★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(66)

2017年02月04日 | 短編小説「義腕の男2」
 100km/h近いスピードで走っている車外は、かなりの風圧があるが、ちょうど巨大なトレーラーの陰にすっぽり隠れていて、思った程動きづらくはない。
 赤と青の光りに照らされたコンテナは、近くで見るとかなりでかい。横に扉があるタイプだ。
 博士を救出するには、コンテナに入り込んで戦闘する前に、まずトレーラーを止めることが先決だろう。
 Mr.J達も同じ事を考えているようだ。
 耳に取り付けた無線機からMr.kの声が聞こえてきた。
「エアマスターがコンテナの動きを止めている間に、トレーラーの運転席を占拠しろ」
「了解」
Mr.Jの声も聞こえる。強風の中でもきれいに聞こえるとは地味だがさすが技術立国の製品だ。
 強風に目を細めながら、改めてコンテナを見てみると、微妙に空中に浮いているが、何か見えない鎖で引きとめられている不思議な感じがする。
「なるほど、これが新兵器同士のせめぎ合いということか・・」
 画面的に動きが少なく、とても最新技術ががっぷり四つに組み合っているようには見えない。だが、このチャンスを逃したら博士の救出は極めて困難になる。
 先に出たMR.Jはコンテナの右側に向かっている。
 俺は、コンテナの左側に運転席へのルートを探そうと視線をおくった。
 その時、視界の上部に黒い影が映ったかと思うと「パパパ・・」と乾いた音が上方から聞こえた。
 サブマシンガンの音だ。あの情け容赦のない重装備兵士が持っていたやつだ。
 長年この手の仕事を続けていると、第六感的な感覚が生まれてくる。
 今、確実に「撃たれる」という感覚もそのひとつだ。
 完全に不意をつかれ、相手の弾道に自分の体がモロに乗っているという全身の非常ベルが突然全開で鳴り響く感覚、まさにその感覚が俺を襲った。
 もちろん、反射的に体を縮ませ弾道から身体をはずす行為はとったものの、引き金を引いた後の銃弾のスピードにかなうわけはない。撃たれてもよけられるのは、映画か漫画ぐらいのもので現実には人間の反射スピードでは間に合わない。
 あとは、どこに当たるか、致命傷にならない部分に被弾するのを祈るしかない・・
 と、覚悟を決めたが、いつまで経ってもどこにも痛みがこない。
 不思議に思った俺は、恐る恐る見上げてみた。
 サブマシンガンの弾は、空中で止まっていた。
 2色の光が交差している紫色の領域で全弾がまるで見えない糸で釣っているかのように浮かんでいる。
 「すごい・・」思わず感嘆の言葉が漏れた。ノスリルの最新技術エアマスターの威力が身にしみた。ゲル状になった空気が弾丸を空中で止めているのだ。
 紫色の空間を透してコンテナの屋根にいる兵士の姿が見えた。状況が理解できないようで明らかに動揺している。
 「パパパパ・・」
 懲りずに兵士は、またマシンガンをぶっ放した。
 反射的に俺は身をすくめたが、弾は同じように空中で止まった。
 俺は思わずニヤリとほくそ笑んで兵士を見上げてやった。
明らかに逆上した兵士が、三度マシンガンを撃とうと構えた瞬間、いつの間に登ったのかMr.Jが横から兵士に襲い掛かった。
 俺だけに気をとられていた兵士は不意をつかれ、派手な立ち回りをすることもなく100KM/hで走行中のトレーラーから道路に叩き落された。重歩兵の装備をフルで装着しているようだから命は大丈夫かもしれないが重症は免れないだろう。