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透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

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死ぬ前に若い世代に教えておくこと/絵本『ねこのごんごん』

2009-11-19 01:33:18 | 絵本・児童文学
ねこのごんごん (こどものともコレクション2009)
大道 あや
福音館書店

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 前回、読んだ捨てられた子猫の話は、前向きに生きることと同時に、絶望がそばに寄り添っている状態の話で、読み終わった後は、複雑な思いだった。見栄えが悪くて、可愛い声で鳴くことが出来ない捨て猫の希望を捨てない生き方に共感して読み終えれば、それで良かったかもしれないが、現実の重みを子ども向け絵本にも関わらず、感じてしまったのだ。

 今回の絵本は、そのような心配はなかった。

 最初に登場する子猫は、空腹で、帰る家も分からない。捨てられたのだ。山道を独り言を言いながら歩く捨て猫。やがて、おいしそうな匂いに惹かれて、農家にたどりつく。そこには、庭には犬がいて、家の中の御馳走のそばには、大きな猫がねていた。子猫は、うちにかけあがった。大きな猫は、子猫をじろっと睨んだけれども何も言わなかったので、子猫はごちそうを食べ終わると、大きな猫のそばで寝込んだ。
 目が覚めると、大きな猫は自分についてくるように行って、庭の隅で立ち止った。そして、名前がちょんで、人間でいえば98歳ぐらいの年寄りだと紹介した。犬も、のんという名前だと言った。そして、子猫に名前を聞いた。子猫は答えられなかった。ちょんが、名無しの権兵衛から、ごんごんという名をつけてくれた。ちょんのおかげで、ごんごんはそのうちの家猫になることができた。
 季節は秋から冬になった。ちょんと一緒にコタツに入っていた時、おしっこをちびってしまった。ごんごんは、家のおばさんにぶたれた。ちょんが、おしっこは外でするものだと教えて、戸が閉まっている時は、戸の隙間に手をかけて開けることを教えてくれた。「何事も自分で覚えるのが肝心、わかったか」。そして、ごんごんをなめてくれた。
 春になった。木に登ったごんごんは降りられなくなった。泣き声を聞いてちょんがやってきた。そして、木からの降り方を教えてくれた。「何度でも練習するんだ。何事も自分で覚えるのが肝心。分かったか」。
 池の魚を取ろうとして水の中へ落ちたごんごん。その時も、ちょんが助けてくれて、池の魚はおばさんの大切にしているものだから、手を出してはいけないと教えてくれた。
 そのうちに、ちょんは1日中、いろりのそばで寝てばかりいるようになった。ごんごんは、つまらないので1人で家の中を散歩した。物置でねずみを見つけた。1匹捕まえてちょんの所へ持って行った。「お前も猫らしくなったな。ねずみを捕るのが猫の仕事だ。……自分で練習することが肝心。分かったか」。
 その後も、ちょんは、いつものセリフでごんごんに大切な事を教えていった。

 ある日のこと、ちょんが自分は年をとり過ぎて、もうねずみがとれなくなったと言った。ごんごんは、ちょんのためにねずみを捕って戻ってきた。でも、ちょんは、じっとしたまま動くことがなかった。しばらくすると、おばさんがちょんを土に埋めた。ごんごんは、お墓にねずみをあげた。
 それからは、困った時は、自分で考えることにした。夏祭りの花火が上がる頃には、ごんごんも一人前の猫になった。おばさんも「いい猫だ。ちょんの跡継ぎだ」と言ってくれる。でも、ごんごんは、ちょんの「何事も自分で覚えることが肝心」と言ったことを今でもよく覚えている。そして、ちょんより、利口で強い猫になりたいと思っていた。

 死を前に、紛れ込んだ子猫に、生きる知恵を与える姿と、その言葉に従って一人前の立派な猫になろうとする、かつての捨て猫の姿に、希望ということを見つけることができた。