ゆずり葉早瀬 憲太郎,広鰭 恵利子,全日本ろうあ連盟汐文社このアイテムの詳細を見る |
全日本ろうあ連盟の創立60周年記念映画「ゆずり葉」のノベライズ本です。
映画は、早瀬憲太郎監督の脚本を、広鰭(ひろはた)恵利子さんが小説化したものです。主人公の木村敬一の31年前に止まってしまった生きる希望が、未完に終わったろう運動の8ミリ映画の制作の再開、それも自分の人生を見つめ直すことで、心の救済がなされます。この敬一をはじめとした30年前の世代と、薬剤師の欠格条項の撤回を求める若い世代との、ろう者の思いの伝え合いが描かれています。30年前の世代の「生きにくさ」と、若い世代に託された先輩たちの思いの受け止め方も描かれています。手話通訳士制度、運転免許なども、先輩のろう者の運動の成果です。そうしたことを、若い世代にも伝えていきたいという思いが強く伝わります。最近は、どの団体やサークルでも、若い世代の運動への参加が少なくなっている傾向にあるようです。今あることは、たなぼた式に手に入れたものではありません。長い、困難な運動の成果であることを忘れてはいけないでしょう。
真面目な内容だけではなく、エンターテイメントとしての要素も十分に持っている作品です。恋愛のことも、それに、「感動」の結末も、呼んでいた目がうるんできました。
最後に、聴覚障害者に対する欠格条項に対する全国的な署名活動により、平成13年6月29日に改正された法律を挙げてみます。この改正により聴覚障害者に対して閉ざされていた門が大きく開かれました。
医師法、歯科医師法、薬剤師法、診療放射線技師法、臨床検査技師・衛生検査技師に関する法律、視能訓練士法、技師装具士法、臨床工学技師法、救急救命士法、保険師助産師看護師法、薬物及び劇物取締法、言語聴覚士法、歯科衛生士法改正
いずれ、僕の通っている透析クリニックにも、聴覚障害者のスタッフが来るかもしれません。ろう運動における先輩たちの思いをゆずり葉のごとく、伝えられた若い人々が。
映画『ゆずり葉』予告編