★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

彗星の時(37)

2012年01月01日 | 短編小説「彗星の時」
「・・・・もしや、戦鉄牛と同じような古代の武器を操る者か・・・」
決定的な答えが出ないまましばらく沈黙の時が過ぎ、王は再び口を開いた。
「サルサよ。『ヤミ』はまだ使えるのか」
「『ヤミ』でございますか・・。先の『海の国』との戦の際にかなり使われましたゆえ、ほとんど力が残っておりませぬが、、はたしてできるかどうか」
「相手が戦鉄牛をも凌ぐ武器を使うとなれば他に手はあるまい。『ヤミ』が最後になってもかまわぬ。ケインとその男、確実に仕留めるのじゃ。よいな。即刻手配せよ。」
「・・御意」
サルサはそう言うと国王執務室を後にした。その表情は目深に被ったフードのため読み取ることはできないが、いつもよりさらに暗い雰囲気を醸し出していた。


 一時間後、サルサは『地の国』の王宮の地下深くにある部屋の前に立っていた。その部屋に辿り着くには幾つもの厳重な扉と魔道で封印された門を通らなければならないため、サルサ以外の者は入ることができない秘密の部屋だった。
「あの戦以来、10年ぶりかの。できればこのままそっとして置きたかったがのう。仕方あるまい」
 サルサはそう呟くと扉の前に立った。扉の上にある小さな丸い光源から細い光線が照射されサルサの全身に当たった。
「ようこそ。サルサ殿」
 どこからともなく声が聞こえてくると同時に扉がゆっくりと開いた。
 サルサは何も答えず、無言で部屋に入っていった。