京都新聞の朝刊第一面に、印象派画家モネの代表作「睡蓮」が西陣織で製作展示されたと報道され、その美しい映像に驚いた。睡蓮の花に織り込まれた蓄光成分が、暗がりの中で浮かび上がる工夫がされている。これを展示しているのは、帯地メーカー「西陣あさぎ」が運営している松翠閣「西陣織工芸美術館」(上京区)で、訪問見学させていただいた。
地下鉄・二条城前からバスで堀川通を北に進み、堀川寺ノ内で下車し、寺ノ内通を西に進み、大宮通との交差点を100m弱西に進むと美術館に達する。
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松の緑が目印の松翠閣 純和風建築の「西陣織工芸美術館」
入場料200円を支払い、前庭と坪庭に挟まれた2室のミュージアムで西陣織とは思えない精巧な書画に接して感銘し、2階の部屋で、西陣織の浮世絵や印象派画家の絵画に2回目の感銘をし、最後に8畳間くらいの蔵に案内された。壁面の三面一杯に西陣織のモネの睡蓮が描かれ、照明を変えると睡蓮は朝・昼・夕の表情となり、照明を消すと蓄光糸を織り込んだ睡蓮の花が蛍光グリーンの光を放出して浮かび出て、3回目の感銘を受けた。この間30分くらいの間、係の女性が同道して熱心に解説してくれた。
この作品は、「真夜中の睡蓮」と題して横幅12m、縦1.8mあり、18枚の織物(帯地)を組み合わせて製作された壁画である。この美術館は、昭和14年(1939)に建てられた町屋を改装して平成14年(2002)に美術館としてオープンしたもので、西陣織の近代絵画が和風の建屋と内装によくマッチしている。
モネの睡蓮の壁画で有名なオランジュリー絵画館には、横幅90mの大壁画(8枚で)が存在する。私が訪れたのは平成4年(1992)11月である。パリの中心部にあるチユイルリー公園内のコンコルド広場にあり、開館待ちの行列のほとんどが日本人旅行者であった。
この絵画館にある「睡蓮の間」は楕円形の2室からなり、それぞれに4枚、合計8枚の細長い睡蓮の絵が展示されており、中央部に長椅子があって離れて鑑賞することができる。
日本語で書かれた解説書も販売されており、よく理解することができた。
モネは74歳からこの作品に取り組み、死去するまでの12年間かけて描かれたもので。生前に国へ寄贈を申し出て実現されたものである。このオランジュリー美術館は、平成12年(2000)1月から大改修に入り、約45億円かけて6年の工期で、平成18年(2006)5月に新装完成している。この工事により天井部から自然光が入り、モネが愛した陽光の入る部屋に改造されたのである。
一方日本では、蔵内部の暗闇の中で鑑賞する工夫ができたのである。印象派絵画の新しい鑑賞法が提案されたのであるが、これを支える織物技術やコンピューター技術の活用をベースにあり、美術分野にも新しい時代の到来を強く感じるこの頃である。
参考までに松翠閣のホームページを紹介する。 http://www.shosuikaku.jp/