かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

黄砂に抱かれた森を歩く

2021-03-31 13:26:47 | 日記

気象予報では、中国大陸から偏西風にのってやってくる黄砂が日本列島をすっぽり覆い、とくに東北地方は高い濃度数値が予想されるとアナウンスがあったにもかかわらず、陽気に誘われて青葉の森に分け入る。

入り口付近の高台から海の方向を望んだら、もう遠くが霞んじゃつていて、「うららかな春霞」なんて風流なことを言っていられない。

                  

黄砂の中身は、単なる砂だけではない、細菌、金属、化学物質のほか、今や、こないだのNHKスペシャルで報告されたマイクロプラスチツクまで混じり込んでおり、人体に悪さをしそうな微粒子がいっぱい含まれている。こんな日には、しっかり窓を閉めた家の中などシェルター内で巣ごもりしておくべきなんだろうが、森の中に入ったら、まだ新緑に包まれているわけでもないのに、なにかしら清浄な空気に満ちていて(ひとりよがりかも)、あちこちに咲いている春の妖精たちを目にしたら、マスクも外し、黄砂なんてどこ吹く風静かな時間を過ごす。

ウェザーニュース記事

スプリング・エフェメラルの先行者、セリバオウレンの結実した花は茎を長く伸ばし放射状の子房に種を宿しているようだ。どのように、タネを飛ばすものなんだろう。いずれにしても、先行逃げ切り型であることは間違いない。

もう、あちこちにカタクリの花が咲きだしている。多田先生に教えられたとおり、花が咲いた株が7年生であるなら、1年生から6年生までの株もいるんだと、そんな眼で花の周りを確認したら、たしかに葉が1枚だけ地上に出している下級生はたくさんいた。ただし、「種子の殻を頭にかぶった糸状の芽生え」の1年生はもう遅いのか確認できなかったが、少し成長したような可愛い葉っぱはところどころに見つかった。もう2週間ばかり早かったら芽生えを確認できただろう。

                  

スミレも咲きだしていた。薄紫のタチツボスミレ、赤紫の小さなマキノスミレ。

       

花が咲いたら、花粉のポーターたちもやってくる。この日飛んでいたのは、カタクリの蜜を吸っていた

ガのなかまで蝶みたいに翅を立ててじっとしているチョウ目イカリモンガ。成虫のままで冬を越すのだという。

       

同じように、成虫のままで冬を越すタテハチョウ科ルリタテハが、翅を広げて日光浴をしていた。翅を閉じれば保護色となるが、広げれば美しい黒に瑠璃色のストライブ、天敵の前に無防備ではないのか。それともパートナーに見つけられやすいからなのか。

 

 

タチツボスミレの蜜を長いストローで吸っていたのは、アブの仲間ハエ目ツリアブ科ビロードツリアブ。ビロードのような毛で暖かそうだが、春にしか現れないということで寒さ対策なのだろう。それにしても、ホバリングもできて、戦闘機のような翅をもち、長いストローでいろんな花の蜜を吸えそうな、なかな才能にとんだハナアブみたいだ。

 

コブシとホウの芽吹き。

                     

 

沢沿いに下っていくと、キンポウゲ科イチリンソウ属アズマイチゲとユキノシタ科ネコノメソウ

      

 

乾いた丘に、初めて名前を知ったキク科センボンヤリ属センボンヤリ

 

 

 

暗い北斜面にあやしげなユリ科エンレイソウ属エンレイソウがうつむき加減で顔を出している。

 

 

登ればカタクリ、下ればカタクリ、疲れた足もとにカタクリ、帰りの丘にカタクリ、ピンクに酔いながら、黄砂せいで目をしばたたかせ、タンをからまながら家路につくが、一編の物語を読み終えたような気分。

 

 

 

この日の森の動画

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