★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(33)

2011年12月23日 | 短編小説「彗星の時」
サルサの飛竜は、再び爪を繰り出した。
 サルサの動きに気が付いたジュンサイは、大きく眼を見開いて「うおっ!」と気合を入れて杖を振るったが小石の襲来に邪魔をされ術を出すのが一瞬遅れた。
 サルサ飛竜の爪は、確実にケインたちの背中に狙いを定め振り下ろされた。ヤーコンはケインの身体に覆いかぶさり、身を挺して守っているが飛竜の爪の大きさに、自分の非力さを痛感していた。 
 その時、黒い影が飛び出し、横から飛竜の爪にぶちあたった。キーンという高周波の音が響き渡り、飛竜の大きな黒い曲がった爪が根元から折れ空中を舞っている。
 いつの間にか、飛竜とケインたちの間に、黒いナイフを構えたシャインが立っていた。
「シャ・シャイン殿」
ヤーコンは、この超戦士に護衛を依頼した幸運に心底感謝しながら立ち上がった。
 シャインはナイフを構えたまま、飛竜と対峙している。小山のような大きさの飛竜にシャインは全く恐れを抱いていないようだ。
「・・お、おのれ~」
サルサは怒りに眼を血ばらせながら杖を振るった。
ゴーという地鳴りとともにサルサの周りの地面が盛り上がり、無数の槍のような形になりシャイン達に襲い掛かった。
 シャインがナイフを構え、防御しようとした時、迫りくる土の槍とシャインの間に白い壁ができ始めた。土の槍はその壁にぶつかり砕けていく。白い壁は、氷でできていた。氷壁だ。
 みるみるうちに氷壁は厚さを増し、さらにサルサと飛竜を丸ごと巨大なドームのような形で包み込み始めた。
「うぬ、ジュンサイめが・・」
 サルサは、さらに強く杖を振って土の槍を増やしたが、氷の壁を打ち破ることができない。
 その様子を見たジュンサイは、飛竜をケイン達の近くに着陸させた。
「ケイン様、ヤーコン、それにそなた、早く乗りなされ。氷の壁なぞサルサには子供だましじゃ。すぐに破って攻撃してくるぞ」
 ケインたち三人は、ジュンサイの言葉に従い、青い飛竜に飛び乗った。
「よいかな。お捕まりくだされ。よし、行け」
 金色に輝く甲冑を身にまとった青い飛竜は、ジュンサイの掛け声に従い、大きく羽ばたき、4人を乗せて飛び上がった。