b)c
が導かれる。
こうしてみると,b と c とが張る平面内に初めから a が横たわっている場合を詳しく考察すればよかったと改めて気づく。
ちなみに,b と c とが互いに直交する単位ベクトルであれば,b と c とが張る平面内の任意のベクトル a は
a=(b・a)b+(c・a)c
と表せる。a×(b×c) はこのベクトルに垂直なので,
a×(b×c)=u{(c・a)b-(b・a)c}
と表せることが直ちにわかる。あとは大きさの比較であるが,やはりそれがネックなようだ。
a は b×c に垂直であり,b と c とは互いに直交する単位ベクトルであるから
|a×(b×c)|=|a||b×c|=|a||b||c|=|a|
である。一方,右辺の二乗は
u2|a|2
に等しい((c・a)2+(b・a)2=|a|2 であることに注意)。
したがって u=±1 であることまでは突き止められるが,どちらの符号を採用すべきかははっきりしない。
アルフケンとウェーバーの本でも同じ問題が生じているが,a と b を x 軸の正の向きの単位ベクトル,c を y 軸の正の向きの単位ベクトルにとった特別な場合の展開式から u=1 を結論している。しかしその論法は不十分であるように思える。u の絶対値は a,b,c によらずに 1 であるのは確かだが,符号は a,b,c い依存するかもしれないという可能性を排除していないからである。
ここまで考えて,ようやく証明の筋道がはっきりした。しかし,エレガントとは言い難いのが残念である。
まず,b と c は互いに垂直であると仮定しても一般性を失わない。実際,任意のスカラー k に対して
b×(c+kb)=b×c
であるから,k を b・(c+kb)=0 となるように -(b・c) と選べばよい。
同じように,任意のスカラー k に対して
{a+k(b×c)}×(b×c)=a×(b×c)
であるから,a と b×c とが互いに垂直であると仮定しても一般性を失わない。
空間の次元は3であるから,b と c とが垂直であれば b, c, b×c は空間の直交基底をなす。その結果,a が b×c に直交するならば a は b と c の1次結合で表せることになる。すなわち,
a=xb+yc
と表せる。そうすると,
a×(b×c)=xb×(b×c)+yc×(b×c)
となるが,すでにこの右辺の展開式はわかっているから,
a×(b×c)=x(b・c)b-x|b|2c+y|c|2b-y(c・b)c
=y|c|2b-x|b|2c
となる。ところで,
a・b=x|b|2,
a・c=y|c|2
であるから,示すべき公式
a×(b×c)=(a・c)b-(a・b)c
が導かれる。
こうしてみると,b と c とが張る平面内に初めから a が横たわっている場合を詳しく考察すればよかったと改めて気づく。
ちなみに,b と c とが互いに直交する単位ベクトルであれば,b と c とが張る平面内の任意のベクトル a は
a=(b・a)b+(c・a)c
と表せる。a×(b×c) はこのベクトルに垂直なので,
a×(b×c)=u{(c・a)b-(b・a)c}
と表せることが直ちにわかる。あとは大きさの比較であるが,やはりそれがネックなようだ。
a は b×c に垂直であり,b と c とは互いに直交する単位ベクトルであるから
|a×(b×c)|=|a||b×c|=|a||b||c|=|a|
である。一方,右辺の二乗は
u2|a|2
に等しい((c・a)2+(b・a)2=|a|2 であることに注意)。
したがって u=±1 であることまでは突き止められるが,どちらの符号を採用すべきかははっきりしない。
アルフケンとウェーバーの本でも同じ問題が生じているが,a と b を x 軸の正の向きの単位ベクトル,c を y 軸の正の向きの単位ベクトルにとった特別な場合の展開式から u=1 を結論している。しかしその論法は不十分であるように思える。u の絶対値は a,b,c によらずに 1 であるのは確かだが,符号は a,b,c い依存するかもしれないという可能性を排除していないからである。
ここまで考えて,ようやく証明の筋道がはっきりした。しかし,エレガントとは言い難いのが残念である。