トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

犯罪に追い込まれる障害者たち/『累犯障害者』

2010-02-23 02:18:53 | 障害
 昨年のNHK教育テレビの福祉ネットワークで、触法障害者の存在が取り上げられた。刑務所に服役中の受刑者の中に、少なくない割合で知的障害者が含まれているという驚くべき内容であった。服役するまで、周囲を含めて本人も自分が知的障害者であることを認識することもなく、障害者手帳(愛の手帳)も交付されていないものが多いのである。従って、服役に至るまで、社会福祉の恩恵を受けることもなく、出所後も、更生施設から拒否されるような形をとることになる。刑務所内でも、知的障害者に対処する専門家はおらず、「更生」ということもなされることがなかった。福祉からも、刑事政策からも見捨てられて存在であった。服役するにあたっても、万引きや食い逃げなどの軽微な犯罪を犯すことが多い。裁判にかけられれば、刑事責任能力を問われることもないのだろう、窃盗や詐欺罪が認められてしまう。福祉制度からも外れているので、出所後も、空腹のあまり、また、同様の犯罪を起こし、服役。こうした事を、繰り返して年をとっていくケースも少なくない。そして、挙句の果てには、刑務所の方が、一番暮らしやすい居場所と認識するようにすらなるのである。

 法務省と厚生労働省の連携もずっと、とられることがなかった。

 こうした、障害者と犯罪に関するタブー扱いされてきた実態を明らかにし、法務省と厚生労働省に、福祉と刑事政策の連携を働きかけ、始動させたのが、本書の著者の山本譲司氏である。現在は、八王子の福祉施設のスタッフとしても活躍しているかと思う。

 マスコミで、殺人事件などが犯人逮捕まで大きく報道された後、急にぴったりと報道が止む時がある。それは、容疑者が障害者であることが判明したための事が多いのである。しかし、マスコミは、そうした事態の報道をタブー視し、障害者と犯罪の関係を社会に問うことを放棄してきた。こうしたことも、社会に、認識されることがなかった要因の一つである。
 売春に利用される女性の中に、知的障害者が含まれていることも、報道されることがなかった。
 また、1995年の刑法40条の削除により、それ以後、ろう者の犯罪者が刑務所に収監されるケースも目立ってきた。ろう者がろう者に犯罪を犯す例や、ろう者だけの暴力団の存在もあるという。
 本書では、ろう文化との聴者の文化の違いから起こる悲劇についても言及している。

累犯障害者 (新潮文庫)
山本 譲司
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2 コメント

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Unknown (gmeg)
2010-02-27 02:52:20
お晩どす。
外国人のしょうがいしゃの場合はどうか、余り知られていませんが、日本で生まれ育った人たちがいるのですから、そのことも報告にあっていいと、思います。
でも、なぜかないことが多いです。
在日だけでなく、日本で出稼ぎをする海外からの人たちを、知ろうとしないと。
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そうですね (トッペイ)
2010-03-01 16:07:11
 海外からの出稼ぎの人たちも、雇用止めなど、また、慣れない日本の生活からのメンタル障害がありそうですね。
 また、ブラジルからの労働者の子どもは、学校に行っていない子もいます。その中に、障害を抱える子どもがいたらと思うと。
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