55年ぶりの下鴨神社を参拝

2008-01-18 11:53:39 | 歴史と散策

 学生時代に下鴨神社を参拝したとメモに残っているが、あまり記憶に残っていない。近くに住んでいた友人を訪ねたとき、ついでにお詣りしたらしい。平成6年(1994)12月に「古都京都の文化財」17件の一つとして、下鴨神社が世界遺産に指定されたとき、私が一番興味を持ったのは賀茂川と高野川が合流して鴨川になる三角州に位置し、「糺(ただす)の森」という名の京都原生林の中に存在するということであった。また、京都三大祭の葵祭の季節になると、下鴨神社訪問の計画を立てるが、実現に至らなかった。今年の1月10日に好天気の中を55年ぶりに訪問することができた。
 概略コースとして、河原町三条から市バス205番に乗って下鴨神社前で下車し、本殿まわりを見学・参拝し、糺の森にある参道を南下して出町柳にでる道を選んだ。        最初に驚いたことは、大部分の建物が朱色に輝いていることであった。
        
      御手洗川に架かる朱塗りの輪橋          重要文化財に指定されている楼門

私は日本の古い時代から神社や神宮の建物が朱色に塗られていることに素朴な疑問を持ち、調べたことがあるが、災厄を防ぐ色とか生命の躍動を表す色などの解釈が多かった。
朱色というのは天延の辰砂(硫化水銀)の色のことで、高松塚古墳から出た床石に塗られた顔料に硫化水銀が含まれていたとか、京都市埋蔵文化財研究所の調査で、平安京時代の出土瓦の赤色顔料は酸化鉄系の赤土ベンガラであったとか、鉛丹とよばれる硫化鉛顔料も使用されているとか…の記述があるので、神社・神宮で使用された赤色顔料に歴史について少し調べてみたいと思っている。
下鴨神社の本殿は文久3年(1863)に建て替えられたもので、神社建築の代表的な社殿として国宝に指定されている。また、世界遺産選定の基準として、建造物は国宝、庭園は特別名勝を対象としているが、上賀茂神社は国宝2件、重文34件、下鴨神社(正式名は賀茂御祖神社)は国宝2件、重文31件であり、京都指定の中ではトップクラスである。この面からの感想は上賀茂神社の訪問時に併せて考えたい。
 最近の観光案内によると、京都駅から車で1時間半くらい入った美山町には自然に恵まれた由良川や芦生原生林があり、茅葺屋根の民家や原生林の写真が紹介されている。私は出発前に「糺の森」を検索して、賀茂川と高野川の間の三角州にある糺の森という原生林の中に下鴨神社が鎮座しており、糺の森は国の史跡に指定されていることを知った。
 参道から眺めた糺の森は整備された森で、細長い敷地のためか町の騒音が聞こえない環境ではなかった。しかし森に入って細かく観察すると、護岸工事のされていない小川の自然の流れや林立した巨木の下にある中小樹木がバランスしており、昔の原生林の面影を残していた。
        
     糺の森を潤す泉川の自然の流れ          参道を両側から覆う樹林
情報を検索すると「糺の森」の名は、昔この森の神前で裁判をしたことから“糺す=調べる”となってこの呼び名になったようである。この森は、三角州一帯にあった森林の総称で昔は150万坪の原生林であったが、度重なる戦乱や明治4年の社寺上知令によって縮小され、現在の3.6万坪(東京ドームの約3倍)となった。
それでも学問的な価値は大きく旧山代原野の原生樹林を残す唯一の森林で、樹齢200~600年の巨木が600本、総樹木数4700本が存在している。一般の神社の樹林は針葉樹が中心であるが、糺の森は約70%が落葉樹であり、初夏の新緑と晩秋の紅葉が美しい神社といわれている。
 上賀茂神社と下鴨神社は、源氏物語や枕の草紙などの古典文学や詩歌などによく登場しており、京都でも格式の高い神社である。できれば早期に上賀茂神社の参拝を果たし、新緑と紅葉を愛でながら、歴史を回顧したいと思った。         


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