拝啓、世界の路上から

ギター片手に世界を旅するミュージシャン&映画監督のブログ(現在の訪問国:104ヶ国)

父の背中

2012-12-21 | 旅人のひとりごと


良くも悪くも“真面目で一生懸命”、、、それが子供の頃から、自分がずっと見続けてきた父の背中でした。


仕事一筋で趣味も無く、家の事を何もしないばかりか、日曜日も休むことなく仕事をし、幼少の頃も遊んでもらった記憶が殆ど無い、そんな父を見て、父のようには絶対なりたくないと子供ながらに思ったものですが、年齢を重ねると、知らず知らずよく似た部分が自分の中にもあることを、ふと気付かされたりします。


しかし人生の終わりを迎えようとしている今なお、全ての人間が避けては通れない“死”というものに対して、父は自分にその背中を見せてくれているような気がします。


ストレッチャーのまま移動することができる介護タクシーの存在や、ストレッチャーにも硬さが色々あって、長時間寝ていて楽なものや硬くて痛いもの等色々あること、自分達が絶対だと思っている精密検査や人間ドックでも見つからない病気は沢山ある(むしろ見つかるものの方が圧倒的に少ない)ことなど、父のことがなければ知らなかったことが沢山あります。


ミュージシャンあがりの雑草が、底辺から這い上がろうと必死だった頃の気持ちを、すっかり忘れかけていた最近の自分。

“良いときばかりではない、誰もが成り得る弱者の気持ちを忘れるなよ”と、かつては経営者として会社を切り盛りし、バブル時代にはRolexの時計をしてBMWを乗り回していた父が、半身不随で力なくベッドに横たわりながら、今もその背中で教えてくれている気がします。


口下手であまり多くを語らない父ですが、最期までその背中を、この目に焼き付けようと思います。