神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[NF] 0と1から意識は生まれるか

2009-12-19 18:24:59 | SF
『0と1から意識は生まれるか 意識・時間・実在をめぐるハッシー式思考実験』 橋元淳一郎 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)




最近ネット書店でばかり買い物をしているのだが、久しぶりにリアル書店で見つけて衝動買いしたもの。
0と1から意識は生まれるか。なんという甘美な響きの命題か。
鉄腕アトムの時代からの科学少年の夢ではないか。

でも、なんだか読んだことがあるような……。《ドクターψ》って、ずいぶん前にS-Fマガジンで連載してた奴じゃん(笑)
なおかつ、表題の“アンドロイドは電気羊の夢を見るか?”的な命題に関する思考実験は一部のみ。どちらかというと、エントロピー増大と時間とは何かという議論の方が比重が大きい。

第1章:葉緑体人間は可能か
第2章:人工生命は自己意識を持てるか
第3章:自己意識とは何か
第4章:時間とエントロピー
第5章:時間はなぜ過去から未来に流れるのか
第6章:真の実在を求めて

自分は人間機械論をある程度正しいと認識している方なので、生命と機械には自明な差があるとする本書の議論は前提条件レベルで納得がいかない。

人間やチンパンジーの知能と、人工生命の知能の差として発見性や創造性が上げられているが、十分な計算量と最適化手法を用いた探索アルゴリズムと、人間のヒラメキに有意な差があるとは思っていない自分には説得力に欠ける。アルゴリズムがどうこう言うならば、入力とほぼ同時に出力が出てくるニューラルネットワークでもなんでもいいけどさ。

あと、意識一覧表も見解の相違がありあり。犬に自己意識が無いって、どうやって調べたのだ?
ペットに意識があるかないか、喜怒哀楽があるかないかを判断するのも人間という意識であることも含めて考えるべきだろうけど。
チンパンジーと人間は遺伝子がほとんど同じだから同じようなものだとか、昆虫と人間も70%ぐらい一緒だからどうこうとか、まったく根拠の無い決め付けで思考実験らしくない。

一方、後半の時間とエントロピー関連は非常に興味深かった。この頃のS-Fマガジンも読んでいたはずなんだけど、ほとんど記憶が無い。いや、酔っ払ってトラになるとかは覚えていたりするんだけど(笑)

“時間”という変量は“実存”ではないという主張は、結構目からウロコ的な衝撃である。時間が過去から未来に流れるのは絶対的な実存ではなく、意識がそう認識しているだけということなのだろう。

逆に、そうであれば、もう一度意識の問題に立ち戻って、時間を認識できるかどうかを意識一覧表で見直したりとか、そういう方向に議論が進めばよかったのに、と思う。

看板に偽りありで、期待した内容ではなかったけれど、科学ノンフィクションとしては非常に読みやすく、おもしろかった。
さらに、一度読んだはず内容をまったく覚えていない自分の記憶力に悲しくなった(笑)