★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(23)

2014年07月06日 | 短編小説「義腕の男2」
 Mr.Jの姿を見た博士は、一瞬びっくりしたようだが、すぐに平常の表情に戻り、傍にいる10歳位の女の子を抱き寄せて「わかりました」と言った。
 えっ?よく見ると、博士が引き寄せた子どもは、博士にそっくりだ。髪の毛の色といい、目鼻立ちといい本当に似ている。博士の子供なのか。事前のミッションデータにはそんなことは全く載っていなかった。
 親子ということは、二人とも救出するということか?そうこう考えていると、Mr.Jは子供の手を引き、
「さあ、参りましょう」
と博士と共に歩き始めた。
 いまいち状況に納得がいかない俺だが、事実として子供が存在しているうえ、あくまで支援が目的で、主体はノスリル共和国側であるため、とりあえずその後に続いて出口に向かって歩き始めた。
 その時、俺たちの背後から怒声が聞こえた。
「止まれ!貴様達は、どこの部隊か?!」
 声の方を振り返ると、人ごみの間からイスラン軍の兵士が3人、銃を構えてこちらを凝視している。
 どうやら本物のイスラン兵らしい。
 真ん中の兵士が、銃を構えたまま、近づいてきた。
「我々は、イスラン陸軍第5師団12中隊のものである。博士の移送を命令され到着した。他の隊にも同じ命令が出ているとは聞いていない。貴様らはどこの所属か、名乗れ!」
 Mr.Jは、赤毛の女の子の手をつないだまま振り返り兵士に向かって言った。
「我々は、陸軍情報部の者だ。移送が確実に行われるようバックアップに来た」
 あらかじめこういう状況を想定していたのか、とっさに答えたにしては良い内容だと思うが、残念ながら表情が伴っていない。
 体がでかい割りに小心者なのか、演技が下手なのか、Mr.Jの表情は頬あたりが引きつって、いかにも嘘をついています、という顔つきなのだ。