統合失調症とのつきあい方―闘わないことのすすめ蟻塚 亮二大月書店このアイテムの詳細を見る |
内容については、『 出版社/著者からの内容紹介
統合失調症は「不治の病」という印象を与えてきましたが、適切な環境の整備や人間的関わりによって回復します。又、症状や障害は状況によって大いに改善します。幻聴も赤子が泣くのと同じで、これと闘っても勝ち目はありません。さらに統合失調症や生活習慣病は当事者参加型疾病です。当事者や家族、支援者がこの病気について正しく理解できることを目的にしています。』と紹介されている。
幻覚・妄想は、もともとは外からやってきたものではないという。嫌な自分を切り離したものだ。日常生活を送る上で、誰でも体験する激しく強い感情をそのままにしておいては、現実には生活できないし、つらすぎる。だから、その感情を自分から離れたところに置こうとする。外在化しようとする。幻覚・妄想も同じ外在化されたものだ。著者は、氷山モデルで表している。海面上には、自分と幻覚・妄想という2つの氷山が存在するように見える。でも、その2つの氷山は、海面下ではつながっているのだ。ただし、困ったことに、外在化したはずの幻覚・妄想が、本人に攻撃を加えてくる。だから、無視すること。聞かないこと。聴けば聴くほど、耳は敏感となる。執着すればするほど、妄想は強くなる。
極意は闘わないことだという。
「健常者」といわれる人間も、青年期を中心に、軽い統合失調症にかかり、自然治癒しているケースが多いのではないかと著者は言う。
ノーマライゼーションの社会を目指した場合、精神障害者も「地域で生活できる」ことが望まれる。
『かりに、当事者の能力と環境条件とを数字で表し、それぞれの点数の合計が10点に達したときに「地域で生活できる」ものとする。
個人の能力(X)+環境の充実(Y)=10
もしも環境による支援(Y)が八点あるならば、個人の能力(X)は二点あればよい。逆に劣悪な環境(Y=二点とする)の中で生活を送るには、個人の能力(X)は八点もの高いレベルを求められる。つまり個人にとって地域生活のハードルが高くなる。欧州型の精神科リハビリテーションは、環境(Y)の充実を重視して個人(X)に高い負担や期待を求めない。つまり、当事者にとって、地域生活への移行のハードルは低い。本書P122.123』。
また、著者の『身体障害は、「動作の障害」であるのに対して、精神障害は社会的役割喪失などを中心とする「社会的障害」。だから、変わるべきは当事者ではなく、社会である。』という発言と共に、特に印象に残った所である。
本書には、適切な投薬による再発防止の必要性や、家族との関係等、多くの有意義なことが語られている。
出来ないことを責めるのではなく、ハードルを下げて、まずは患者のいいところを評価することから始めなくてはならない。社会が優しければ、生きやすい。
患者が見せるマイナス行動も、その根底にある意味を見出す必要がある。表面上だけでは理解できないという患者の本当の気持ち。
今までの、精神医学が、患者個人にだけ注目していたのを、彼らを取り巻く環境を含めて理解する必要性があるのだ。