山科アスニー講演会「調理担当から見た南極大陸の一年間」

2012-01-15 19:56:04 | その他

 1月11日に、山科アスニーで「調理担当から見た観測隊と昭和基地のお正月」と題した講演会が開催された。「南極大陸」については、昭和58(1983)年に「南極物語」として映画化され、昨年末に20億円を投じたといわれる木村拓哉主演のテレビドラマ「南極大陸」があり、記憶も新しかったので拝聴させていただいた。
 講師の北田克治氏は、第38次と第45次の2回越冬隊に参加しておられ、述べ2年4ヶ月(4回のお正月を経験)の滞在経験を持っておられ、巧みな話術で興味ある経験談を楽しむことができた。
 テレビドラマの舞台は昭和33(1958)年ころの話題で、越冬隊員は日本から砕氷船に乗船しているが、現在では11月末に飛行機で豪州に渡り、先発した宗谷に乗船して12~1月に南極大陸東オングル島に上陸し、2月に交代している。隊員が60人で編成され、うち40人が越冬し、20人が夏隊となる。したがって越冬隊員は出発の翌々年に帰国することになる。北田さんの話によると宗谷の乗組員を含めて280~400人の調理を担当したことがあったようである。建屋も順次補強、大型化され、テレビで見たより大規模の施設となっており、施設内容も改善されているのに驚いた。
 日本で普通に生活している人が南極で越冬することの難しさを体験談の中から拾うと、
① 北田氏は昭和39(1964)年生れ、日本国際文化研究センターのレストランで料理長を担当していたとき、研究員の一人が観測隊に選ばれ、北田氏の多彩な人柄から越冬隊料理長に推薦され、2回も機会を与えられた。現在、京都桂の料亭「あかおに」の料理長。
② 出発前の健康診断は厳格で、あらゆる角度から検査を受ける。病気ウイルスの全くいない現地での生態系への影響を配慮し、また隊員の現地での健康の万全を配慮する。
③ 料理だけでなく、大工仕事・医者補助・環境保全補助・電気工事補助・イベント企画などなんでもできることが要求される。北田氏が講演会の最後に残した言葉は、「ひとりでなんでもできるとは思わないこと」であった。
④ 越冬施設には講演会場(約200人収容)くらいの冷凍室が存在し、大量の食糧を保存している。43次越冬隊から予備食糧は空輸で送られるようになった。予備食糧は1年、3年、5年に分けて離れた倉庫に保存する。新鮮な野菜類は豪州で調達し、キャベツなどは半年保存できる。
⑤ アザラシなどの肉類を現地調達したことはない。魚はワカサギ釣りの要領で2mくらいの孔を掘って釣り上げることができる。北海道産のタマネギは1年間保存できる。太陽が全く昇らない真冬には、保存の難しい生鮮食料が枯渇する時期であるが、食事が最大の楽しみである越冬生活での料理長の腕が力を発揮する時期でもある。
⑥ 低温環境であるが、乾燥しているのでソフトクリームがおいしい。日本で酒をあまり飲まない人も南極生活ではよく飲む。氷山に湯を流し、その斜面にソーメンを流して楽しんだこともある。シャボン玉が凍るのが面白かった。
⑦ 最初は樺太犬を同道したが、国際条約で動植物の持ち込みは禁止されているので、犬の同道はできなくなっている。発生したゴミはすべて持ち帰っている。
⑧ 2月から9月にかけてオーロラの観察ができる。オーロラ発生の予測はできない。現地では、新聞係が毎日新聞を発行し情報の共有に努めている。最初は映画フイルムを持参したが、いまではDVD時代で便利になっている。
⑨ 現在第53次の隊員が越冬している。交代時期は2月1日である。私もアメリカや欧州で数カ月の集団生活をしたことがあり、各人の個性間の調和が難しくなるが、北田氏は料理面だけでなく、チームの運営調和面でも大きく貢献されたことが講演内容から伺い知ることができた。

 1時間半のスライド映写による講演内容を記憶のまま整理したもので間違いがあったら容赦願いたい。


第14回世界湖沼会議が米国テキサス州で開催

2012-01-06 15:26:28 | その他

  昨年10月31日から11月3日まで、掲題の会議が米国テキサス州の州都オ-スティン市で開催され、世界39ヶ国から約500人の研究者や行政担当者が参加した。
  この世界湖沼会議は、日本の滋賀県が提唱して昭和59(1984)年に大津市で第1回会合が開催された日本発の国際会議で、ほぼ2年ごとに世界各地で開催されてきたが、日本では、第1回(1984)に続き、第6回(1995)茨城県つくば市・土浦市、第9回(2001)滋賀県大津市の3回開催されている。
  この国際会議の開催議事や報告内容は、ネットでその詳細に接することができ、貴重な情報源となっているが、今回は日本の琵琶湖保全の先進性が注目され、「統合的湖沼流域管理(ILBM)」の重要性を訴える宣言を採択して閉幕した。
  ILBMとは「湖沼を隣接する地域だけで保全の努力をしても、水が流れ込む上流域と流れ出る下流域の協力がなければ、水質や水量の維持は難しい。情報の統合管理が必要である」との思想のことで、研究者出身の滋賀県嘉田知事は「琵琶湖総合開発事業の取り組みで、効果的な利水と洪水の減少が実現した」(京都新聞記事引用)と発表した。
 この宣言は、2012年6月にブラジルで開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で議論検討すべき課題となるよう努力ことを盛り込んだ。
 また、嘉田知事は「湖沼会議の父」と呼ばれる琵琶湖研究所の初代所長・吉良竜夫が、開催直前の2011∸07∸19に逝去したことを報告し、その貢献に感謝した。

 「琵琶湖ハンドブック」によると、世界には数百万個の湖があり、面積500平方km以上の「太湖」は253(うち淡水湖は188)存在するが、琵琶湖は日本唯一の「大湖」で、淡水湖の面積順位は129番目にあたる。琵琶湖の貯水量は275億トンあるが、琵琶湖淀川系には1400万人の住民が生活しており、その水管理のレベルの高さが世界の注目を集めている。世界湖沼会議で報告される各国の話題を読むと、水にかかわる題が多岐にわたっており、きわめて難しい問題を抱えていることがわかり、世界湖沼会議や世界水フオーラムなどでの国際討議の重要性を再認識することができた。