『創世の島』 バーナード・ベケット (ハヤカワ書房)
おもしろかったというよりは、たしかに衝撃のラストでしたよ。しかも、これはヤングアダルトとして出版され、賞も受賞しているらしい。こんなにひどいヒネクレた結末なのに!
最終戦争に非人道的なまでに過酷な鎖国によって生き延びた島国。そこのアカデミーへ入るための、4時間の口頭試問試験の内容が描かれる。
口頭試験のテーマは、過去の英雄であるらしいアダム。試験の中で、アダムが何をやったのか、そして、共和国の歴史が明らかになっていく。
舞台背景となる共和国の仕組みも試験の内容として語られる。創始者の名前どおり、プラトンの国家論に基づいた哲学者が支配する階層社会。この社会に対する違和感は、後のアダムの反抗への共感へ繋がる。
2時限目でいったいどこへ物語が向かうのかわけがわからなくなるも、すれた読者なら3時限目で大方の仕掛けが見えてくる。しかし、このラストはないわー。
主人公アナックスと試験官の問答と、反逆者アダムと人工知能アートの問答がクロスオーバーし、意識とは何か、知性とは何か、人間とは何か、という主題が、教科書のように整理された議論として読者の前に提示される。
議論の中でアダムとアートは互いに影響しあい、思考を変えていく。もし、アートに思考があるというのであれば。
アートとの問答はアダムの考え方に影響を与え、アダムの哲学は確実にアートに伝播し、小説中の現在へ伝わっっている。そのことにより、言葉としては出てこないものの、ミームの説明としても良くできているのではないか。
まぁ、これがまたいたるところ伏線というか叙述トリックっぽいわけで。
アダムをそのまなざしでとりこにしたイヴはどこに行ったんだー! と思ったんだけど、アダムにとってのイヴは、ペリクレスにとってのアナックスで、でも、二人のとった行動は異なるとか、そういうことなのか。
最初からネタ割れとか言ってる人は、猿に釣られすぎ。衝撃のツボはそこじゃない。あんまりそんなことは考えずに、なんの情報も無く読み進めた方が衝撃はでかい。いや、『猿の惑星』的なところじゃなくて、アナックスの試験結果が。
しかし、もっと衝撃的なのは、これがヤングアダルト小説だということ。海の向こうのヤングアダルトって、日本のガラパゴス化したライトノベルトは違い、まさにヤングでアダルトな(笑)背伸びしたいお子様向け小説のイメージがあったのだけれど、そのイメージをひっくり返す強烈さ。
人工知能というものに興味を持ってもらう入り口としては、非常に整理された入門小説なんだけど、お子様が読むにはあまりにもな発端と結末。
[追記]
ちょっと蛇足だが、親元から離されて育ったはずのアダムが、アートとの議論の中で、人間らしさの中に親子の絆を含めていたことに違和感が。深読みすると、アナックスの言うように、自分でも信じていない他人の論を語ったということなのだろうか。
おもしろかったというよりは、たしかに衝撃のラストでしたよ。しかも、これはヤングアダルトとして出版され、賞も受賞しているらしい。こんなにひどいヒネクレた結末なのに!
最終戦争に非人道的なまでに過酷な鎖国によって生き延びた島国。そこのアカデミーへ入るための、4時間の口頭試問試験の内容が描かれる。
口頭試験のテーマは、過去の英雄であるらしいアダム。試験の中で、アダムが何をやったのか、そして、共和国の歴史が明らかになっていく。
舞台背景となる共和国の仕組みも試験の内容として語られる。創始者の名前どおり、プラトンの国家論に基づいた哲学者が支配する階層社会。この社会に対する違和感は、後のアダムの反抗への共感へ繋がる。
2時限目でいったいどこへ物語が向かうのかわけがわからなくなるも、すれた読者なら3時限目で大方の仕掛けが見えてくる。しかし、このラストはないわー。
主人公アナックスと試験官の問答と、反逆者アダムと人工知能アートの問答がクロスオーバーし、意識とは何か、知性とは何か、人間とは何か、という主題が、教科書のように整理された議論として読者の前に提示される。
議論の中でアダムとアートは互いに影響しあい、思考を変えていく。もし、アートに思考があるというのであれば。
アートとの問答はアダムの考え方に影響を与え、アダムの哲学は確実にアートに伝播し、小説中の現在へ伝わっっている。そのことにより、言葉としては出てこないものの、ミームの説明としても良くできているのではないか。
まぁ、これがまたいたるところ伏線というか叙述トリックっぽいわけで。
アダムをそのまなざしでとりこにしたイヴはどこに行ったんだー! と思ったんだけど、アダムにとってのイヴは、ペリクレスにとってのアナックスで、でも、二人のとった行動は異なるとか、そういうことなのか。
最初からネタ割れとか言ってる人は、猿に釣られすぎ。衝撃のツボはそこじゃない。あんまりそんなことは考えずに、なんの情報も無く読み進めた方が衝撃はでかい。いや、『猿の惑星』的なところじゃなくて、アナックスの試験結果が。
しかし、もっと衝撃的なのは、これがヤングアダルト小説だということ。海の向こうのヤングアダルトって、日本のガラパゴス化したライトノベルトは違い、まさにヤングでアダルトな(笑)背伸びしたいお子様向け小説のイメージがあったのだけれど、そのイメージをひっくり返す強烈さ。
人工知能というものに興味を持ってもらう入り口としては、非常に整理された入門小説なんだけど、お子様が読むにはあまりにもな発端と結末。
[追記]
ちょっと蛇足だが、親元から離されて育ったはずのアダムが、アートとの議論の中で、人間らしさの中に親子の絆を含めていたことに違和感が。深読みすると、アナックスの言うように、自分でも信じていない他人の論を語ったということなのだろうか。